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大京とNTT-ME、マンションを核としたインターネット事業を展開する会社を共同設立

2000年10月16日 20時45分更新

文● 編集部 佐々木千之

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マンション事業を展開する(株)大京と、(株)エヌ・ティ・ティ エムイー(NTT-ME)は共同で、マンション内とその周辺住宅へインターネット接続サービスや各種コンテンツサービスを提供するインターネット事業会社“株式会社ファミリーネット・ジャパン(略称FNJ)”を10月6日付けで設立し、16日から営業を開始したと発表した。FNJの資本金は4億9000万円で所在地は東京都渋谷区。出資比率は大京55パーセント、NTT-MEが45パーセント。

FNJ代表取締役社長の村山茂氏

FNJの事業は大きく分けて3つある。1)光ファイバー網、ワイヤレス技術による定額常時接続のブロードバンド(広帯域)インターネットのインフラ構築。2)マンションを基地局とし、マンション(新築、既存含む)内およびその周辺住宅を対象としたISP事業。3)ブロードバンドインターネットサービス用ポータルサイト運営、オンラインショッピング、教育事業、医療・看護・介護などのインターネットコンテンツサービスの提供。これらの事業をまとめて“CYBERHOME(サイバーホーム)”というサービスブランドで展開するとしている。

FNJ代表取締役副社長の荒井隆氏

まず1)と2)については、NTT-MEが展開している企業向け光ファイバーネットワークサービス網“XePhion(ゼフィオン)”をマンションに引き込み、マンション内世帯に対しては電話線を使った“Home PNA”方式(1Mbps)、マンション周辺(半径400m)世帯には2.4GHz帯の電波を使った無線ネットワーク(1Mbps)によってインターネット接続を提供する。このサービス対象となるマンション(※1)は、大京グループが全国に持つのマンションに限らず、他社のマンションに対しても売り込んでいくとしている。目標として3年後に100万世帯の加入(大京グループのマンション20万世帯、他社のマンション20万世帯、マンション周辺60万世帯)をあげている。

※1 大京はマンション事業では最大手。自社で展開する“ライオンズマンション”のほか、グループ企業である扶桑レクセル(株)の“レクセルマンション”、かろりーな(株)の“ライオンズモリス”を合わせ、5700棟を持つ。世帯数では28万、80万人となる。年200棟程度を新規に建てているという。

3)では、1)、2)によるブロードバンドネットワーク環境を生かし、VoIPを利用した低額の国内・国際インターネット電話サービス、対戦ゲームサービス、通信教育サービスなどのコンテンツを提供する予定。さらにセンサーを家庭に設置してモニターする遠隔医療・介護サービスや、ケーブルテレビの機能を吸収したネット放送局サービスも視野に入れている。また、オンラインショッピングサービスでは、購入した商品の受け渡しの場所として、マンションに設置されている宅配ロッカーを、マンション居住者だけでなく周辺住民も使えるように解放し、「コンビニに替わるEコマース拠点とする」(FNFの村山茂代表取締役社長)としている。インターネット接続サービス、コンテンツサービスを合わせて、3年後に800億円の売り上げを目指すとしている。

大京常務取締役の柴田貢氏

NTT-MEはすでにHome PNAおよび無線ネットワークの構築とインターネット接続サービスを行なっており、同じハードウェアをFNJにも提供する。コンテンツ関連でもVoIPを利用した国内・国際インターネット電話サービス、またインターネット接続サービス“WAKWAK(わくわく)”を展開しており、これら既存サービスのノウハウを生かしていく。FNJ副社長でNTT-ME出身の荒井隆氏は、「集合住宅が多く、戸建て住宅密度が高いという日本の住宅事情を反映した、FTTA(Fibre To The Apartment(FNJの造語))とFWA(Fixed Wireless Access)によって、高速・定額・常時接続のサービスを展開する」と述べた。Home PNAと無線ネットワークでは、いずれもスループットが1Mbps(無線では1Mbpsを50世帯で利用)で、ブロードバンドというには少し不安があるのでは、という質問に対しては「現状のコンテンツにおいては十分な速度。Home PNA、無線ともに次世代のさらに高速の技術も検討中。マンション居住者に対しては将来、新築マンションからということになるが、世帯まで光ファイバーを引くことも考えられる」と答えた。

サイバーホームが提供するサービスは、標準で24時間365日の常時接続サービス、通信速度は最大で1Mbps、1世帯あたり50MBのホームページ容量の提供、家族分の電子メールアドレスの提供、ヘルプデスクによるサポート、保守が含まれる。マンション入居者に対しては専用のアダプター(1万5000円)を購入してもらうほか、初期費用として1万円程度を徴収する。マンション管理組合全体として加入する場合の月額利用料は2980円、入居者が個別に加入する場合は3980円となる。また、周辺住宅が加入する場合、初期費用としてアンテナ(直径14センチ程度)の工事費を含め3万5000円程度、月額利用料は4980円としている。

大京の柴田常務は「今はマンションの転換期。家が足りないと言う時代ではなく、マンション購入の目的も“一戸建てを建てるまで”ということではなくなった。マンションとして、集合住宅であるというメリットを生かしたい。それにはネットワークへの対応が有効な手段」と、これからのマンションのあり方を考えた事業であることを強調した。FNJの対象とする市場は、大京グループ28万世帯、他社のマンション320万世帯、周辺住宅とオフィス1000万世帯と、約1350万世帯と巨大だ。インフラサービス自体は全国に展開するが、従来の電話インフラを中心としたISPと異なり、マンションというわかりやすい建物が文字通りの中心となる。半径400mという比較的狭いエリアに絞られることで、その地域の焦点などと密着したコンテンツやサービスの展開ということも考えられる。

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