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米コンパックのカペラス会長が初来日し、コンパック主催のイベントで基調講演

2000年11月03日 00時06分更新

文● 編集部 佐々木千之

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米コンパックコンピュータ社の会長、社長、CEOを兼務するマイケル・カペラス(Michael D. Capellas)氏が初めて来日し、2日に開催されたコンパックコンピュータ(株)のプライベートイベント“Compaq Forum 2000”において基調講演を行なった。

米コンパック、CEO、社長兼会長のマイケル・カペラス氏

カペラス氏は、'99年4月に突然辞任した前CEOのエッカード・ファイファー(Eckhard Pfeiffer)氏の後任として7月に社長兼CEOに就任、さらに今年9月28日、18年間会長職を務めたベンジャミン・ローゼン(Benjamin Rosen)氏の後を受けて会長職にも就任した。

なお“Compaq Forum 2000”は同社が年1回、企業のIT関連担当者や開発者などに向けて開催しているプライベートイベント。インターネットを通じて事前登録が必要だが、参加料は無料。3回目となる今回は、千葉県・東京ディズニーランドそばの2つのホテルを使い、ビジネスセッションとテクニカルセッションに分かれて60以上のセッションが行なわれた。冷たい雨模様の天気だったが、午前中だけで1000人以上の来場者があった。

“Everything to the Internet”

基調講演では“Everything to the Internet”というタイトルで、インターネット時代におけるコンパックの戦略が語られた。

カペラス氏はまず、米国時間で24日に発表された2000年第3四半期(6~9月期)の業績について触れた。売上高が前年同期比22パーセント増と過去最高の112億ドル(約1兆3200億円)に達したこと、なかでもインダストリースタンダードサーバーが世界的に好調で前期比41パーセントの増加となったことをあげた。またSAN(ストレージエリアネットワーク)製品も好調に伸び業界2位に躍進した、と業績の好調さをアピールした。

続けて、現在のIT業界のトレンドと今後の流れについて、「いまや映像などのエンターテイメントがデジタルコンテンツとして、家庭のコンピューターにブロードバンドネットワークを通して届くようになりつつある。そして、ワイヤレスコンピューティングの発達により、どこでもいつでもインターネットにアクセスできる“パーベイシブコンピューティング”が広まりつつある。今後3~5年間に、ワイヤレスネットワークとブロードバンドネットワークのユーザーはそれぞれ10億人に増加する」と述べ、ネットワークの広帯域化とワイヤレスアクセスの増加と、コンパックがそれに対応していく姿勢を見せた。

さらに「コンパックが行なっているのは、インターネットへのアクセスを最適化し、その上でのビジネスを考えていく。企業の基幹業務のインターネット化をさらに推進する手助けを行なう。そのために必要なのがサーバーとストレージ。ただ、この時代にはすべてを1社で行なうことなどできない。パートナーであるマイクロソフト、オラクル、インテルなどと手を組んで進めていきたい」とした。

講演の最後には、日本でも1日の夜からCMを開始した、コンパックの新しいブランドキャンペーン“Inspiration Technology”に触れ「技術のための技術開発ではなく、さまざまな問題解決のために技術を利用して行かなくてはならない」と締めくくった。

1つのOSですべてに対応するのは無理

講演後、プレス関係者とQ&Aセッションが設けられた。記者からの「IBMは先日eServerという、サーバーの上から下まで一貫してLinuxを採用していくという計画を発表した。コンパックはHimalaya、AlphaServer、インテルベースのサーバーと分かれているが、IBMの戦略についてどう思うか」という質問がなされた。これに対しカペラス氏は「ウェブサーバーなどコンテンツのデリバリー向け、金融関連業務向け、科学計算などのハイパフォーマンスコンピューティング向けと、さまざまな用途に対してそれにあったOSがある。1つのOSですべてに対応していくのは無理があるのではないか」と、IBMのeServer戦略に疑問を投げかけた。

「コンパックも含め、サービスに力を入れると宣言しているメーカーは多いが、利益が上がっていないのではないか」という質問には、「確かにいまは数字としていいものはあがっていない。しかしそれはどこも同じ。それには3つの理由がある。1つには'99年の“Y2K”投資の後の減速度合いがここまで大きいとは読んでいなかったこと、2つめは企業が過去2、3年間にERPやCRMといった大型アプリケーションに投資しており、いまはそれらIT関連システムのリエンジニアリング時期が終わりつつあること、3つめは2に関連するが新しいサービスへの移行時期にさしかかったこと」と理由を挙げ、「しかし将来サービス関連の需要が大きく伸びることは間違いない。その兆しはすでに見えている」と、サービスに力を入れる姿勢に変わりのないことを明らかにした。

コンパックコンピュータ、代表取締役社長の高柳肇氏

また、コンパックの日本におけるコンシューマー戦略についての質問では、コンパックコンピュータの高柳肇社長が「コンパックの日本のコンシューマーパソコンにおけるシェアは、'97年には0だった。これがキヤノン販売との販売提携後大きく伸びて現在は6パーセントになった。ただ日本では現在、大きくシェアを伸ばしているのはソニーのバイオだけで、他社はたじたじとなっている状態だ。あの(安い)価格付けはどういう戦略なのかわからないが、コンパックとしては採算を度外視してまで製品を投入する考えはない」と答えた。

これに関連して、日本向けのPresarioのデザインを行なうデザインセンターの成果について尋ねられると、カペラス氏が「売り上げは上がっているが、これは私が求めていたものの半分。雑誌をいろいろ見ていて気が付くのは、本当に革新的なデザインは日本から登場しているということ。だから日本のデザインセンターには、もっともっと革新的な製品を開発してもらいたい」と述べた。これには高柳氏が「日本にデザインセンターを設置することを決めたのはカペラスの決定で大英断だった。求めていたものの半分というが、カペラスにはきちんとしたレポートがあがっていないのかもしれない。日本で開発されたスリムタワーデスクトップが、いまやアメリカコンシューマー市場ではメインの機種となっている」と応じ、日本デザインセンターの成果はすでに大きいと強調した。

ファイファー氏がCEOを務めていた時期に、業績の悪化に苦しんだコンパックだが、カペラス氏のもとで「完全に復活した」(高柳氏)と言えるようだ。

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