iモードJavaの市場投入にタイミングを合わせるかのように、長く続いていたSunとMicrosoftとのJavaを巡る裁判が和解という形で決着したというニュースが流れた。公開された情報では、和解に関する合意事項として、
- MicrosoftがSunに2000万ドルを支払う
- 以前Microsoftが受けたJavaのライセンスの停止を受け入れる
- 将来に渡り、MicrosoftはJavaと互換性のない製品に対してJavaのロゴを使用することが禁じられる
- Microsoftが過去に出荷したJavaと互換性のない、古いJDK1.1.4ベースの製品(J++や独自のVMのことだろう)は、顧客保護の観点から、今後7年に限り出荷を継続することを認める
などとなっている。
すでにMicrosoftは.Net構想を明らかにしており、さらに新言語C#も発表している。プラットフォームが整ってきたことで、敢えてJavaに拘る必要はなくなったのだろう。その意味では、双方にとってこれ以上継続して争う意味はなくなったのだと思われる。そう考えれば、この和解のインパクトもさして大きなものではない。
とはいえ、MicrosoftがJavaに対して取ってきたこれまでの姿勢は、やはりJavaの重要性を認識した結果だと思われる。.Net構想では、「Webサービス」が基本コンセプトとなっているが、これを実現する上でJavaの特徴は大きな力となる。だからこそ逆に、MicrosoftはSunの成果であるJavaを使うことはできず、独自のC#を開発せざるを得なかったのではないだろうか。
MicrosoftとSunのJavaを巡る争いは、結果としてPC市場を置き去りにしてエンタープライズサーバと組み込み機器市場での存在感を高めた。別にJavaだけの力というわけではないが、「脱PC」「ポストPC」が意識され始めた現在では、Java対応の組み込み機器は今後ますますその重要性を増し、PC市場のある部分を確実に奪い取っていくことになるだろう。世紀の変わり目に終結したこの裁判は、「PCとインターネットの時代」として幕を閉じた20世紀との決別点として将来意識されることになるのかもしれない。
いっぽうで、Java関連の話題とは見なされていないようだが、セガがDreamCastのハードウェア生産から撤退する、というニュースも聞こえてきた。実は、DreamCastはゲーム機の中ではもっとも早くからJava対応を明らかにしているハードウェアでもある。ゲーム市場はプラットフォームの争いでもあるが、ゲーム制作者にとっては異なるプラットフォーム間での互換性のなさは大きなリスク要因になる。もちろん、ゲームソフトウェアに要求されるあらゆる仕様をJavaが満たせるとも思えないが、Javaで実現できるゲームも少なくはない。iモードでも早速ゲームプログラムが提供されていることからも伺えるように、今後Javaによるゲーム開発は一定の市場を確保することは間違いないと思われる。
DreamCastの失速により、Java対応のゲーム機が存在感を失うのは残念なことだ。とはいえ、非PC分野でのJavaの採用は広がり続けるだろう。今更爆発的な普及が始まるとも考えにくいが、さりとてJava以外の有力な選択肢が突然出現するとも思えない。今後しばらくは、一進一退を繰り返しながらひっそりと着実にJavaが浸透していく期間になるはずだ。今後Javaがどのようなサービスを実現していくことになるのか。いずれにしてもそう遠い先の話ではないだろう。とりあえず、2~3年先くらいを楽しみにしていよう。
渡邉利和