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【INTERVIEW】Macユーザーの趣向に徹底的にこだわった『Microsoft Office 2001:mac』いよいよ登場

2000年10月20日 23時02分更新

文● 林 信行

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“WORLD PC EXPO 2000”開幕にあわせて米マイクロソフト社Macintosh Business Unitのチームが来日した。来日したチームはプレスなどへの製品説明に加え、Mac版のMicrosoft Officeを使う日本企業やユーザー宅を訪問して、どのような使われ方をしているかなどの実態調査を行なっているようだ。

今回、同部門のジェネラル・マネージャーであるケビン・ブラウン氏をインタビューする機会を得たので、その概要をかいつまんでお届けしたい。なお、同インタビューはMacPeople22号(10月29日発売)、MAC POWER12月号(11月18日発売)にも掲載予定だ。

米マイクロソフトMacintosh Business Unit部門のジェネラル・マネージャーであるケビン・ブラウン氏

Office 2001:macは11月17日発売

ブラウン氏「既に広告などで案内をさせていただいている『Microsoft Office 2001:mac 日本語版』ですが、日本では11月17日から店頭販売をすることを正式に決めました。WORLD PC EXPO 2000では、この日本語版固有の新機能を中心に展示デモをさせていただいております」

「今回の製品では製品のブランドイメージを一新し、パッケージも一新しています。海外では斬新でユニークなデザインの再生可能なプラスチックCDケースに製品を入れて販売していますが、日本ではインストール方法などを書いたマニュアルを同梱したり、POSなどの日本の流通事情にあわせるために、このような箱に入れて店頭販売を行います。なお、箱の中には米国と同じCDケースが入っています」

『Microsoft Office 2001:mac 日本語版』のパッケージ(左)と、CDを収納するクラムシェルケース(右)

「ここでひとつ明確にしておきたいのは、この製品がMac OS 8および9用につくられたものだということです。Mac OS X用の製品の開発は今、まさに始まったところです。Mac OS X版の発売時期はまだ決まっていませんが、製品が完成し次第すぐにでも出荷する予定です。なお、今回、発売のOffice 2001:macを購入した人が損をしないように、Mac OS X版Office発売の折には安価なアップグレードサービスを提供する予定です」

――今回の製品はMac OS 8/9用とのことですが、Mac OS XのClassic環境との互換性はどうなのでしょうか?

ブラウン氏「これまでClassic環境での動作を入念にテストを繰り返したところ、問題なく動作することがわかっております」

製品をよりMacらしく

――Office 98と比べても機能はもとより外観も大幅に生まれ変わったOffice 2001ですが、このドラマチックなまでの変貌ぶりにはどういった背景があるのでしょうか?

ブラウン氏「われわれ、Macintosh Business UnitはMac用製品を開発する専属の部門です。このためわれわれは常日ごろからMacユーザーのニーズを徹底的に調べています。実際、Office 98を開発したときもウェブページなどを通して、Macユーザーの意見を積極的に募集し、その結果としていくつかMac版Officeならではの機能を搭載するにいたりました」

「こうして実際にOffice 98を出荷したことで、我々にはさらに多くのMacユーザーからの声が届くようになりました。多くのユーザーはわれわれが非常にいいMac用製品をつくっていると認めてくれましたが、その一方で、製品をよりMacらしい仕上げにしてほしいという声もたくさん届きました」

「例えば多くのユーザーは画面の上下を横断するツールバーが、ハードディスクなどのアイコンや画面下のポップアップウィンドウを隠してしまうことに不満を感じていました。そこでOffice 2001では、画面上のツールバーを短くして、画面下のステータスバーはウィンドウの下枠に埋め込むように改良しました」

「ところで、Office 2001でMacらしくなっているのは、何も表面的なことばかりだけではありません。実際にプログラム内部のコードもよりMacらしい手法で作り直しています。開発用のツールもMac開発社の間で標準的に使われているメトロワークス社のCodeWarriorに移行しました。これまではメモリーまわりやウィンドウまわりの管理で一部Windows用のコードをそのまま流用しているところがあったのですが、これらはすべてMacの標準的プログラミング手法で作り直してあります。つまり、Office 2001:macは、よりMacらしいソフトに“見える”だけではなく、実際によりMacらしいソフトとして“振る舞う”はずです」

「こうした努力の結果、Office 2001:macはかなりMacらしいソフトにしあがったと自負していますが、われわれはそれだけにとどまりませんでした。われわれはMacユーザーによりよい使い心地を提供するために、アイコンやユーザーインターフェースデザインのためだけに10万ドル(約1080万円)を投じました(笑)。Office 2001:macに、最近のMacに似合う外観やアイコンを用意するために、われわれは英国のナイクロスというデザイン会社と組みました。これはMac版Internet Explorer 5のデザインも手がけた会社です」

「ところで、このOffice 2001:macのアイコンはMac OS Xでもきれいに見えるように128×128ドットの大きさでデザインされています。このため、Mac OS Xで(Classic機能を通して)利用した場合には、ドックの縮尺に関わらず非常に精細なアイコンが描かれるはずなのでぜひ試してみてください」

「ここでひとつ明確にしておきたいのは、Office 2001は非常にMacライクな製品にしあがっていますが、それでいてなおWindows版Officeともこれまで以上に高い互換性を実現しています」

Macユーザーのさまざまなニーズに応える

――些細なことですが、Office 2001には“Office 2001テーマ”と“Mac OSテーマ”という2種類の外観が用意されているようですが、これはなぜでしょう?

