Sendmailの生みの親Eric Allman氏、次世代Sendmailを語る
2000年12月20日 22時08分更新
文● ASCII24 Business Center 高島茂男
ASCII24、ASCII24 Business Centerでは、シェアが約70パーセントと業界標準といえるMessage Transfer Agent(MTA)の「Sendmail」の生みの親であるEric Allman氏にインタビューを行なうことができた。「Sendmail」の商用版の販売やサポートを行なっている米Sendmail社のCTOでもある同氏に、次世代の「Sendmail」のアーキテクチャなどをうかがった。
次世代のSendmailは「Queue Manager」を搭載
[編集部(以下Q)]
次世代のSendmailである「Sendmail 9」は現製品の「Sendmail 8」と比較して、どういった点が異なるのでしょうか?
[Eric Allman氏(以下A)]
「Sendmail 9」はこれまでとは違う新しいアーキテクチャを採用しました。まず、これまでの「Sendmail」にはなかった「Sendmail」全体の監視、管理を行なう「Queue Manager」を搭載しました。クラスタリング技術を導入するなど、パフォーマンスの向上も主眼に置いています
[A]
また、顧客の特定のニーズに応じることができるように、各機能をモジュール化し、そのモジュールごとに新しいものに変えるといったことができるようにしました
[A]
「Sendmail 9」は、セキュリティやスケーラビリティ、信頼性といった面を強化できましたし、今後20年間使い続けることができると思います。
[Q]
必要に応じて新しいモジュールに変えていけば20年間使えるというわけですね?
[A]
その通りです
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「Sendmail 9」のアーキテクチャ概要 |
[Q]
開発にはいつ頃から取りかかっているのでしょうか?
[A]
今年の7月か8月ごろからです。現在、アーキテクチャを煮詰めている段階です。次のフェーズでは、プロトタイプのモジュールを作る予定です。開発以外にほかに何もしなくてもよいのであれば、これは3週間ほどでできます。
[Q]
多忙でなかなか時間がとれないということでしょうか?
[A]
私にはSendmail社のCTOとしての顔もあります。セールスを行なったり、潜在的な顧客や買収先について話し合ったり、講演を行なったりしています。技術的なことに時間を割きたいと思いますが、なかなか時間が取れないのが現実です
| Eric Allman氏 |
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「Sendmail 9」は2002年ごろに登場か
[Q]
現時点がアーキテクチャを詰めている段階だとすると、実際に利用できる「Sendmail 9」が登場するのはいつごろになる予定でしょうか?
[A]
おそらく2002年になると思います。希望的観測でいえば、2001年中にα版を出したいですね
[A]
Sendmail 9の前に、現在開発中の8.12。(※1)そしてかなりの確率で8.13が...8.14もあるかもしれません
※1
現在の最新バージョンが8.11だ。8.12は2001年の初めごろにβ版がリリースされる予定で、パフォーマンスやメモリ管理の改良、SMTPパイプラインが採用となる予定という。8.13や8.14については、内容は決まっていない
[Q]
「Sendmail 9」のほかに取り組んでいるものはありますか?
[A]
今後数年間は、「Sendmail 9」に集中する予定です
「ベストの市場はハイエンド」
[Q]
オープンソースとコマーシャル版の違いがあれば教えてください
[A]
Sendmail社は、オープンソースの「Sendmail」の商用版の販売とコンサルティングやサポートを行なっています。同社では、商用版としての技術を開発しています。商用版の顧客は、完全なソリューションを求めています。製品だけでなく、「システムをみてほしい」、「実装のデザインをしてほしい」、「導入後のサポートをしてほしい」といったことを求めています
[A]
ハイエンドの顧客が求めているのは、3万のメールボックスとかいう規模ではなく、何十万という単位でメールボックスを増やすことです。また、WebメールやWAP(Wireless Application Protocol)、iモ―ドといったソリューションも求めています
[A]
いろいろな調査の結果、Sendmail社にとってベストな顧客はハイエンドの顧客であるとわかりました。顧客のタイプも、売りかたも、価格もいろいろありますが、顧客の要求に応じて完全なソリューションを提供していきます
[Q]
ありがとうございました