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ギルモ、“KYRO II”チップ搭載グラフィックスカード発表

2001年03月12日 22時31分更新

文● 編集部 佐々木千之

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ギルモ(株)は12日、フランスのSTマイクロエレクトロニクス社(※1)が同日発表したグラフィックスアクセラレーターチップ『KYRO II』(カイロ ツー)を搭載したグラフィックスカード『3D Prophet 4500 64MB』を4月に1万8800円で発売すると発表した。同時にKYRO IIを搭載した“Hercles”(ヘラクレス)ブランドのグラフィックボードを、ギルモが世界市場に向けて販売していくとともに、両社が戦略的パートナーシップを締結すると発表した。

※1 STマイクロエレクトロニクスは、'87年にフランスのトムソン・エレクトロニクス(Thomson Semiconducteurs)社とイタリアのSGS Microelettronica社が合併により誕生した、半導体メーカー。'98年5月に社名をSGSトムソン・エレクトロニクス社からSTマイクロエレクトロニクスに変更した。2000年の半導体売り上げでは業界第7位(米ガートナーグループ、データクエスト部門調べ) 。

『3D Prophet 4500』
『3D Prophet 4500』

都内で行なわれた発表会で挨拶した、ギルモ代表取締役社長のジャン-フランソワ・デクレヴ(Jean-Francois Descleve)氏によると、ギルモはフランスに本社を置くコンピューター周辺機器メーカー。“Guillemot”ブランドでサウンドカード、スピーカー、DVD/CD-ROMドライブを発売しているが、'99年7月にフライトシミュレーターゲーム用ジョイスティックで知られる米Thurust Master社と、'99年11月グラフィックスカードメーカーの米Hercles Technologie社を買収して、“Thurust Master”ブランドのジョイスティックやステアリングホイール、“Hercles”ブランドのグラフィックスカードの販売を開始しているという。

ジャン-フランソワ・デクレヴ氏とフランソワ・ガレ氏
ギルモ代表取締役のジャン-フランソワ・デクレヴ氏(左)とフランスのギルモ社ビデオハードウェアグループマネージャーのフランソワ・ガレ氏(右)
STマイクロの冨田純一郎氏
STマイクロエレクトロニクス、コンスーマー製品事業部Image & Display製品部部長の冨田純一郎氏

『3D Prophet 4500』に搭載されたKYRO IIは、STマイクロエレクトロニクスが'99年に米Imagination Technologies社と結んだパートナー契約のもとで開発した“PowerVR Series3”アーキテクチャーによるグラフィックスチップの第2世代製品。第1世代となる『KYRO』は、2000年6月に台湾で開催された“Computex Taipei”で発表し、Imagination Technologiesの1部門である米VideoLogic Systemsの『Vivid!』、香港のinnoVISION Multimedia社の『Inno3D KYRO 2000』といった製品が発売されている。またPowerVRアーキテクチャーは、(株)セガの次期アーケードゲーム用システム“NAOMI2”で採用されるとアナウンスされている。

KYRO/KYRO IIチップセットの特徴は、画面を“タイル”と呼ぶ16×32ドットの領域に分けてレンダリングする“タイルベースドレンダリング”を行なうという点。通常の3Dグラフィックスチップでは、まず画面内に含まれる物体を計算してテクスチャーを生成して貼り付けた後、それぞれのピクセルが画面で表示される位置にあるかどうかを計算する陰面処理を行なう。このため、実際には表示されない部分についても計算することになるほか、そのデータを保持するメモリーも余分に必要となる。タイルベースドレンダリングでは、まずタイルごとに陰面処理を行ない、画面に表示される部分のみのテクスチャーを生成する。これによって、グラフィックスチップの計算量を抑え、物体の奥行き方向のデータを保持するZバッファーメモリーが不要になるほか、グラフィックスメモリーとグラフィックスチップとのバンド幅も有効に使うことができるとしている。

