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ネットワーク配線技術の世界規模の教育機関“BICSI”日本支部が設立

2001年04月06日 00時27分更新

文● 編集部 佐々木千之

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5日、有線/無線ネットワーク配線システムの設計・施工技術や配線規格に関する、非営利の世界的規模の教育機関“BICSI(Building Industry Consulting Service International:ビクシ)”の日本支部設立総会が開催された。150名以上の会員が集まり関心の高さを伺わせた。

BICSI(Building Industry Consulting Service International)は、米国において'74年に設立された、有線および無線情報配線システムの設計と施工技術、配線標準規格に関わる技術者の資格認定、情報提供と教育を目的とする非営利の機関で、フロリダ州タンパに本部を持つ。現在85ヵ国に約2万名の会員を擁している。会員の業種は電話会社、システムインテグレーター、配線工事業者、製造業者、通信会社、建築業者、CATV事業者、出版業者、大学、リサーチ業者など多岐に渡る。

ディック・パウエル協会長
BICSI本部のディック・パウエル(Dick Powell)協会長。自身もRCDD資格を持つ

BICSIの組織は、BICSIから給与を支給され、事務局として活動するBICSI職員と、実際の教育、技術啓蒙、広報などの活動を無償で行なうボランティア活動グループに分かれている。今回のBICSI日本支部設立にあたり、サンテレホン(株)の山西啓司氏が支部長に就任した。日本支部には職員としてマネージャー1名を置くが、現時点では未定。ただし、4月25日に開催予定の第1回運営委員会会合までに決定するとしている。

BICSIが認定する主な設計技術者認定資格として“RCDD(Registerd Communications Distribution Designer)”、“LANスペシャリティー”(※1)がある。RCDDは有線/無線LAN、WAN、xDSL、CATVといった広範囲をカバーする資格で、音声、データ、ビデオ、オーディオといった幅広い設計技術を持つ技術者に与えられる。LANスペシャリティーはRCDD取得者を対象に、LANに特化した高度な知識を持つ技術者に与えられる。これらの資格は、ネットワークそのものに関する技術的知識は当然ながら、それを建物に設置する際に必要な建築関係の知識や、付随する法律知識についての理解も要求され、基本的に1人でネットワーク配線システムに関するすべてが行なえるというもの。また、配線施工技術に関する資格“インストーラレベル1”(配線施工経験2年以下)、“インストーラレベル2”(同2~5年)、“テクニシャン”(同5年以上)の認定も行なっている。

※1 '99年の数字によると、RCDD取得者は5015名、LANスペシャリティー取得者は463名。また、現時点での日本における取得者はそれぞれ1名ずつという。ただし、これには現在の試験がすべて英語で行なわれることも影響している。

BICSIの資格認定と、会員に提供している技術資料は、ANSI(米国規格協会)の下部組織であるTIA(米国電気通信工業会)、EIA(米国電子工業会)、IEEE(米国電気電子技術者協会)、GEA(Gigabit Ethernetアライアンス)といった標準化・規格化団体の標準・規格に沿ったもの。BICSIは標準化・規格化にはいっさい関わらず、あくまでもその標準・規格に沿った設計施工技術の教育にあたり、ケーブリング業界の技術レベル/品質の向上、専門家の養成を目的としている。

米国では工事案件の入札条件として、BICSIの資格取得者が指定されるなど、ネットワーク設計、施工資格として認知・信頼されているという。最近では、オープンスタンダードに基づくインターネットの広がりにより、米国の規格がグローバルスタンダードとなりつつあるため、BICSIの資格も世界的にスタンダードとして発展しているという。

日本のネットワーク関連技術者に大きな意義

山西啓司日本支部長によると、「これまで日本においては、ネットワークの設計施工に関する標準的な技術を説明した資料は存在しなかった。規格としてかつてはNTT標準が重要視されていたが、民営・分割とほかの通信事業者らが設立された結果、米国のオープンスタンダードの導入が進みつつある。ただし、こうしたネットワーク技術をカバーする資格が存在しなかったため、ネットワーク案件の発注側も、受注側も(こうした資格を)求めていた。ネットワーク関連企業でのBICSIへの関心は以前から高いものがあり、今回の日本支部の設立は案件の発注側企業、受注側企業のそれぞれにメリットをもたらすものだと考えている」という。

山西啓司BICSI日本支部長
山西啓司BICSI日本支部長

そして「'98年に設立準備委員会を設立し、会員が100名を超えたことで昨年10月に日本支部としての承認を本部より受けることができた。今後は会員数を増やし、本部運営にも関わることのできる500名以上の会員を持つ組織にしていきたい。これは遅くとも2、3年後、早ければ今年中にも達することができると考えている」とBICSIが広く受け入れられるとの見方を示した。

日本支部の具体的活動としては、ネットワーク関連の用語を解説した『BICSI用語辞典』の日本語版を5月に出版するほか、ネットワーク設計・施工技術のマニュアルである『BICSI TDM(Telecommunications Distribution Methods)マニュアル』や、BICSIの会報『BICSI-Japanニュース』の出版も予定している。資格認定活動については、トレーニングを行なう教育者をまず育てる必要があることなどから、2003年の開始を予定しているという。

BICSIが提供しているマニュアル類
BICSIが提供しているマニュアル類。まずこれらの日本語化から開始し、数年後には日本の法規などに準拠した完全なローカライズ版を出版する予定

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