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【WORLD PC EXPO 2000 Vol.15】「いずれは趣味の、脳の研究もしたい」――ハンドスプリングのジェフ・ホーキンス氏

2000年10月18日 18時18分更新

文● 編集部 小磯大介

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17日から開催されているWORLD PC EXPO 2000に、米ハンドスプリング社(Handspring)の創設者の1人で、チェアマン兼チーフプロダクトオフィサーにして、『Palm Pilot』の生みの親、ジェフ・ホーキンス氏(Jeff Hawkins)が登場。同氏と、ハンドスプリングのソフトウェア・インターフェースデザイン担当ディレクターのロブ灰谷氏、ハンドスプリング(株)の小見山茂樹代表取締役の3氏が、東京ビッグサイト会議室棟で会見を行なった。その内容をレポートする。

左から、ホーキンス氏、小見山氏、灰谷氏

【Q】日本市場参入にあたって、iモードを意識しましたか。

【小見山茂樹(以下K)】iモードは「パソコンがなくてもメール送受信や、インターネットへの接続ができる」という意味で、ユニークな製品です。コンシューマーにインターネットの利用を啓蒙したデバイスということになるでしょう。ハンドヘルドにiモードなど携帯電話の影響もあります。が、1台で完結する携帯電話と、あとから電話機能や無線機能を拡張できるハンドヘルドは別物で、関連性はないと考えています。

【Q】新機種『Visor Prism』『Visor Platinum』の発表を日本で最初に行ないましたが、それだけ日本市場を重視しているのでしょうか。

【ジェフ・ホーキンス(以下H)】その通りです。日本はアメリカに次ぐ第2のIT国家。そこで成功するのは、ワールドプレーヤーであるハンドスプリングにとって重要なことです。

【Q】『Visor Prism』はカラー液晶モニターを搭載しましたが、カラー液晶をなぜ必要と考えたのでしょうか。

【H】カラー液晶を必要とする用途も広がってくるだろうからです。カラー液晶を搭載しても、それほど本体サイズは大きくなっていませんから、みなさんには満足してもらえると思います。ただし、まだしばらくはモノクロ液晶モニターが市場の主流でしょう。

【Q】そのモニターですが、液晶解像度が低いと思いませんか。たとえば、Visorのモニター上では「兎」と「鬼」を区別できないなど、漢字を表記するにはもう少し高い解像度が必要なのですが。

【H】大きいモニター、高い解像度を必要とするアプリケーションの数は限られています。ならば、小さく、低い解像度で、コストを下げる方が、ユーザーの利益になると思います。もちろん、10年後も今の解像度のままだとは思えませんし、市場が、高い解像度を求めているのならば考えます。が、大きいモニターを持ち、高い解像度を誇るWindows CE機やザウルスは、いま、市場シェアを落としているでしょう?

【Q】ペン入力で漢字を入力できるようにはなりませんか?

【K】それは、グラフィティ(※1)による、かな漢字変換が浸透するかどうかです。浸透すれば、今まで通り。もし浸透しなければ、かな漢字入力認識エンジンを提供している会社がいくつかありますので、その中のどれを搭載するか考えることになると思います。その決断は、近いうちに下すことになるでしょう。

※1 グラフィティ:グラフィティ文字。アルファベットや数字を一筆書きで表わした、PDA入力用に開発された文字

【Q】次々と機能拡張されるVisorは、Palmの思想から離れ、だんだんとシンプルでなくなってきているのでは?

【H】ハンドヘルド市場には、多様で幅広い製品があります。今後も、サイズや形が違うVisorや、もっと薄いVisorなど、いろいろな製品を、みなさんは目にすることになるでしょう。しかし、それは複雑になることを意味しません。より使いやすくなることに変わりないからです。Visorのスプリングボード(※2)も、たしかに種類は増えましたが、それで複雑になったとは思っていません。

※2 スプリングボード(Springboard):Visor用の外部拡張スロット。ここではスロットに入れるモジュールのことを指す

【Q】PDAが、企業のネットワーク端末として使われる可能性について、Visorをコンシューマー向けに特化している御社の考えをお聞かせください。

【H】企業よりも、コンシューマー市場のほうがより巨大なのは事実で、Visorはその巨大な市場に向けた製品です。ですから、Visorは、オフィス向けとは違った用途向けに、今後も、他社製のPalm互換機とは違ったことをやって行きたいと思います。それを現段階で説明できないのが大変残念ですが。ただし、私たちはすべての市場に製品を提供する用意があります。もしオフィス向けの製品を提供する場合、どこかの企業とアライアンスを組むことになるでしょう。

終始笑顔で対応していたジェフ氏。ただ、心なしか疲れが溜まっているようにも見えた

【Q】何をするためにPalm OSを開発したのですか?

【H】パソコンは、いろいろな恩恵を人々に与えてくれます。しかし、値段が高く、買えない人がいるという時点で、パソコンは本当のグローバルにはなれません。私は、パソコンの恩恵を、もっと多くの人に受けてほしいと思って、Palm OSを開発しました。廉価なPalm OS搭載機は、世界中の数10億人に持ってもらえると信じています。

【Q】脳の研究が趣味だとうかがいましたが、世界中の数十億人がPalm OS搭載機を持つまでは、研究室に戻らないということですか?

【H】少なくとも2年間は、100パーセント、フルタイムでハンドスプリングのために働くと、入社の時に約束しました。しかし、その後は少しスローダウンして、脳の研究もやりたいですね。日本を発った後、ニューヨークに行くんですけど、実は脳学会に参加するんですよ(笑)。

【Q】ご自身の作ったPalm OSを、もし今、自由に直せるとしたら、どうしたいですか?

【H】(笑)。しいて言えば、“ネットワークプリファレンス”のデザインを再構築したいですね。

【Q】今まで手がけたものの中で、一番好きなものは何ですか?

【H】全部。ただし、今現在といえば、Visorと『VisorPhone』ですね。便利なので、携帯電話は解約してしまいました。

Visorを携帯電話にするスプリングボードモジュール『VisorPhone』を装着したVisor。ホーキンス氏が「今、一番好きなもの」というだけに、日本国内発売時には人気を集めそうだ

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