【買う買う団員プロフィール】
月刊アスキーの編集者。帰宅頻度は3日に1回ほどだ。最近は経堂に1人暮らしを始め、会社に来る前には下北沢と新宿のPCショップに必ず寄り道をしているとか。変わったキーボード、マウス、タイピングソフトなど、1万円以下の買い物には滅法うるさい。自分の席には現在6台のマシンがひしめいている(月刊アスキー編集部の最多台数保有者)。
編集部の、私の席の周りにはマシンがあふれ返っている。そんなマシンの中には、どうしても修復できない、しても意味がないものも少なくない。月刊アスキーのロードテストで使っていた「Chiken 2000」も修復不能(というか修復する手間が惜しくなるほどのロースペックマシン)である。ちなみに、スペックは以下のとおり。
CPU | Pentium II-233MHz(SECC) |
---|---|
マザーボード | ASUSTeK P2B-S(i440BX) |
メモリ | PC100 SDRAM 192MB(CL=3) |
ビデオ | Nvidia RIVA TNT/VRAM 32MB(メーカー不明) |
HDD | 10GB(IBM製 IDE) |
OS | Windows 98SE |
そんな、修復する意味のないマシンを前にできることは、現役でイケるパーツを抜いておくこと。だいたいのパーツは、CPUとマザーボードさえ新しくすれば、十分復活できるからだ。そしてパーツを抜くと、往々にして新マシンを組みたい衝動に駆られるもの。ご多聞にもれず、やっぱり私もその衝動に駆られてしまったのであった。
1万以下のマザーを探せ!
さぁて、新マシンを組むにあたってまずはパーツ選びからだ。
予算は3万。CPUとマザーあわせて3万だ。そうなってくると、マザーボード選びの条件は必然的にかなりシビアなものになる。Slot1で、なるべくFSB 133MHzに対応していて、PCIだけでなくISAもあって(抜いた、古めのパーツを使いたいがため)、なおかつ1万円を切るマザーボード。
そこで選んだのがRioWorksの「PSVA」。フェイスで、8000円前後で購入した。スペックを詳しく見てみると、FSB 133MHzをサポートしたVIAのApollo Pro133Aチップセットが搭載されており、値段の割には、仕様面でそれほど欠点は見当たらない。オーバークロックをするつもりはないので個人的には興味の対象外だが、FSBは1MHz刻み…とまではいかないものの、かなり細かく設定できる。拡張スロットはAGP×1、PCI×4、AMR/ISA×1、ISA×1。メモリの最大容量も3スロットで1.5GBまで対応しており、NT系のOSを使う身としては嬉しい限りだ。なおかつ、基板がATXにしてはコンパクトに設計されているのも魅力的。将来、融通の利かない筐体を使用する可能性を考えても、PSVAは悪い投資ではなさそうである。
会社の先輩には「RioWorks? またマイナーなモノを買うねぇ」などと言われたが……。
5分に1回固まるってどういうこと?
Chiken 2000の筐体に、マザーと一緒に2万3000円ほどで購入したPentium III-800EBMHzとPSVAを組み込む。予算比で若干足は出たが、それでもあえてPentium III-800EBMHzを選択したのは、編集部でのレビュー結果から考えて1GHzよりもコストパフォーマンスが上だと判断したから。FSB 133MHzなので、PC133のメモリと合わせれば、かなり強力な環境を構築できるというわけだ。 さっそく手元にあったアイ・オー・データ機器製、Nvidia「RIVA TNT2」搭載の枯れたビデオカード「GA-TNT216/AGP2」をAGPスロットに差して、いざ起動してみた。
BIOSの初期化画面でCPUが「Pentium III-800BE MHz」と表示されている。「BE」、「べ」ですか先生!? ちょっとショック。でも、これはBIOSのバージョンによる問題だったので、アップデートしたらちゃんと「800EBMHz」と表示された。良かった。
どうも、スロット周りがアヤしい…(最近聞いた話では、RioWorksのマザーはメモリの相性がシビアなので、バルクではなく箱モノで使えば問題ないそうだ) |
OSはWindows 98SEをインストール。Windows 98SEにTNT2という組み合わせでゲームでもやるかと思ったのだ。だが、何度ドライバをインストールしてもTNT2を認識しない。再起動前の「画面のプロパティ」ではTNT2を認識しているのに、再起動するとさっき教えたことをきれいさっぱり忘れ、815Eオンボードの機能しか認識しないのである。困ったものだ。しょうがないので、Matroxの「Millenium II PCI」を同僚から借用して再インストールした。
今度はバッチリ。とても快調……と思ったら、エクスプローラを開いた状態でマウスをクリクリ動かすと、なぜかフリーズ。おかしい。5分に1回のペースで再起動を繰り返す。
そこで、画像印刷専用マシンにして使用することにしたが、5分に1回はウンともスンとも言わなくなるおかげで、筐体のリセットスイッチ付近がボールペンのインクでムチャクチャ汚れてしまった(私は基本的に掃除をしない人間なので、今でもその汚れは残っている)。これはいかん。やはり先輩の卓見のとおり、RioWorksのマザーボードが祟っているのか?
