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慶應大とブリタニカ、知識人を招いたラウンドテーブルを開催――従来の権威が崩壊、再編成へ

2001年01月11日 22時30分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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慶應義塾大学とブリタニカ・ジャパン(株)は“AGE OF KNOWLEDGE”を総合テーマに、ゲストスピーカーが学術研究の最先端成果を発表するラウンドテーブルを定期的に催す“慶應ブリタニカ・ラウンドテーブル”を創設、11日に第1回の会合を慶應三田キャンパス内で開催した。

第1回のゲストスピーカーはブリタニカの日本版、中国版、韓国版の編集を手がけた世界的なジャーナリストのフランク・B・ギブニー氏。

「21世紀は評価、審判の時代」と語るギブニー氏

ギブニー氏は、従来の書物を中心としたメディアに変わり、新しいメディアが登場、かさばるものであった百科事典がコンピューターのおかげで救済され、知識データベースとして活用できるようになったと語った。

今後知識がどう変わっていくかについて、同氏は“文化”と“文明”の違いを例に挙げ、「昨今は文化と文明を同じ意味としてとらえ、不注意に利用しているケースが多いが、この2つの言葉はそれぞれ別の意味を持つ。文化と文明が誤って一体化してしまっていることが、イスラムの味の素事件などの問題を引き起こしている」

「知識が人々に普及したという事実は諸刃の剣である。例えば米国は多民族国家だが、メキシコ系米国人ならメキシコ系に、中国系米国人なら中国系にそれぞれ歴史を学ぶべきだと、民族の違いを強調するようになっている。今はグローバライゼーションの時代だ。国や民族が違っても、正義など人間の心は同じはずだ」と語った。

さらに、最近の問題として、収集されたり配布されたりしている情報の信憑性について述べ、「情報が氾濫している。現在、世界のどこだろうが、インターネット上だろうが、確かな信憑性のある情報の権威がどれほどいるだろうか」と、従来の権威が崩壊し、再編成が起こるだろうと語った。

そして「例えば、自分の文化との類似性を中心に他の文化を見るといった、知的作業の中での比較、検討が必要。人々は文化的な境界線を越えて協力できる。新しい知識の共同体を通じてエンサイクロペディアを創造できるだろう」と締めくくった。

ラウンドテーブルには約100名が参加、ギブニー氏の講演に熱心に耳を傾けていた

この慶應ブリタニカ・ラウンドテーブルは、2001年には計6回の会合を予定、科学技術のフロンティアを中心に展開し、講師には将来ノーベル賞の対象になるようなテーマに取り組んでいる気鋭の研究者を迎えたいとしている。

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