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【第2回デジタルフロンティア京都Vol.4】フィンランドのモバイル事情は? 現地からの報告

2000年09月29日 22時40分更新

文● 野々下裕子

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9月26日、27日の2日間、キャンパスプラザ京都にて第2回デジタルフロンティア京都が開催された。初日のプログラムでは、ワイヤレスで注目を集める北欧からゲストを招き、“ワイヤレスインターネットの未来-フィンランドからの報告”というタイトルで現地の報告が行なわれた。

文化と気質で類似点がある日本とフィンランド

講師役のサム・インキネン氏は、ラップランド大学とヴァーサ大学研究員であるかたわら、スウオメン・インフォピステ・オイ社が運営する情報ポータルサイト“アクティヴィスト(現在名はヘルシンキ・ネット)”のディレクターを務め、メディアおよびコミュニケーションの研究者として幅広く活躍している。

インキネン氏。メディアおよびコミュニケーションの研究者として幅広く活躍

フィンランドは“ヨーロッパにおける日本”と称され、文化面や気質などでさまざまな類似点があるそうだ。小さいながらもハイテクが進み、研究機関が多くあるため、“ヨーロッパの未来の研究所”と呼ばれている。企業ではノキアが有名で、LinuxやIRCの発祥地でもある。

小さいながらも十分なインフラとコンテンツが手に入るフィンランドは、インターネットの利用率はヨーロッパのトップ。携帯電話人口は400万人で、率で見るとアメリカよりも高い。そうした情報への高い関心度を背景にして進められている“eヨーロッパ”プロジェクトでは、モバイルコミュニケーション、デジタルTV、テレコムマーケットの3つをキーポイントに、さらなる経済発展を目指している。

フィンランドは欧州内におけるインターネットの利用率ではトップクラスを誇る。アメリカやカナダも追い抜く勢いだ

次世代のモバイル技術“G3”――極寒出使えるシステムも

「中でも注目されているのはモバイルコミュニケーションで、“3G”と呼ばれる、さらに次の世代のモバイル技術に着目している。高速で低価格でどこでも使えるインフラは、フィンランドだけでなく、ヨーロッパ全体を市場視野に入れたものとなるだろう」

モバイル機器と並んで、ウェアラブルコンピューターの開発が盛んである

フィンランドでは、“サイベリア”というウェアラブルコンピューターに関するプロジェクトも進められている。『ザ・スーツ』と名付けられた製品が'99年から開発され、極寒の環境でも動くシステムが研究されている。

サイベリアは-50度の気温下でも動く最強のウェアラブルコンピューターだ
サイベリアで開発中の端末のひとつ、『ヨーヨーユーアイ』は指でなく腕全体で操作する

「北欧では気候が厳しいので、ザ・スーツの実験は-50度以下の気温の中で行なわれている。"ウェアラブル・テック”という実験では、指がすぐにかじかむので、腕を左右に動かすといった方法で使える端末の開発なども行なっている。こうした過酷な状況での実験が、結果的にユーザーフレンドリーで、マルチモータルなシステム開発の近道となるだろう。国内の企業側の理解も得られていて、情報通信関連企業以外にも、テキスタイル会社なども参画するようになってきた」

企業の関心の高さは、今後もフィンランドの技術力を高く押し上げていきそうだ。

ワイヤレス技術を使ったネットワークの3D化も

大学研究者としてのインキネン氏は、コンテンツとインターフェース、経験とユーザービリティーをキーワードに、クリエーティブな研究課題を進めている。その成果物は、ハノーバーエキスポや、アトラクションの中で採用されてきた。最近の研究としてはワイヤレス技術を使った、ネットワークの3D化があり、学生達と一緒に3D(G)UIという名称で、ユニークなインターフェースを提案している。デジタル・ディメンションというこの研究内容は、スコット・フィッシャー氏が提案している、VR(バーチャルリアリティー)とも似ている。

「たとえば、小さな端末を身に付けるだけで、どこにいてもネットにアクセスできるようにする。自然なインターフェースで、それぞれカスタマイズもできるし、生活の中では違和感なく使えるようになっている。ただし、使っている人以外からは情報は見えないので、何もない空中に向かってじたばたしてるように見えるかもしれない(笑)」

実際にどのような製品になるのかについては、学生が作ったプロモーションビデオ作品で紹介してくれた。ストーリーはデジタルディメンションが一般化している世界という設定で、女たらし(?)の主人公がその技術を使って二股をかけるというもの。結果、相手の女性のひとりに情報を見られて、どちらにもふられるというものだが、この作品にノキアが15万ドルもの資金援助をしているというのだから面白い。

ノキアの援助を受けて、大学生が作ったデジタルディメンションのプロモーションビデオ。ラブコメディーのようなノリで、とても日本では考えられない内容だ
ガールフレンドが主人公の情報端末を身に付けると、他の女性の情報が飛び込んできて、浮気されていることがばれてしまう

「インターネットは経済と同時にビジネスの考え方を変化させてきた。今後、フィンランドはヨーロッパ内において、グローカルな市場を形成するべく、さらなる躍進を続けるだろう」

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