(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下NTTドコモ)と米America Online社(以下AOL)は27日、都内で記者発表会を開き、インターネット事業における両社の提携を発表した。NTTドコモとAOLは共同で、NTTドコモの携帯電話端末“iモード”と、AOLとISP(Internet Service Provider)契約を結んだパソコンでメールデータなどのリンクをおこなう技術“FMC”(Fixed Mobile Convergence)を開発し、同技術を用いたサービスを提供する。またNTTドコモは、AOLの関連会社である、ISP企業のエーオーエル・ジャパン(株)(以下AOLJ)株の42.3%を取得し、AOLJの筆頭株主として経営に参画することもあわせて発表した。
発表会では、NTTドコモの立川敬二代表取締役社長が、提携の具体的な内容について説明した。
立川敬二代表取締役社長 |
“FMC”で結ばれた両社
FMCは、iモードからのインターネット接続“移動通信網”と、AOLJとISP契約を結んだパソコンからのインターネット接続“固定通信網”を、シームレスに統合する技術。同氏は「いつでも、どこでも、どのような方法でも、インターネットに接続できる」と、FMCの利点を強調した。たとえば、メールの添付ファイルは現在、iモード端末では開けない。しかしFMCを利用すると、メールはそのままiモード端末に、そして添付ファイルは自動的にAOLJのメールアドレスへ転送できるようになるという。また、オークションなどにおいては、iモード端末と、オフィス/自宅のパソコンで、逐一値段の変動を確認できるともしている。FMCは、iモードのサーバーと、AOLJのサーバーをリンクさせて、以上のようなサービスをおこなう技術であるため、「iモード端末は、従来のものをそのまま利用できる」とした。契約の完了、ならびにサービスの開始は12月を予定している。
両社では、まず日本国内でFMCを用いたサービスを展開する。そして、その成果をもって、NTTドコモやAOLのブランド力を武器に、FMCを用いたサービスを展開する予定だ。「同時に、NTTドコモの推進する次世代携帯電話の通信方式“W-CDMA”(Wideband Code Division Multiple Access)の普及に繋げたい」と、立川氏は抱負を語った。「将来的には、W-CDMAを採用したiモードを、アメリカでも見られるようにしたい」という。
FMCを開発するのは、NTTドコモとAOLが共同で設立する“戦略運営委員会”(Strategic Planning & Operations Committie:SPOC)。同委員会は、FMCの開発や、FMCを用いたサービスの検討をおこなうほか、日本国内展開の様子を見ながら、海外での事業展開についても検討するという。
なお両社では、共同で、FMCを利用したサービスなどを構築できる技術やソフトを持ったベンチャー企業に投資するビジネスも開始するとした。
iモードを武器に巻き返しをはかるAOLJ
提携とあわせて、NTTドコモはAOLJの株式42.3%を、約103億円で取得する。契約日は27日で、11月中旬に株式取得終了の予定。NTTドコモ参画前と後では、各企業の出資比率は以下のように変動する。
出資企業 | 参画前 | 参画後 |
---|---|---|
NTTドコモ | 0% | 42.3% |
AOL | 50% | 40.3% |
三井物産(株) | 38% | 13.224% |
(株)日本経済新聞社 | 12% | 4.176% |
NTTドコモとAOLの提携、そしてAOLJに対するNTTドコモの参画発表に集まった、三井物産代表取締役副社長の島田精一氏(左)と、AOL Presidentのマイケル・リントン氏(Micheal Lynton) |
株式取得後、AOLJは総額約110億円の増資を予定しており、その場合、NTTドコモの追加出資は最大約57億円になる見込みだ。
AOLJは、FMCサービスの一環として、同社のチャットソフト『AOLインスタントメッセンジャー』、ならびに、無料電子メールアカウント提供サービス“AOLアカウントの無料電子メールサービス”の、それぞれiモード版を開発し、提供する予定。一方NTTドコモは、AOLJを同社の優先ISPとして、iモードユーザーにAOLへの加入を促していくという。なお、NTTドコモはAOLJの競合であるISP企業(株)ドリームネットに出資しているが、これについて立川氏は「NTTドコモはドリームネットの筆頭株主ではなく、関わり方が違う」とした。「ドリームネットなどのいわゆるISPとは違った、iモードとリンクしたISPとしてAOLJを市場にアピールしていく」という。売り上げ目標などについては「契約が終わっていない段階で具体的な数字を出すことはできない」としている。
また、NTTドコモは、ネットワーク事業者として、今後はISP以外の企業との提携を示唆。同社の提唱する、iモードを利用した、モバイル端末によるマルチメディア利用形態“モバイルマルチメディア”展開の可能性は「ISPだけではない。銀行や、コンテンツプロバイダーとのJV(Joint Venture)も視野に入れている」(立川氏)という。AOLが米タイムワーナー社(Time Warner)を買収しようとしている件については、買収となれば、コンテンツプロバイダーとしてのAOLグループと新たな提携をおこなう可能性があるとした。