カシオ計算機(株)は12日、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモのパケット通信サービス“DoPa”用無線通信モジュールを内蔵した、企業向けPocket PC『カシオペア E-707』を発表した。また同日、日本オラクル(株)と、企業向けのモバイルサービスの開発と展開を共同で行なうことで合意したと発表した。
『カシオペア E-707』 |
カシオ計算機、代表取締役社長の樫尾和雄氏 |
E-707は、基本的なハードウェアについてはカシオが9月に発表したコンシューマー向けPocket PC『E-700』に準じているが、NTTドコモのDoPa網にアクセスできる通信モジュールを内蔵したことと、SDメモリーカードスロットに加えてコンパクトフラッシュスロット(Type II)を装備し、GPSユニットやPHSユニットなどの拡張に対応したことが大きな特徴。価格はオープンプライスで、実際の販売においてはカスタムアプリケーションを含んだ形で販売されるが、本体だけではおよそ10万円程度になるという。
内蔵された通信モジュールの電源スイッチはPocket PC本体の電源スイッチとは独立している。本体電源をOFFの状態で通信モジュールに着信すると、本体の電源が入って指定されたアプリケーションが起動するように設定できる。また、NTTドコモがDoPa網向けに提供しているリアルタイムデータ送受信サービス“Live!サービス”に対応しており、リアルタイムメール配信やチャットサービスなどをサポートする。企業向けにLive!サービスを利用したアプリケーションの構築も可能としている。
日本オラクル、執行役員製品マーケティング本部長保科実氏 |
都内のホテルで行なわれた発表会では、オラクルと企業向けモバイルサービスの共同開発で合意したことも明らかにされたが、この一環として、オラクルがモバイル端末向けに提供しているウェブコンテンツの自動変換ソフトウェア『Portal-to-Go(ポータル・トゥ・ゴー)』をE-707に対応させた。Portal-to-Goは、パソコンなどのブラウザーで見ることを前提に作られたウェブコンテンツを、携帯電話や携帯情報端末といった、限られた表示能力の端末でブラウズする際に、画像をフィルタリングして表示させなくしたり、テキストのレイアウトをその端末にあうように変更したり、自動的に変更するミドルウェア。E-707側には特別のソフトをインストールすることなく、また既存のウェブコンテンツを変更することなしに、E-707で快適なウェブブラウズが可能になるとしている。
『E-707』の主な仕様
CPU | 日本電気(株)製Vr.4122-150MHz |
OS | Microsoft Windows for Pocket PC(Windows CE 3.0) |
メモリー | RAM32MB、ROM32MB |
ディスプレー | 横240×縦320ドット、タッチパネル付きハイパーアモルファスシリコンTFTカラー液晶(6万色表示) |
インターフェース | USB、RS-232C、IrDA 1.1 |
スロット | コンパクトフラッシュスロット(Type II)×1、SDメモリーカードスロット×1 |
無線通信機能 | PDCパケット方式、通信速度9600bps |
電源 | 専用リチウムイオン充電池 |
駆動時間 | 約8時間(1分操作、10分表示の繰り返し)、受信連続待ち受け約150時間(本体電源OFF時)、連続送信約2時間、連続受信約4時間 |
サイズ | 横82.6×縦132×高さ25.2mm(突起部含まず) |
重さ | 約310g(充電池含む) |
日本無線(株)のGPSユニットを装着したE-707。アンテナ部分はこのように伸ばすこともできる。SDメモリーカードスロットは本体右側にある |
E-707(左)とコンシューマー向けのE-700(右)。厚みはE-700の18.9mmに対して25.2mmとかなり厚い。重さでは約218gに対して90gほど重い約310gとなっている |
カシオでは、コンシューマー向けと企業向けそれぞれにはっきりと分けた製品作りを行なっている。今回は企業向けということだったが、2001年以降、何らかの無線機能を内蔵したコンシューマー向けPocket PCの登場も考えられる。カシオでPocket PC製品を扱うコンシューマ事業部長の鈴木常務取締役は、「コンシューマー向けでは価格ということがかなり重要な要素となる。現在は携帯電話の価格が安いのはキャリアーからのキックバックが大きいからだ。今後同様の傾向が続くかどうかは難しい。むしろPocket PCにはBluetooth機能を内蔵し、同様にBluetooth機能を内蔵した携帯電話を利用して通信を行なうという方法が良いのではないか」とし、Bluetooth機能の内蔵に積極的な姿勢を見せた。
携帯端末のシェアではPalm勢に押されているものの、2000年度は世界の携帯情報端末市場は1000万台ともいわれており、2001年には1500万台にも達する予測がされるなど、市場全体が急速に拡大していることは確か。日本でも2001年には、これまでWindows CE端末を発売してこなかった(株)東芝や三菱電機(株)の参入が予想されるほか、無線機能内蔵のPalm機も春には登場すると見られており、2001年は無線機能搭載携帯情報端末の当たり年になりそうだ。