「めしを食いにいくか!」
と野太く吼えたとき、そこには【食いもんを胃袋から吸収してオノレの血肉としたるで!】というアグレッシブな意欲が秘められている。言い換えれば、食欲の限界に挑むマジ体育会系山男イズムとでもいえようか。
対して、
「ごはんを食べにいこう!」
と叫んだときはどうか。そこには【料理は腹6分目くらいでオッケー、デザートは君さ……】なんていう食欲以外の欲望、すなわちメンズ野望がそこはかとなく秘められている。言い換えれば、会話や雰囲気を楽しむことがメインであり、むしろ食事自体はサブ目的といえようか。
秋葉原が昔ながらの電気街だったころ、そして、青果市場の街だったころから、人々の食欲を満足させてきたかんだ食堂。この歴史あるメシ屋では、かつて市場で働く男たちがそうであったように、どんぶりめしをがしっとひっつかみ、レバニラ炒めと鳥の唐揚げ、そして煮物をもりもり食らう、食らう、喰らう!
そんな豪快な姿勢こそがふさわしい。「つわものどもの夢の跡」ってワケじゃないけれど、かつて喧騒に想いをはせながら、昼メシあるいは夜メシを食べてみてほしい。
最後に、かんだ食堂における正しい注文のし方を記してこの稿を終えようと思う。
<はじめてのオーダー講座「かんだ食堂」編>
(1)「オレはめしを食いにきたんだ!」とつぶやきながら、オノレのほっぺたをばしばし叩いて気合いを注入。胃袋の消化能力をマックスまで上げ、イキオイよく扉を開ける
(2)「こんちわ」とドでかい声でご挨拶。コレ、基本。で、入り口をくぐったら、まず最初に向かって左手、カウンター上に並んだおかずをチェック。このとき「今日のオススメなんですか?」と聞くべし。あぁら、この方スマートね(ハート)とおばちゃんのハートをワシ掴みすること間違いなしだ!(←推定)
(3)カウンター上におかずの種類が少ない時は、売れる回転が速すぎて盛り付けが間に合っていないことを意味している。その場合、カウンター上に大きく書かれたメニューを見て即決すべし。
(4)カウンターにお客が座っている場合、無理に自分で取ろうとはせず、大きな声で注文しよう。このとき、必ずごはんの盛りもキチンと伝えておくこと(ごはんと味噌汁、お茶は自動的に出てくる)。
(5)空いている席を探して座る。座ってから注文を決めるのは邪道。
(6)目の前にあるメシに100%集中してザクッと食べ、さっと店を出る。購入したパソコンのパーツや雑誌をチェックしながら食べるのは礼儀違反。ダラダラと長っ尻しないのが神田っ子、東京っ子の粋な食べ方ってモンよ。
<店舗データ>
かんだ食堂
東京都千代田区外神田3-5-13
営業時間:平日11:00-15:30、17:00-22:30
土曜11:00-15:00
定休日:日祝日
●矢部直治氏プロフィール
某小料理屋4代目若旦那 兼 バカ系体力派ライター。文章力はともかく、料理に関する知識だけは豊富(本人談)。