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【アルス・エレクトロニカ・フェスティバル2000 Vol.7】メディアアートの今が一堂に“サイバーアート2000”(番外編)

2000年09月29日 21時49分更新

文● 岡田智博 coolstates.com

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メディア・アート・コンテストの最高峰であるプリ・アルス・エレクトロニカを目指し、世界中から選りすぐりの作品が一堂に会したメディアアート展“サイバーアート”。そこでは先にあげた作品(下記【Vol.2】のURL参照)のみならず、様々な魅力的な作品が展示された。本稿ではその中で特に目にとまったものを紹介する。

企画展のためだけに建てられているギャラリービル“OKセンター”。リンツの中心部にあるOKセンターの地下にはカフェ、そしてその奥にはアーティストのためのゲストルームが設置されている。また、1階にはヨーロッパ中の現代芸術を紹介するカタログが並ぶ資料室があり、屋上にはパーティーを開けるガラス張りのラウンジも。いたせりつくせりの舞台だ。

お出迎えはIAMASの卒業制作作品『私ちゃん~着てみよう~』

その玄関を入るとまず目につくのが、風船をいたるところにくくり付けてあるマネキンの姿。その風船はマッキントッシュによってコントロールされ、膨らんだり萎んだりと脈打ちだっている。

これはインタラクティブ部門で入選した『私ちゃん~着てみよう~』。上山朋子氏のIAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)での卒業制作作品だ。本誌でも今年のIAMAS卒業制作展の紹介で取り上げた作品が出迎えてくれる。

その横から「アチョー」と叫び声がこだまする。叫び声のもとは何台か並んだPC。ただのシューティングゲームが展示物か? と思えば、個性ある実写キャラクターによるシューティングゲームだった。

近所の子供に、おばあちゃん、ダンボール箱男に、変なおじさん……キャラクターを選んでバトルを開始する。これはフランスのジュリアン・アルマ氏とローラント・ハート氏の作品『ボーダーランド』だ。

ボーダーランド。親近感のあるキャラクターとコミカルな動きは、“TVゲーム的リアル”な暴力描写を揶揄しているような感じをうける

キッチンから聞こえる奇妙な音の正体は?

次の部屋からは「カタカタ」と響く金属音とモーター音が聞こえてきた。音に促されるままに部屋に入ると、雑然としたキッチンが目に入る。天井からは無数のパンが吊してある。

「なんじゃこれは??」と当惑していると、足許からモーター音が聞こえはじめた。オーブンが蓋をパタパタされながらじゃれてきた。キッチンを見渡してみると、床じゅうにトースターや、攪拌機など、台所の小道具たちがあたかもペットのように愛嬌を振りまきながら走りまわっているのだ。このペットたちこそが作品『自由なレンジ・ライトディルソース添え』(Free Range Appliances in a Light Dill Sauce)。

“ペット”を放し飼いにしているキッチン

「懐中電灯をあててみない?」

米西海岸のヲタク・カルチャー・マガジン『ジャイアント・ロボット』のTシャツを羽織った女の子がにこにこしながら促す。彼女が作者のラニーア・ホー氏、ニューヨーク大学大学院インタラクティブメディア専攻を出たばかりのアーティストだ。

ラニーア・ホー氏(左)と妹さん

「メディアアートじゃ食えないから、Webデザインで食べているよ」と話す彼女から、懐中電灯をもらい、かわいいオーブンに光をあてると、寄ってきてちょこちょこ振舞い始めた。攪拌機に当てると逃げてゆく。光に反応してあやされるペットたちなのだ。

ユニークなポット型の“ペット”

応用自律研究所のスローガン・ペインティング・ロボットも

その隣の部屋では、アクティビストのためにロボットたちを開発しつづける応用自律研究所(下記【Vol.5】のURL参照)の成果報告とプロモーションビデオが公開されていた。そしてスローガン・ペインティング・ロボット『グラフィティー・ライター』が誇らしげに展示されている。他にも様々な展示やプロジェクト報告がOKセンターで展開されていた。

グラフィティー・ライターの成果報告展示

OKセンター内では、他にもエレクトロニックシアターがある。屋上の見晴らしのいいラウンジではコンピューターミュージック部門の全入選作品をヘッドホンで聞けるになっていた。

プリ・アルス・エレクトロニカ映像部門の入選作品を紹介しているエレクトロニックシアター

筆者の手によるヨーロッパのパブリックなサイバースペースとメディアアートに関するレポートがここでも読めます

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