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松下、東芝、ソニー、日立の4社、デジタルSTB利用のサービスで企画会社を設立

2000年10月23日 19時01分更新

文● 編集部 佐々木千之

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松下電器産業(株)、(株)東芝、ソニー(株)、(株)日立製作所の4社は23日、都内で記者発表会を開催し、デジタル放送受信機(STB)を核とした、蓄積型データ放送サービスや双方向サービス“eサービス”の事業化を検討する企画会社株式会社イー・ピー・エフ・ネットを11月に設立すると発表した。また、eサービスに対応する衛星放送サービスを行なう、株式会社イー・ポート・チャンネルを2001年1月に設立するとしている。

発表会で協調をアピールする4社社長。左から、ソニーの安藤社長、松下電器産業の中村社長、東芝の岡村社長、日立製作所の庄山社長

松下、東芝、ソニーの3社は今年の7月にeサービスを実現するために、ハードウェア、ソフトウェア、サービスの規格化を目指し、“eプラットフォーム設立準備会”を発足させた。その後8月に、日立を加えた4社で専用STB(eSTB)とシステムの検討、さらに(株)スカイパーフェクト・コミュニケーションズ、住友商事(株)、全国朝日放送(株)、(株)テレビ東京、(株)電通、(株)東京放送、(株)東北新社、日本衛星放送(株)、日本テレビ放送網(株)、(株)フジテレビジョンを加えた14社でサービスの検討を行なってきた。

この準備会で検討してきた結果、1)HDDを備えた、蓄積型放送サービス/双方向サービス向けeSTB仕様の共通化、2)eSTBをベースとしたeサービスとそのプラットフォームの構築、3)eSTBの早期普及とeサービス提供を目的としたビジネスモデル創出、という3つのeプラットフォームの目的を共有し、賛同を得られたとし、具体的な企画を建てる会社の設立に合意したとしている。

イー・ピー・エフ・ネット、イー・ポート・チャンネルの代表取締役社長就任予定の戸田長作氏

eプラットフォームサービス企画会社であるイー・ピー・エフ・ネットの資本金は2億円、松下と東芝が25パーセントずつ、ソニーと日立が10パーセントずつ、残りの10社が各3パーセントずつ出資する。11月中に設立予定で所在地は東京都中央区としている。代表取締役社長には、現在松下電器産業副理事の戸田長作氏が就任する予定。

企画会社として設立された後、eSTBの受信機仕様、サービスの仕様策定と維持、サービスの開拓と普及など、eプラットフォーム運営に関する事業検討を行ない、2001年1月には実際の事業を行なう会社を設立する。2001年末にはサービスを開始する意向で、サービス開始後3年での単年度黒字化と、3~5年での会員300万の確保を目指すとしている。ただし、現時点では具体的なサービス内容、端末やサービスの価格はいっさい明らかにされていない。

なお、イー・ポート・チャンネルは、蓄積型データ放送サービスや双方向サービスのプロモーション、サービスの開発と提供を目的としており、現在東経110度のCSデジタル放送委託放送業務の申請を行なっている。事業者認定がおり次第(2001年1月予定)設立の予定。資本金は8000万円で、松下と東芝が38.75パーセント、ソニーと日立が4.5パーセント、そのほか日本衛星放送(4.5パーセント)、スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(3パーセント)、電通(3パーセント)、住友商事(2パーセント)、東北新社(1パーセント)が出資する。本社は東京都中央区で、代表取締役社長は戸田長作氏が兼務する。2001年4月には事業会社を設立したいとしている。

4社の連盟による発表会ながら、設立される2社への出資比率では、松下と東芝、ソニーと日立、という2つのグループに分かれた形になっているが、これについて詳しい理由は述べられなかった。このあたりはサービス立ち上げを急ぐため、規格統一では協力するが、それ以外では各社の戦略の微妙な違いが出た格好だ。

記者発表では松下、東芝、ソニー、日立の社長がそれぞれ挨拶した。

松下の中村社長は「テレビはパソコンよりも高い普及率で、より親しまれている。テレビがデジタルデバイドをなくす。テレビのリモコン文化を発展させて、真に情報バリアフリーの環境を作りたい」と、誰でもが使えるものという点を強調。東芝の岡村社長は「高速インターネット、携帯電話、デジタルテレビを一体化させて、日本型の情報スーパーハイウェイを構築し、B2B、B2C、C2Cを超えた、家庭の居間をつなぐパーソン・ツー・パーソン環境を実現する」とインフラストラクチャーとしての面を強調。

ソニーの安藤社長は「最大の意義はこの4社が協同で技術規格を統一するということ。とにかく市場を早く立ち上げることが重要と考えている」と述べ、日立の庄山社長も「家庭と放送事業者をつなぐ大変重要な役割を持つ事業。デジタル端末が普及するためには共通の基盤を構築していくことが重要だ」と、eSTB市場を少しでも早く立ち上げるための連合であることを強調した。

7月に準備会が発足して11月には企画会社、2001年1月には事業会社を設立し、2001年末にはサービス開始と、規格統一というプロセスを内包するにしては、非常に早く、これまでのビデオ規格やDVD規格についての展開とはまったく異なっている。これは、のんびりしていると、どんな新サービス/新規格が登場して市場を席巻するかもしれないという、インターネット時代の危機感を示したものと言える。

また、これまでテレビ電波を通じたデータ放送は、文字放送や“ADAMS”、“bitcast”などがあるが、サービス展開の遅さ、ユーザーメリットのわかりにくさ、規格の不統一などもあって、広く普及したものはない。今回4社は、事業化までにはさらに参画するメンバーを募るとしており、業界が一丸となって、テレビを中心としたeサービスに賭けている様子が見て取れる。これまで国内メーカー同士で戦ってきた感がある家電メーカーが、団結したときどのようなサービスが展開されるのか非常に注目される。

eプラットフォーム構想概要
eサービスのイメージ
イー・ピー・エフ・ネットと、イー・ポート・チャンネルの位置づけ
eサービスによるショッピングのデモ画面。テレビ番組を見ていて画面上に“e”マークが出たときに、ボタンを押すとこの画面が呼び出される、といった想定で、ここで商品の購入まで行なえる
デモで使われたeSTB。リモコンとワイヤレスキーボードを備えていた

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