汚れたリセットボタン(一番下)周り。ボタンじゃないところも汚れてるのはご愛敬ということでひとつ |
Memtest86、起動中の画面 |
だが、せっかく大枚はたいて(福沢先生1枚でお釣り来たけど)買ったマザーだ。なんとか踏ん張って、2カ月ほどその状態で使用する。その間に、日刊Linux記者のUから「Memtest86」(FDDブートのメモリテストプログラム。フリーウェア。BIOSのメモリテストをパスしてしまう不良品を探すには打ってつけ)をもらって、256MB+128MBのPC133 SDRAMのチェックを行なった。ウンともスンとも言わなくなるような症状は、たいていメモリ周りが怪しいので、丸1日ほどゴリゴリとプログラムをまわしっ放しにしてチェック。しかし、チェックの途中でフリーズ。メモリチェックすらままならないという事態を迎え、本格的にこのマザーボードを疑うようになったのであった。ウ~ンPSVAよ、オヌシは灰色のマザーだな。
まっ、とにかくオーソドックスなマザーを買おう
別のマシンで月刊アスキーの入稿を済ませ、出張校正をしに神楽坂まで出かけた帰り、私は気づくとアキバにいた。関東地方にお住まいの読者からは「神楽坂からアキバだと、初台とちょうど真反対」というツッコミが入りそうだが、いたものはしょうがないのだ(開き直り)。そして当初の予算をオーバーするが、ツクモParts王国でAOpen「AX3S Pro」を購入。1万5000円はするマザーボードだが、アキバで人気→きっと安定という考えから購入を決断した。しいて理由を探せば、ダイハードBIOSとPCIバスの多さが決め手だったと言えるだろう。ダイハードBIOSとは、BIOS ROMのアップデートが失敗したときを想定して2個のフラッシュROMを搭載し、物理的なスイッチで安定している方のBIOSで起動することができるというもの。また、ISAバスを廃してPCIバスは6本搭載しているので、NICを多数インストールする必要のあるサーバ(というよりルーティングマシン)も視野に入ってくる。
この時点で、最初の黄金律「ISAバスのあるものを買うべし」はあっけなく無視し、宗旨変えすることに。チップセットかオンボードで、ある程度の機能があればそれでいいのだ。
ここで、ものぐさの私はひとつの冒険をする。PSVAで動いていたままの状態のHDDを、AX3S PROに取りつけたのだ。VIA→Intelという、かなり危険なシステム移行である。
OSのインストールは時間がかかり、かなり面倒くさいものだ。PSVAからのマザーボード乗り換え時点でインストールされていたOSは以下の5つ。
- Windows 98SE
- BeOS R5
- Windows 2000
- FreeBSD 4.2
- QNX Neutrino
PSVAの不安定さに打ち勝つべく、BeOS以降、安定性の高いと思われるものを次々とインストールしていった跡が見て取れるだろう。ブートはBSDのマネージャ→Windows 2000の“NTLDR”(Windows NT/2000をインストールすると自動的にインストールされるOSローダー)という順序に設定してある。ずっと前に別のマシンでお引越しをした時は、まったく問題なかったので、HDDの状態はこのままにしてサクッと電源投入する。
ウギャーッ!
