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半導体シニア協会主催の特別講演会で、イスラエル公使が同国のハイテク産業について講演

2000年10月27日 00時13分更新

文● 編集部 佐々木千之

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半導体産業に関わる開発者や研究者の親睦団体である半導体シニア協会(SSIS:SSIS:Society of Semiconductor Industry Seniors)は26日、イスラエルの経済担当駐日公使であるレビー・エラド(Levy Elad)氏を招き、“イスラエルのハイテク産業の現状と将来”というテーマで特別講演会を開催した。

80名ほどの会員が熱心に聴講した

講演では、日本とイスラエルの共通点や歴史的背景から、なぜイスラエルでハイテク産業が発展したか、イスラエルの強みは何かといったテーマの枠に収まらず、日本とイスラエルの文化の比較にまで及んだ。以下あらましを掲載する。

「日本に来てイスラエルと日本はにているところがたくさんあると感じた。まず歴史が古いことと石油やダイヤといった天然資源のない国だということ。しかし、資源がないことがかえって、それを補うために頭を使って発展がなされてきたのではないか。イスラエルでいえば、ダイヤが産出されるアフリカや、石油を持つアラブ諸国、石油のみならず多くの天然資源を産出するロシアよりも強い産業を築いてきた。

国民の教育レベルが高いこともある。日本の母親が子供に勉強しろ勉強しろというのを聞いて、イスラエルの母親像と同じだと驚いた。こうした熱心な教育の結果、産業が発展してこれたと言える。

最近の情勢をふまえて申し上げれば、国が強くなるということは軍人を増やすということではなく、多くの大学を建て、多くの学生を育てるということ。ヨーロッパの他の国々も過去に学んだように、若者を戦争に送って戦いを学ばせるよりも、学問を学ばせた方が産業が発展し、遙かに国が豊かになる。

イスラエルは建国以来50年間で人口が100万人から600万人に増加した。その多くは外国で高い教育、特に数学や技術を学んできた技術者や学者だ。ロシア、ヨーロッパ、アメリカの技術を学んだユダヤ人がイスラエルに戻り、各国の技術を持ち寄ってオリジナリティーのあるものを作っている」

駐日イスラエル公使(経済担当)のレビー・エラド氏。身振り手振りを交えてエネルギッシュに語った

「ハイテク産業を発展させ、外貨を稼がなければなければイスラエルの国は発展しない。しかもただ開発するのでなく、前進し続けなくてはならない。そのためには、2つが必要だ。

1つは教育を受けた人々のマンパワー。イスラエルは、数学や物理、医療、法律の専門家の人口に対する比率は世界で最も高い。2つめはその産業を現実のものとする資金。幸い世界中の多くの人々がイスラエルのハイテク産業に投資をしており、過去50年に1000億ドル(約10兆円)にも達している。

例えばイスラエルの、ある技術の研究開発を行なう企業が少し前に米国の企業に48億ドル(約5200億円)で買収された。まだ1つの製品も売っていないにも関わらず。こうしたハイテク産業に対する高い評価がイスラエルの経済を安定したものにしているといえる。

ハイテクの開発にあたっては、国もバックアップしている。通信インフラを用意し、大学を多く建てて学生を送り出している。初期段階では資金を銀行から調達したい企業の信用保証を政府が行なったりもした。その後次々とベンチャーキャピタルが生まれ、我々としては思った以上の成功を収めることができた。

最後に申し上げたいのは、我々はこうした技術による繁栄を独占するつもりはなく、隣国にも売り、豊かになってほしいと考えているということ。そうすることが最終的に平和をもたらすと信じている」

建国以来6度の戦争を経験し、現在もなお紛争を抱えるイスラエルがハイテク産業の育成に力を入れている理由に、隣国への対抗手段としての軍事産業という側面があることは否定できないとしても、国の発展の手段として、そして平和をもたらす手法としても考えられているという点が印象に残った。

半導体シニア協会 TEL.03-3815-8939

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