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米MSのバイスプレジデントが来日――40億ドルかけてインターネットをプラットフォームへ

2000年12月01日 19時06分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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マイクロソフト(株)は1日、米マイクロソフト社プロダクティビティおよびビジネスサービス担当グループバイスプレジデントであるJeff Raikes(ジェフ・レイクス)氏の来日に伴い、.NET戦略説明を中心としたプレスラウンジテーブルを行なった。

米マイクロソフト社プロダクティビティおよびビジネスサービス担当グループバイスプレジデントであるJeff Raikes氏。'81年入社と同社幹部の中では社歴が長い。余談だがメジャーリーグのマリナーズオーナーの一員でもあるらしい

Raikes氏は、Microsoft Officeとその次世代製品Office.NET、ビジネスアプリケーション部門、ビジネスツール部門(VisioおよびMicrosoft Project)、Tablet PCやeBookなどのエマージングテクノロジー(eMerging Technology)部門などを担当するグループバイスプレジデント。また、マイクロソフトの基本方針を決定するシニアリーダーシップチームのメンバー、および全社の広範な戦略および事業計画を担当するビジネスリーダーシップチームのメンバーでもある。2000年7月まではワールドワイドでのセールス・マーケティング・サービス部門の総責任者であったが、同社の.NET戦略展開に伴い、製品群の開発分野の責任者になったという。

プラットフォームの概念にインターネットを含める

同氏は、現在IT産業は興味深い時期にあるとし、今後10年間でインターネット利用はさらに拡大し、ビジネスのやり方や個人のコンピューターの利用方法が変わるというパラダイムシフトが起きていると語った。マイクロソフトは'80年代にはクライアントPCにフォーカスしており、PCこそが開発プラットフォームそのものだったのに対し、'90年代に入るとクライアントPCだけでなくクライアントサーバーも開発プラットフォームとして追加したと説明。これにより同社は重要なサーバー製品群を提供、エンタープライズ分野の中核をなすようになったとし、このことが現在のインターネット時代における同社の成功基盤となったと語った。

同氏は「現存するECサイトのうち75%以上がマイクロソフトのテクノロジーを使っており、BtoB分野でも50%以上がマイクロソフトテクノロジーを利用している。この数字はサン・マイクロシステムズの5倍だ」としながらも、「われわれはこれだけの成功では満足していない。顧客はわれわれにさらなる期待を寄せている」と語った。

また同氏は、今後はクライアントPCとクライアントサーバーだけでなく、ネットワークまでをプラットフォームの概念に含め、プロダクトサービスという世界へ移行していく、これが.NET戦略だと説明した。同社はこのために40億ドル(約4434億円)規模の研究開発投資を行なっているという。

同氏は「インテルとマイクロソフトはクライントPCだけでなくクライントサーバーでも成功してきた。われわれはその成功を将来の基盤として利用できる。今後もあらゆる形においてPCは基盤を担う。デスクトップだけでなくTablet PCも使われるし、エンタープライズ分野ではDataCenter Sevrerもある。DataCenter Serverはサンのシステムに匹敵しながら、コストは3分の1だ。全体のインフラの中で重要な部分を担うだろう」としている。

ユーザーインターフェースも拡張、さまざまな認識技術を標準搭載

また.NET戦略では、ユーザーインターフェースも強化し、音声認識や視覚認識、インクおよび手書き認識などを搭載する新ユーザーインターフェース“ユーザーエクスペリエンス”という概念を実現する。同氏は次期Windows『Whistler』の後のOSでは、音声認識や、インクおよび手書き認識が標準機能として加わるとしている。

ユーザーエクスペリエンスには、デスクトップPCやPDA、携帯電話、ワイヤレス機器などをコントロールできるようにする“情報エージェント”も用意され、ユーザーの代わりにエージェントが必要な情報を探して通知できるという。

また、現在は1つのデバイスに格納されている情報は、そのデバイスに固有に結びついているが、同社はインターネットをベースとしたストレージを実現し、格納されている情報を複数のデバイスで利用できるようにするとしている。

またTablet PCについて同氏は、「Windows 2000マシンと同様のパワーを持ちながら、シンプルなメモ取り機能もあわせて実現する。5年後にはこのようなPC機能とメモ取り機能をあわせ持った製品がモバイルの主流になるだろう」と語った。

先日米国で発表されたTablet PCのプロトタイプ。「今後モバイルでは主にこういったデバイスを利用することになるだろう」(Raikes氏)

ソフトをサービスとして提供

.NET戦略では、ソフトウェアをウェブベースのサービスとして捉える。クライアントサーバーとネットワークにより、アプリケーション構築方法が変化し、開発会社はアプリケーションに新機能を追加する際、社内のソフトウェアサービスと社外のソフトウェアサービスを組み合わせることで容易に機能を提供できる。

例えば、ECシステムを構築する場合、税計算ツールを開発者自身が作成しなくても、ウェブサービス上にある税計算機能を利用できる。また、健康管理のアポイントメントシステムを構築する場合は、インターネット上に存在するスケジュールソフトとシステムを組み合わせることが可能という。

サービスとしてのソフトウェアの提供は現在進められており、先日米国でビル・ゲイツ氏がVisual Studio.NETを紹介、開発者がすぐに利用できるようβ版リリースを行なっている。

また、Microsoft Office 10と次世代製品Office.NETについては、「Office 10は情報エージェント実現の第1段階としてスマートタグと音声認識を導入する。また、ASP対応も行ない、Office 10を1つのサービスとして利用できるようにする。Office.NETでは、どこからでもOfficeドキュメントにアクセスできるようになり、バーチャルミーティング機能の搭載やユーザーエクスペリエンスの強化が行なわれる」と説明した。

「サンのマクリーニ会長はこれから大変だ」

同氏は「インターネットがプラットフォームの一部になるというパラダイムシフトは、'80年代から'90年代初頭に起こった文字入力からGUIへの変更よりも大きなインパクトを与えるだろう」としている。

また、サン・マイクロシステムズやLinux陣営などのライバルたちに対して同氏は、「サンは、今後インテルやマイクロソフト、コンパック、デルなどの研究開発努力に対して競争していかなければならない。サンは過去においては成功を収めてきたが、これから直面する時代は彼らの能力を上回る技術が必要。ユーザーはより高い価値をより低いコストで実現することを求めているのに、サンのマクニーリ会長は事実と反する認識を作ろうとしている」

「Linuxは技術的にもアプローチ的にも注目されているが、セキュリティーの進歩やマルチプロセッシングの進歩、カーネルの進歩を考えると、現在のLinux開発者同士のゆるやかな協力ではユーザーが求めるものを作るのは難しいだろう。オープンソースソフトの役割は、重要な発展として多くの企業が注目しているがNetscape 6などをみても問題があることがわかる。ユーザーにシステムに応じた信頼性、拡張性が提供できるか説明することが重要だ」と語った。

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