BSDの起動エラーが、次にWindows 2000の黒いエラー画面が襲いかかってきた。
ゴメンナサイ。私が悪うございました。最初からインストールします、スミマセン。悪い予感がここでむくむくと首をもたげてきたのでした。「コイツもだめかな……」
改めてパーティションを切りなおし、HDDをまっさらにした状態でWindows 2000だけをインストール。オ~、ちゃんと動くではないか。やっぱり有名メーカーのマザーは違うね。AOpenさんありがとう。考えてみれば、Windowsはインストール時にマザーボードの認識とチューンアップもしているのだ。マザーボードを交換すれば、起動しないのもある意味当然といえる。
それでも、私はかなり疑り深くなっていて、Windows 2000のboot.iniファイル(※1)を書き換えてCRASHDEBUGモードとSOSモード、VGAモードを追加するのを怠らない。NTLDRに用意されているこれらの起動スイッチはめったに使われないが、いざと言うときに威力を発揮する。NT系列のOSがコケた時は、これらのスイッチオプションで起動することで、マシンの調整をすることができる。PSVAの時にはAGPまわりで失敗した経験があるので、カーネルの扱いには慎重を期したいところだ。
[boot loader]
timeout=30
default=multi(0)disk(0)rdisk(0)partition(2)\WINNT
[operating systems]
multi(0)disk(0)rdisk(0)partition(2)\WINNT="Microsoft Windows 2000 Professional" /fastdetect
NTLDRというMBR(マスターブートレコード)上のプログラムがこのファイルを読みに行き、OSの起動メニューが管理できる。
PhotoshopやMKEditer(フリーのテキストエディタ)、WinDVDなどの普段使うアプリをガンガンインストールして、とりあえず仕事に使える状態にする。Photoshopはデジカメ画像をいじる時によく使うアプリなのだが、キャッシュに残った2回目以降の起動では、2秒ほどで起動してくれる。これは良い。384MBも積んだPC133メモリの威力も発揮されているようで、FSB 133MHzの効果はてきめんだ。100MBくらいの画像ならレタッチしても待たされた気がしない。とりあえずのワークマシンのつもりでPSVAからお引越しをしたものの、思いもかけぬ大成功。こうして、月刊アスキーのロードテストで活躍し、一度は退役した「Chiken 2000」は使った部分は筐体と電源のみという状況だが、「Chiken 2001」として見事再生を果たした。Mission Complete!!
Chiken 2001 基本構成 | |
---|---|
CPU | Pentium III-800EBMHz(FC-PGA) |
マザーボード | AOpen AX3S PRO |
メモリ | PC133 SDRAM 384MB(CL=3) |
ビデオ | GA-TNT216/AGP2(RIVA TNT2/VRAM 16MB) |
HDD | 10GB(IBM製、IDE) |
OS | Windows 2000 |
PSVAのその後と今後の課題
しばらくの間うずもれていたPSVAの箱。ちなみに、RioWorksの箱が2つ見えるが、下がPSVA。上は、安いのでつい買ってしまったi820マザーだ |
さて、Chiken 2001は見事に実用に耐えるマシンとして羽化したが、戦力外通告をうけたPSVAはどうしたものか。
重ねて書くが、私は貧乏性である。そして貧乏である。貧乏な人間がほぼ新品同然のマザーを放って置くわけがない。当然ながら、ちゃんと再生の道を考えている。PSVAの問題として、CPU周波数とAGP関連が深刻そうだ。ならば、ビデオ機能を必要とせず、それほど安定度を重視しなくても良いマシンとして作り直してしまえば良いのだ。
私は、月刊アスキー編集部のサーバ管理者を仰せつかっている。前の管理者が海外留学したのと、以前サーバがダウンしてしまった時に代替サーバを構築したのがキッカケなのだが、現在、自分のワークマシンをファイルサーバとして1台供出している状態だ。そして、サーバ管理者としては、今度コケたら自分の責任になってしまうのでヒヤヒヤしている。できることならRAIDを組むなりして、データのフォルトトレランスには何らかの対策をとっておきたい。金を掛けずに――何とも貧乏な話で申し訳ない――取れる安全策を考えた場合、ネットワークでつないでバックアップを取るのが手っ取り早い。それもDATなどは使わずに、HDDを使うのが一番安く上がるだろう。PSVAには、バックアップサーバとしての再生の道を考えているところである。
【追記】
PSVAとPentium II-233MHzでマシンを組むのに成功し、月刊アスキー編集部のファイルバックアップ用サーバとして立派に稼動している。余ったパーツ+HDD=1万5000円という投資で、見事にその機能を果たしている。FTPでメインのサーバから1週間に1回の頻度で更新をかけている。Akiba2GO!読者の皆さまの手元にも、必ずや使える余剰パーツがあるに違いない。NICを組み込んだだけのファイルサーバでも、あるとないとでは大違いである。ぜひとも自分の持っているパーツを全部使い切るつもりで自作に励んでいただきたいと思う。だって、もったいないでしょ。