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NTTの高速IP接続サービス新登場

君は使うか!?フレッツ・ADSLの実力研究

2001年04月05日 13時06分更新

文● NETWORK MAGAZINE編集部

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NETWORK MAGAZINE


はじめよう!フレッツ・ADSL+常時接続表紙
本記事も収録 フレッツ・ADSLと常時接続の入門書「はじめよう!フレッツ・ADSL+常時接続」 価格(税抜き)1280円
  NTT東日本、NTT西日本(以下、NTT東西)は昨年12月に同社の加入者回線を使ったADSLサービス「フレッツ・ADSL」を発表した。読者の中にもさっそく契約して使いたいと思っている人も多いだろう。まず、ここではADSLの基本知識、フレッツ・ADSLの仕組み、料金体系についてしっかり理解しておこう。



ADSLとは? ~ISDNからADSLへ~

 とにもかくにも、まずはADSLとは何かということを知っておく必要がある。ADSLとはAsymmetric Digital Subscribers Lineの頭文字を取ったもので、あえて日本語に訳せば「非対称デジタル加入者線」となる。この訳語ではまったく内容を示すものになっていないが、通常の電話線を構成するメタルケーブルを使って、従来光ファイバで行なっていたような高速データ通信を可能にする技術といえば少しは分かってもらえるかもしれない。

 そもそも電話は音声で意志疎通ができる約3kHz程度の周波数帯域しか使わない。交換機で約50Vの直流電圧を作り、この帯域の音声を乗せてメタルケーブルで伝送するのが電話の技術だ。メタルケーブルそのものはもっと広い帯域での伝送ができるが、交換機から電話を設置する場所までが長距離であっても通信が可能であるように、この規格が決められた。そのため、交換機から約20kmという遠距離でもなんとか電話が通じさせることができるのである。

 日本はNTTの前身の電信電話公社時代に全国津々浦々まで電話がひけるようにと設備投資を行なったおかげで交換機が比較的たくさん設置された。そのため、交換機から7~8km以内にかなりの確率で電話が設置されていることがわかった。前述したように、メタルケーブルそのものはもっと広い帯域を伝送可能なため、電話よりも高速にデータ通信が可能なのだ。これを実用化したのが「総合ディジタル通信網」、いわゆるISDN(NTTの製品名ではINSネット64)で、メタルケーブル中を約320kbpsという速さでデジタル信号を流し、ここからBチャネル(64kbps)2本とDチャネル(16kbps)1本の通信路を取り出している。

 世の中には面白いことをいろいろ考える人がいるもので、もっと交換機から近い距離で、ISDNの何倍かの高速通信ができればVOD(Video On Demand)が実現できるのではないかと考えた人がいた。それがADSLのそもそもの考え方だ。

 また、電話で使っている約3kHzの帯域をうまく外すことによって、電話は低周波数帯、データ通信は高周波数帯というように両方を共存するアイデアが生まれた。さらに、VOD目的でダウンロードの速い通信路が欲しいという要求があったため、ダウンロードの下り方向とアップロードの上り方向で通信速度を変えるアイデアも生まれた。そこで、電話線を活用して、下り方向で500kbps~2Mbps程度、上り方向250~500kbps程度のデータ通信ができる技術が誕生した。これがADSLだ。その後VODのアイデアは廃れたが、ADSLはインターネット接続用の通信技術として甦ることができた。

 ADSLよりさらに高速の数Mbps~10Mbps程度を実現するものをHDSLあるいはそれ以上高速を実現するものをVDSLと呼んだり、両方向同じ速度のADSLをSDSL(SはSymmetric)と呼んだりとバリエーションがあるので、これらをまとめてxDSLや単にDSLと呼ぶことがある。ただし、HDSLやVDSLは、交換機から対応モデムまでの距離に強く制約を受けるために普及することはない。ADSLはISDNとほぼ同じ条件で、フレッツ・ADSLの通信速度(下り1.5Mbps、上り500kbps)を確保できるといわれているが、これは保証値ではない。

 すなわち、ISDNと違って、メタルケーブルの距離や状態によってスピードが規定速度まで出ない可能性があることに留意しておかなければならないのだ。フレッツ・ADSLの通信速度の場合、およその目安として交換機から3km以内ならばほぼ規定値の速度が出るといわれているが、それ以上距離が離れると徐々に通信速度が落ちてしまう。実際に敷設してみないとどれだけの速度が出るか分からないという点も、従来の通信サービスと性格の大きく違うサービスである。

 導入のところで触れるが、ADSLはISDNよりも少し条件が厳しくなると考えておいたほうがいい。つまり、INSネット64を申し込もうとしたら、メタルケーブルの距離が長いとか、静電容量の値がオーバーしているなどの理由で引けなかった場合は、ADSLも同様に引けない可能性が高い。もっとも、交換機からの配線順序や引き回し方法を組み替えてくれることもあるので、まったくあきらめなくてもよい。

図1 フレッツ・ASDLのユーザーからインターネットまでの接続イメージ図1 フレッツ・ASDLのユーザーからインターネットまでの接続イメージ:ユーザーのパケットはADSLモデムで変調され、スプリッタを通って加入回線のメタルケーブルで電話局内へ送られる。そして、電話の音声信号を局内のスプリッタで分離してから地域IP網を通じて契約プロバイダまで送られる