フルスクリーンアンチエイリアス(FAA)機能のデモ
フルスクリーンアンチエイリアス(FAA)機能のデモ。右がFAAオンにしたもの。ズボンや手のジャギーがなめらかになっている

また、タイルバッファーでテクスチャーを32bitカラーでブレンドする“Internal True Color”機能、最大8層のマルチテクスチャー機能、画面全体においてジャギーを目立たなくする全画面アンチエイリアス機能、物体の凹凸をリアルに表現できる環境バンプマッピング機能を備え、高品質な画像を提供できるという。

環境バンプマッピングのデモ
環境バンプマッピングのデモ。右側がよりリアルなテクスチャーとなっていることがわかる
『3D Prophet 4500』のベンチマーク結果
『3D Prophet 4500』のベンチマーク結果

KYROチップは0.25μmプロセスで製造されており、メモリークロックとグラフィックスコアクロックは125MHzであったが、KYRO IIにおいては0.18μmプロセスへとシュリンクされた結果、メモリークロックとコアクロックが175MHzに高速化した。64MB SDRAM、128bitメモリーインターフェース、AGP2xおよび4xサポートは変わっていない。APIはDirectXとOpenGLで、ドライバーソフトの最適化とファームウェアの改良を行なったとしている。ただし、DirectXについては、DirectX8で拡張されたピクセルごとの陰面処理(ピクセルシェーディング)や、プログラム可能な個別アクセラレーションなどはサポートしないが、これらについては、タイルベースドレンダリング機能によって十分なパフォーマンスを発揮できるとしている。

3D Prophet 4500 64MBは64MBのグラフィックメモリーを搭載し、最大解像度は1920×1440ドット(32bitカラー。リフレッシュレート75Hz)、DVD再生におけるモーション補正機能、サブピクチャーオーバーレイ機能を備える。出力はD-Sub15ピンのディスプレー出力のみで、ビデオ出力はない。ドライバーソフトウェアはWindows 95/98/Me/2000用が付属する。

ギルモではこれまで、米NVIDIA社のGeForce2を搭載した『3D Prophet II』シリーズを発売しているが、今回のSTマイクロエレクトロニクスとのパートナー契約は排他的なものではなく、NVIDIA製のチップを搭載した製品も継続して販売される。また、KYRO IIを搭載した製品がギルモ以外から発売されることもあり得るとしている。

デクレヴ氏によると、KYRO IIを採用した理由として「(ギルモは)すべてのゲームユーザーにプラットフォームを提供することが目的。GeForce3を搭載した『3D Prophet III』もいずれ発売するが、価格は日本円で6~6万5000円にはなる。これは一部のハードコアなゲーマー向け。3D Prophet 4500はコストパフォーマンスもよく、多くのユーザーに受け入れられると考える」と述べている。

3D Prophet 4500がターゲットとしている、比較的低価格のゲーム向けグラフィックスカードとしては、カナダのATIテクノロジーズ社の『RADEON VE』やカナダのMatrox Electronic Systems社の『G400』シリーズが価格的にもほぼ競合といえるポジションの製品となる。3D Prophet 4500ではRADEON VEやG400が持っているビデオ出力やマルチディスプレー機能は搭載していないが、グラフィックスメモリーは64MB装備と優位にあり、比較的廉価に3Dで高解像度のゲームを楽しみたいユーザー向けの製品といえる。

米3Dfx社がNVIDIAに買収されたことが示すように、グラフィックスチップメーカーの数が少なくなり、寡占化が進んでいる。今回発表されたKYRO IIとそれを搭載した3D Prophet 4500は64MBメモリーで1万円台という価格が示すように、GeForceに見られるような高性能だが高価格という流れに対抗するものとして注目される。なおImagination Technologiesでは、次の“PowerVR Series4”においてGeForce3などが持つハードウェアT&L機能をサポートする計画を明らかにしており、次世代のKYROでのサポートが予想される。

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