12月14日都内において、日本アイ・ビー・エムの記者懇親会が催され、同社代表取締役会長であり、米IBMのアジア責任者でもある、北城恪太郎氏と、同社代表取締役社長大歳卓麻氏が2000年を振り返った。
北城恪太郎氏―アジア各国の取り組みに熱意を感じる
代表取締役会長北城恪太郎氏 |
同氏はアジアの景気回復を述べ、特にGDPが10パーセントを超える伸びを示した韓国についてバブルともいえる成長だと語った。そして、日本以外のアジア各国を周って感じるのは、インターネットに対する取り組みの熱心さであるという。アジア各国は、工業では日本やアメリカのようにはいかないが、インターネット=e-businessでは自分たちが先にいこうという意欲がみなぎっているのだそうだ。
ひるがえって日本では、インフラの話ばかりをしているが、インフラの上で企業が何をするのかというのが大事だという。たとえば、速い意思決定ができるシステム、優れた仕事をした人を処遇する仕組み、経営者が情報戦略を見越して経営にあたることなどだ。また、アジアのトップは世界中で英語でビジネスの話をするが、日本人はなかなかそれが難しいとし、まだまだ課題があるだろうと語った。
日本については厳しい見方もしている同氏だが、話し方は終始穏やかで、確かに日本はe化が遅れてはいるが、最後にはしっかりと盛り返すだろうというニュアンスの言葉も残し、壇を降りた。
大歳卓麻氏―e-businessの実践
代表取締役社長大歳卓麻氏 |
北城氏のあとは、代表取締役の大歳卓麻氏が壇上に立った。大歳氏は、2000年はe-business実践の年としてやってきたという。現在e-businessには公表しただけで70件の事例があるし、支援のための施策もしてきた。
そして、国内のITの現状について語った。大歳氏は、現在日本全体では数においてもスキルにおいても、ソフトウェア技術者が足りない状況だと思うと述べた。こうした事態に対処するため、IBMではいくつかの施策を行なったという。具体的な内容は以下の通り。
- EJBコンソーシアムを組織。歴史上初めてIBMと富士通の社長が記者会見するなど、各社と連携を行なって技術浸透を図った。
- Linuxに対するサポート。IBMは、全世界でLinuxに対して10億ドルにのぼる投資を行なうという。
- ITオンデマンドのための体制改変。電気や水道と同じくらい使いやすくなって、初めてe-businessといえる、という考えではあるが、現実にはまだまだシステムが停止する事故が起こったりもする。そのため、「CUoD(Capacity Upgrade on Demand)」などの採用を行なった。
5人の男性が育児休暇。育児休職する男性も
こうして、国内のIT環境を整えるだけではなく、社内においても個人が力を発揮できる施策が必要だという。そのため、IBMでは「e-work」をやっているのだそうだ。e-workとは、ビジネス面での“e”である「e-business」と、生活面での“e”である「e-lifestyle」の接点だという。
つまり具体的には在宅勤務であって、日本IBMでは現在42人の在宅勤務者がいるという。この42人という数字については、数ではなくてこのような制度があることが重要なのだそうだ。そして驚くべきことに、42人のうち男性が12人おり、その男性の中でも、育児「休暇」だけではなく1年間の育児「休職」を行なっている人もいるという。しかも営業職だ。
来年は日本IBMの顔をひとつにする
来年の日本IBMの課題としては、いままでは各事業部がそれぞれ別々に動き、そのために顧客側から見ると「日本IBMはいったいいくつの顔があるのだ」という事態を収拾し、「1つの顔を持つIBM」にするとともに、パートナー各企業との連携も強固にしていくと語った。