10月に行われた技術展示会「CEATEC JAPAN 2000」でひときわ注目を集めたシャープの“キーボード付き新コンセプトZaurus(Zaurus e concept)”がついに製品化、12月中旬に発売される。
噂のキーボード。実物を見ると、キートップは印象よりもむしろ大きく感じられるだろう。表中の“カバー”とは半透明の液晶保護カバーが付属する。 |
正式名称「MI-E1」と名づけられた新型Zaurusは、フロントライト付き反射型カラー液晶&縦持ちスタイルを採用し、上端にはNTT DoCoMoのデータカード型PHS「P-in Comp@ct」も差せるCompact Flash(TypeII)スロットを、左側面にはSDカードスロットを装備し、幅広い使い方が選べるようになっている。なによりの特徴は、液晶画面の下の4方向+決定、取り消し、各種メニューボタンがズリッとスライドしてキーボードが現れるギミックだろう。このキーボード、配列はQWERTY方式でキーのひとつひとつは携帯電話の数字ボタンほどの大きさしかない。最初は人差し指でひとつずつ押すことになるだろうが、慣れてくれば両手の親指で携帯メールを早打ちする感覚で手早く入力できるようになる、かもしれない。
11月21日現在発表されている仕様は表のとおり。CPUの動作クロックは基本的に非公開だが、同じく縦表示が可能な「MI-P10(ザウルス アイゲッティ)」よりも高速化されている。電源はリチウムイオン充電池で、連続10時間の表示が可能。PCとの連携には本体下端の16ピンシリアル端子に別売のUSB接続ケーブルを接続して行うが、動画や音楽などの大容量のデータはCFカードやSDカード経由でもやり取りできる。充電はその隣にある電源端子にACアダプタを接続して行う。現時点ではオプションに用意されていないのが残念だが、MI-P10で好評な、1ボタンでPCとのデータ転送/同期が行える使い勝手の良いクレードルの発売に期待しよう。
また、Zaurusシリーズでは初のP-in Comp@ctを装着可能モデルの本機だが、P-inユーザーの声に答えて、Zaurusのメイン画面で電波状況をアンテナのアイコンで表示する仕組みが用意されている。
搭載ソフトは
エンタテインメントを優先
表を見てもわかるように、搭載ソフトではワープロ、表計算、ボイスレコーダといったビジネスツールを省略し、エンタテインメント志向が強くなっている。「ムービープレーヤー」では320×240/240×176/160×120ドットの3サイズのMPEG-4動画が再生可能で、試作機を触った印象では240×176ドットでも十分滑らかな動画が楽しめた。
オプションの「MPEG4ビデオレコーダー」。前面と背面にコンポジット入力が1系統ずつ用意され、スイッチで切り替える。出力先はPCカードスロットなので、アダプタを介してSDカード、Compact Flashなどユーザーの環境に合わせて選べる。なお、この写真はモックアップを撮影したものであり、発売される製品ではデザイン等が変更される可能性がある。 |
このMPEG-4動画再生機能を、PCを使っていないユーザーでも利用できるように、オプションとしてコンポジット入力×2からのアナログのビデオ&音声信号をPCカードスロットに差したメモリカードにMPEG-4形式のデジタルデータで記録、保存する「MPEG4ビデオレコーダー」(3万5000円)を用意している。IEEE1394やUSBなど、PCと直接接続するための端子を持たないものの、これはPCユーザーでも食指が伸びる魅力的なデバイスのひとつだろう。
また、細かいところでは、「インターネットメール」がP-in Comp@ctと連動して、指定時間に(もしくは指定した間隔で)メールを自動受信する機能を持ち、「インターネットブラウザ」も暗号機能がSSL(128bit)に対応した。従来は同(40bit)だったが、オンラインバンキングなど高度な暗号機能を前提とするWebサイトも増えているため、機能強化を図ったという。ただし、インターネットブラウザはWebサイトの画面設計に合わせて横表示となるため、URLをキーボードから入力したい、という場合は向きが合わないかもしれない。ソフトキーボードが利用できるので、使いやすいほうを選べばよいだろう。
気になる発売時期と価格だが、12月15日に店頭に並ぶ予定で、価格はオープンプライスだが、実売5万円前後、あるいは5万円を切る可能性もある、とか。Zaurusシリーズの中でも、とくに個人ユーザーにターゲットを絞って開発された本機は、Palmなどすでに他のPDAユーザーにも気になる存在となりそうだ。
シャープ(株)
問い合わせ先 コンシューマセンター 043-297-4649/06-6621-4649
オプションの「USB接続ケーブル」と合わせて撮影。このケーブルは試作機であり、発売されるものとは変わる可能性がある。反射型カラーTFT液晶は、フロントライトもあって多少暗い状況でも画面は綺麗に見える。 |
本体下部のオプションポート16(シリアル端子)と電源端子。これらを同時に満たすクレードルの開発を大いに望みたい。 |
機種名 | MI-E1 |
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価格 | オープンプライス |
CPU | 32bit RISC(動作クロックは非公開) |
メモリ | 16MB(ユーザーエリア7MB) |
表示 | 3.5インチ フロントライト付き反射型カラーTFT液晶240×320ドット/6万色 |
インターフェイス | CFカード(TypeII)、SDカード、オプションポート16(シリアル端子)、IrDA、ヘッドフォン端子(ステレオ)、ACアダプタ |
付属品 | リチウムイオン充電池、ACアダプタ、液晶保護カバー、タッチペン、CD-ROM |
主な機能 | PIM機能(アドレス帳、スケジュール、フォトメモリー、時計、電卓 など)、ムービープレーヤー、ミュージックプレーヤー(MP3)、インターネットメール、インターネットブラウザ、ブンコビューア、マンガビューア |
電源 | リチウムイオン充電池 |
サイズ | 81.5×139.5×17(カバーなし)~20(カバーあり)mm |
重量 | 約200(カバーなし)~220(カバーあり)g |