フレッツ・ADSLの仕組み ~ADSL→地域IP→プロバイダ~

 2000年は誰でも安価で使える常時接続の仕組みが初めて実現した年でもあった。それが「フレッツ・ISDN」と呼ばれる、ISDNを使った常時接続のサービスである。実は、ISDNをADSLにそのまま置き換えたものが「フレッツ・ADSL」である。そこで、まずおおまかにフレッツサービスを説明する。

 フレッツサービスとは、NTT東西が提供する常時接続のサービスで、自宅や会社からNTT東西の交換局ビルにある交換機までISDNやADSL(足回り回線という表現をする)を使って接続し、そこからNTT東西が運営する同一都道府県内の回線網である地域IP網を通じて、利用者が接続するプロバイダに接続する。つまり、足回り回線→地域IP網→プロバイダという3段階を経てインターネットに接続するサービスだ。

 通常のダイヤルアップ接続では日本全国に張られた電話網を通じてプロバイダに接続されるが、フレッツサービスは電話局に設置された交換機までは同じ足回り回線を利用するものの、分岐されていったんNTT東西の地域IP網に入ると、電話網をバイパスしてプロバイダに接続する。このため、電話網を混雑させることなく常時接続性を確保している。

 賢明な読者はすでにお分かりかと思うが、フレッツサービスはあくまでプロバイダに接続するまでのサービスであり、実際にインターネットに接続するサービスはプロバイダ自身が行なうものだ。そのため、利用者はフレッツサービスの通信料金をNTT東西に支払い、プロバイダへはインターネット接続料金を支払うということになる。

 ここで「フレッツ・ADSL」サービスに再度焦点を当てよう。「フレッツ・ADSL」はいま使っている電話回線をそのまま流用して契約することができる。あるいは料金は少し高くなるが、電話を契約しなくてもフレッツ・ADSLを申し込むこともできる。また、いまINSネット64を使っているISDN回線の場合は、いったんアナログ回線に戻さないと「フレッツ・ADSL」を契約することができない。アナログ回線に戻すのには手続きを含めてけっこうたいへんなので、ISDNとの比較検証をじっくり読んでから決断することをお勧めする。

 もし、いま使っている電話回線に特殊な装置を付けなければいけないと思っている人がいれば安心していただきたい。フレッツ・ADSLを使うときに、設置しなければならないのはデジタルデータと電話の音声を分離するための「スプリッタ」とデジタルデータを送受信するための「ADSLモデム」の2つだけで、これを付けたからといって電話が使いにくくなったり、制限されることもない。特に、スプリッタはADSLで生じる雑音が電話機に入らないようにするためのもので、むしろ補助役の機器だ。ただし、複数の電話機を使っている場合は電話機の数だけスプリッタを付けたほうがよいので、その場合は事前にNTT東西へ相談するとよい。

 さて、ここで、具体的にどうやって「フレッツ・ADSL」で接続するのかについて疑問を持った読者もいるだろう。つまり、フレッツ・ISDNの場合はダイヤルアップ接続という方法を流用して常時接続を実現している。つまり、料金が定額でつなぎ放題というものだ。それに対して、ADSLは通常は専用線的な使い方しかできないので、複数のプロバイダを切り替えるフレッツサービスの仕組みを活かせない。そこで、「フレッツ・ADSL」ではダイヤルアップ接続で使われるPPPというプロトコルをEthernetなどのネットワークでも可能にしたPPPoE(PPP over Ethernet)という技術を採用している。これにより、プロバイダを切り替えてログイン、ログアウトするような感覚で接続できるようになった。ちなみに、このPPPoE専用ドライバ、ソフトウエアはNTT東西よりOS別に供給されるので心配は無用だ。

料金体系 ~月額料金は電話と共用が安い~

表1 フレッツ・ASDLの料金
表1 フレッツ・ASDLの料金

 「フレッツ・ADSL」の料金体系は電話回線と共用する場合と共用しない場合に分かれている。電話回線と共用する場合はフレッツ・ADSLの月額料金は安くなるが、スプリッタ設置などの工事が必要なため、初期工事費が若干高くなっている。当然ながら、電話回線と共用する場合は、この電話回線の月額基本料金は別途支払わなければならない。

 初期費用は新しく電話回線を入れる場合よりも若干高い程度に設定されているが、ADSLという新しい通信方式を導入するのであるから、この程度かかるのもうなずける。実際の工事は、NTT東西から工事担当者が派遣されるのが一般的だ。

 月額料金は、ADSLの足回り回線から地域IP網を通じてプロバイダへ接続するまでの通信料金であるので、プロバイダのインターネット接続料金は別途必要となる。

 回線調整工事はやや毛色の変わった工事で、伝送速度が思うように出なかったりしたときに、メタルケーブルの収容を替えてもらったり、速度低下の原因になるブリッジタップ(回線分岐)を外してもらうための工事だ。また、ADSLはISDN回線と同じカッド(ケーブルを束ねたもの)に収容されていると信号干渉して速度低下を起こすが、最近ではISDN回線の影響を受けにくくなったAnnex C対応のADSLモデムが普及してきたので極端に心配することはない。ただし、思ったほどADSLの速度が出ていないことが判明した場合は、この回線収容替えを希望して組み替えてもらうことになる。もっとも、この回線調整工事を行なったからといって、必ず所定の速度が出るとは限らない。ここがADSLを評価する上でもっとも難しい点だ。

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