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サン、UltraSPARC III搭載の新世代ワークステーション発表

2000年10月10日 17時14分更新

文● 編集部 佐々木千之

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サン・マイクロシステムズ(株)は10日、9月末に米国で発表した新64bitプロセッサー『UltraSPARC III』を搭載したワークステーション『Sun Blade 1000』を発表した。UltraSPARC III-750MHzを搭載したモデルと、同-900MHzを搭載したモデルがあり、750MHzモデルは11月下旬、900MHzモデルは2001年代1四半期に出荷予定となっている。

UltraSPARC III

UltraSPARC IIIは、同社の64bitプロセッサーの3世代目(※1)にあたる。2900万個のトランジスターが集積されており、0.18μmプロセス、6層のアルミ配線技術により製造される。'97年の10月に発表され、当初'98年夏にサンプル出荷が開始されるとアナウンスされていたが、実際の製品リリースが大幅に送れていた。最初に用意される製品のクロックは600/750/900MHzで、今後銅配線技術などの採用により2001年末に1.5GHzまでクロックが向上するとしている。チップ上に1次キャッシュ96KB(データキャッシュ64KB、命令キャッシュ32KB)を搭載する。2次キャッシュは外付けとなる。UltraSPARC IIIではチップ上にメモリーコントローラーを搭載しており、メモリーとプロセッサー間は帯域が毎秒2.4GBの専用バスで接続する。また、“Uptime Bus”と呼ばれる技術を採用。メモリーのエラー訂正をメインメモリーから分離した形で行ない、これによりエラー検出と訂正をより高速かつ確実にしたとしている。

※1 サンはUltraSPARCシリーズに置いて、奇数世代で新アーキテクチャーを採用し、偶数世代ではそのアーキテクチャーを踏襲しつつ新しい製造プロセスによってクロックアップを図る、という方針をとっている。そのためUltraSPARC IIIはアーキテクチャーとしては2世代目となる。

『UltraSPARC III』ダイの面積などは明らかにされていない
UltraSPARCファミリーのロードマップ

Sun Blade 1000

Sun Blade 1000はUltraSPARC III-750MHzまたは900MHzを最大2基まで搭載可能なワークステーション。UltraSPARC IIを搭載する従来機『Sun Ultra』シリーズと比較して、2倍のシステム性能となったという。プロセッサーが高速化されただけでなく、プロセッサー、メモリー、I/O、グラフィックス間のデータ転送方式として、Sun Ultraが採用している“UPA”(Ultra Port Architechture)の約2.5倍にあたる毎秒4.8GBのピークデータ転送能力を持つ“Sun Fireplane”を採用した。Fireplaneのシステムクロックは150MHz。なお、Blade 1000では、動作周波数の異なるプロセッサーを混在可能で、ユーザーのアップグレードを容易にするとしている。

『Sun Blade 1000』動作中は前面のSunロゴが白く光る
Sun Blade 1000のアーキテクチャー

2次キャッシュメモリーは8MB(プロセッサーあたり)、メインメモリーにはECC対応SDRAMを採用し、最大で8GBまで搭載可能。内蔵HDDインターフェースとしては、毎秒100MBのFC-AL(Fibre Channel Arbitrated Loop)を採用、最大で36.4GBのHDDを2台内蔵できる。インターフェースとしては100BASE-TX、Ultra SCSI、IEEE1394×2、USB×4、FC-ALを持つ。また前面にスマートカードスロットも備えている。キーボードやマウスはUSB接続で、これは同社のワークステーションとしては初めての採用となる。

グラフィックカードは、当初は現在のSun Ultraと同じ、『Creator3D Series3』『Elite3D-m6 Series2』が用意されるが、2001年の早い時期に“MAJC(マジック)”(※2)をトランスフォームエンジンとして搭載したグラフィックカードを提供するとしている。このMAJC搭載カードは、次世代のミッドレンジクラス向けカードで、「現行ハイエンド機種の6倍から8倍高速なグラフィックスのブレークスルー製品」(同社製品事業統轄本部インターネットシステム事業部ワークステーション部の野瀬昭良部長)としている。

※2 Microprocessor Architecture for Java Computing。'99年秋に発表されたJavaコードをネイティブで実行可能な、いわゆるJavaチップ。

価格は、UltraSPARC III-750MHz、512MBメモリー、18GBのFC-AL HDD、Elite3d-m6グラフィックスカードという構成の『Sun Blade 1000 Model 1750』が129万1000円となっている。同社では発売開始後の1年間に1万台の販売を見込んでいるという。

Blade 1000の内部。巨大なファン2基が目を引く。中央に見える青いプラスチック部分がUltraSPARC IIIモジュール
Blade 1000に搭載されているプロセッサーモジュール。黒いヒートシンクの下にあるのがUltraSPARC III
Blade 1000の後ろ姿。Blade 1000のファンは巨大だが、いったん起動した後はSun Ultraと比べて非常に静かになったという

発表会で挨拶した同社の菅原敏明代表取締役社長は、「サンは'85年に“Open Systems”、'90年に“The Network Is the Computer”、'95年に“Dot-Com the World”という標語を掲げてきた。2000年の今年にはDot-Com the Worldの第2段階ということで“The Net Effect”を掲げている。The Net Effectのコアとなる要件は、大規模なスケーラビリティー、継続的可用性、リアルタイム・レスポンスの3つ。今回のUltraSPARC IIIとBlade 1000はNet Effectのためのアーキテクチャーコンポーネントだ」と位置づけた。

菅原社長

また同じく挨拶した細井洋一取締役兼製品事業統括本部長は、日本IBM社のeServerや、日本ヒューレット・パッカード社のSuperdomeを引き合いに出し、将来のロードマップにプロセッサーやOSアーキテクチャーの変更が含まれている点を指摘「アーキテクチャーの変更にはかならず膨大な手間とコストがかかる。その点サンは従来からずっと完全なバイナリー互換を保証している。しかもただ動くだけでなく高速に動く」と、SPARCプロセッサーとSolarisというシングルアーキテクチャーの優位性をアピールした。また、現行のUltraSPARC II製品についても「非常にお客様からの要望が強く、今後もUltraSPARC IIへの投資は継続する」と、UltraSPARC IIIへの移行を急がず、UltraSPARC II搭載製品も継続して販売していくことを明らかにした。また、今後6~9ヵ月の間に、UltraSPARC III搭載のサーバー製品も「続々と発表する」としている。

なお、サン製品のユーザーが新製品を購入後、指定の既存製品を60日以内にサンへ返却するという条件で、ディスカウント価格で提供するという“Sun Upgrade Allowance Program(Sun UAP)”を開始したと発表しており、今後新製品の発表と共にさまざまなアップグレードパスを用意、拡充していくとしている。サンはこれまでこうしたアップグレードパス(優待販売)を用意していなかった。各社がハードウェアと共にさまざまなサービスを展開しており、Sun UAPはこれらに対抗し、かつ既存ユーザーを囲い込む目算と見られる。

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