ブラウン氏「実はOfficeを使うユーザーの多くがウィンドウの外観を変更するKaleidoscopeなどのシェアウェアを使っていることがわかったからです。Mac OSテーマはこうしたユーザーのニーズに応えるべく用意されたもので、このテーマを使えば、Kaleidoscopeの設定にあわせてOffice:macのウィンドウ形状などが変更できます。一方、こうしたソフトを使っていないユーザーは、ナイクロスがデザインした、Mac OSのプラチナルックに最適な外観を楽しむことができます」

――Macユーザーのニーズを徹底的に分析し、配慮しているとは知っていましたが、なんとKaleidoscopeユーザーにまで配慮していたんですね(笑)

ブラウン氏「その通りです(笑)。Macユーザーは自分ならではのMac環境に非常にこだわっています。われわれはそうした要望に応えなければなりません」

――今回の製品を開発するにあたり、マイクロソフトがMacユーザーのニーズを非常に詳細にリサーチし、研究したという話をよく聞きます。実際、それは今回の製品ロゴやパッケージにも活かされているようですが、この調査を通して、これ以外にも何かMacユーザーのおもしろい特徴がわかりましたか?

ブラウン氏「われわれはMacユーザーの趣向やニーズに対して非常に多くのリサーチを行なっていますが、それだけではなく、Windows版Officeのチームが行なったリサーチの結果にもよく目を通しています。MacユーザーもWindowsユーザーもOfficeを使って何をやりたいかといった根本的なニーズの点では似通っています。ただし、MacユーザーはWindowsユーザーとはちょっと違うところにこだわる傾向があります」

「例えば今回のMac版Officeに付属するExcelでは、Macユーザーの要望に応えて、名簿や商品一覧と言ったリスト型の情報をより簡単に管理するためのリストマネージャーという機能を搭載しましたが、Windows市場でもこうした機能へのニーズはあるもののMacユーザーほどは需要が高くないようです」

「今回のOfficeでは、日本のMacユーザーが世界中に大きく貢献した一面もあります。日本ではOutlook Expressのアドレス帳機能などに対して、非常に多くの要望がありました。われわれはこうした要望に応えるべく、Entourageのアドレス帳機能を大幅に手直ししました。その結果、同機能は日本のユーザーだけでなく、おそらく世界中のMacユーザーが喜ぶような出来にしあがりました」

ユーザーの目的にフォーカスした機能を提供

――今回のOfficeはより個人ユーザーやコンシューマーのニーズにフォーカスしたとのことですが、iMacやiBookを使う個人ユーザーの多くは、これらのマシンに添付しているAppleWorksを使っています。Officeの方が機能は豊富だが、AppleWorksの方が機能が少ない分だけ操作が覚えやすく初心者に使いやすいという見方もありますが。AppleWorksにどう対抗していくのでしょうか?

ブラウン氏「コンシューマーをターゲットにした場合、もっとも重要なのは価格です。ただし、本体に無料でバンドルされているAppleWorksと価格面で勝負していくことは実質的に不可能です。そこで、われわれはOffice 2001を使えばいろいろなことがいかに簡単に行なえるかをアピールする形で勝負することになります」

「機能が少ないほうが使いやすいという考えかたは確かにあるかも知れません。実際、iMovie 2はシンプルながら洗練されたインターフェースで、非常に操作が簡単だと思います。ただし、同じアップル社の製品だからと言ってAppleWorksもそうだとは思いません。iMovie 2は、ユーザーが目的を達成するまでが、非常に簡単な操作でうまく流れるように設計されていますが、AppleWorksの方はユーザーに目的達成の入り口を提供しているだけです。例えば何かの一覧表をつくろうと思っても、ユーザーを何も手助けしてくれない真っ白な表組みが現われるだけです」

「われわれはよりユーザーの目的にフォーカスをしたアプローチを取っています。例えば新しく搭載したハガキマネージャーを使えば、非常に少ないステップ数で簡単にハガキの宛名印刷などができてしまいます。ちなみに、これはもちろん、日本語版独自の機能です。同様の機能はWindows版Officeにもありますが、われわれはMacユーザーの趣向を研究し、ユーザーインターフェースをさらに洗練させ、Windows版の類似機能よりもさらに少ないステップでこれができるようにしています。Office 2001:macの発売日がもう少し早まれば、他部署がWindows用に発売予定のはがきスタジオという製品を出し抜くことができたのですが……(笑)」

「機能がたくさんあると何ができるかわからないという見方もあるかも知れません。そこで、われわれが開発したのが、Office全アプリケーションで共通しているプロジェクトギャラリーという機能です。iMacやiBookでコンピューターを使い始めたばかりのユーザーは、例えばビジネス用のフォームなどをつくるのにWordを使えばいいのか、Excelを使えばいいのかといった区別がつきません。人によってはそもそもOfficeがどんなことに活用できるのかわからない人もいるでしょう」

「そこでわれわれはOffice 2001:macでつくれる典型的な書類が分野別に整理されて一覧表示されるプロジェクトギャラリーという機能を用意しました。これはWord、Excel、PowerPoint、Entourageのどのソフトを使っている最中でも呼び出せます。Excelでプロジェクトギャラリーを呼びだし、そこで選んだ書類がWord形式であれば自動的にWordが起動するようになっています。もちろん、中級以上のユーザーにはこうした機能は邪魔でしょう。こうしたユーザーは簡単にこの機能をOFFにすることも可能になっています」

――私自身、Entourageをしばらくつかわせてもらっていますが、この製品のできにはかなり満足しています。今後、Outlook Expressの開発を凍結してしまうようですが、Outlook Expressに代わる製品としてEntourageを単体発売する予定はないのでしょうか?

ブラウン氏「その件に関してはまだまだ調査中です。ユーザーからのニーズが多ければ、単独製品として発売することも検討します。マイクロソフトはお金にさえなれば何でもする会社ですから(笑)」

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