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高岳製作所とNAIS-ISが、ICカードスロット搭載のシンクライアント発表

2000年09月27日 22時43分更新

文● 編集部 佐々木千之

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(株)高岳製作所と松下電工インフォメーションシステムズ(株)(略称:NAIS-IS)は27日、両社が共同開発した、ICカードスロットを搭載するシンクライアント(※1)の新製品『agileIC WBT(アジャイルアイシー ダブリュビーティー)』(NAIS-ISでの呼称は『DeskWave ICカードWBT』)を発表した。10月中に出荷予定で、価格は13万6000円。

※1 クライアント・サーバーシステムにおいて、起動に必要なだけの最小限のメモリーと画面描画機能、キーボードとマウスなどの入力装置だけを備えたクライアント端末。データの保存はもちろん、アプリケーションの動作もサーバー側で行ない、基本的に画面イメージだけがクライアント側に送られてくる仕組み。パソコンなどと比べて非力なプロセッサーや少ないメモリーで十分動作することと、サーバー側で集中管理が行なえることが特徴。

『agileIC WBT』

高岳製作所はこれまで、“MiNT-ACC(Agile Client Computer)シリーズ”として、UNIXシステムに接続するX Window端末『agile X』やWindows 2000 Serverに接続するWBT(※2)端末『agile WBT』などを販売している。今回発表されたagileIC WBTは、agile WBTをベースとして、セキュリティー機能のためにICカードスロットを搭載したという製品。ICカードを使ったWBTのセキュリティー機能について特許を持つ「松下電工インフォメーションシステムズ側から製品企画を持ちかけ、共同開発となった」(NAIS-IS、シンクライアントシステムグループの伊藤猛部長)という。

※2 WBT(Windows-Based Terminal)は、マイクロソフトが開発したシンクライアントシステムのクライアント。サーバー側のOSにはWindows NT 4.0 Terminal Server Editionまたは、Windows 2000 Serverを利用する。WBT側のOSはWindows CEで、起動後はサーバーとTCP/IP上のWBT専用プロトコル“RDP”によって通信を行なう。通信に必要な帯域は4~6kbpsという。似たような構成のシステムとしてNC(Network Computer)があるが、ほとんどのNCはJavaベースで、サーバーからJavaアプレットを端末にダウンロードし、端末側でアプリケーションが実行されるという点が異なるとしている。

NAIS-ISの濱田正博代表取締役社長

今までのシンクライアントに対し、ICカードを導入したメリットとしては、個人認証とサービス接続情報のセキュリティー強化があげられるとしている。ICカードにはサーバーにログインするためのID/パスワード、さらにそこで利用するアプリケーションやサービスのID/パスワードが暗号化されて格納されている。これにより、ユーザーは自分のICカードをスロットに差し込んで、ICカードの暗証番号を入力すれば、サーバーやアプリケーションなどのパスワードは一切入力する必要がないとしている。システム上にあるどのクライアントを使っても、そのICカードユーザーのデスクトップが、前回作業終了したときの状態で復帰する。終了の際はICカードを引き抜くだけでよく、抜かれた時点でクライアントのキーボードやマウスはロックされ、RAMにあるユーザー関連の情報も消去される仕組み。

agileIC WBT/DeskWave ICカードWBTの主な仕様は以下の通り

CPU National Semiconductor Geode SC2200-266MHz
メインメモリー 32MB SDRAM
ROM ブート用フラッシュメモリー2MB、システムROM8MBまたは16MB
LAN 10/100BASE-TX Ethernet
インターフェース PS/2×2、USB×2、パラレル/シリアル兼用
ディスプレー出力 640×480、600×800、1024×768、1280×1024(256色カラー、WBTの制限による)
サイズ 幅35.5×奥行き170.5×高さ202.5mm
重さ 1kg
ICカード 仏Gemplus社製、CPU内蔵タイプ(RAM8KB)。内部データは(株)ローレルインテリジェントシステムズの暗号システムにより暗号化
高岳製作所の鈴木一弘常務取締役

発表会ではシステムインテグレーションサービスを提供する企業の技術者なども出席し、「日本ではこれまでのトータルでも5万台に満たない」(高岳製作所の鈴木常務)と普及が進まないシンクライアントの普及を図るべく、導入事例などが紹介された。導入例ではインターネットカフェでの例が示され、サーバー側で集中管理を行なうことでインターネットカフェ側に技術者を常駐させる必要がなく、TCOを大きく削減したことが示された。

また、高岳製作所では百数十台、NAIS-ISでは1000台が社内システムとして稼働していることも示された。このうちNAIS-ISでは、Xeon-600MHzを2基、メモリーを2GB搭載したサーバー1台につき60クライアントを割り当て、ロータスノーツ、ネットスケープナビゲーター、ワード、エクセル、パワーポイントなどを利用させているという。実際の操作感については、「誰かがワードを起動していれば、次にワードを起動するユーザーは(ワードがメモリー上にロードされているため)一瞬で起動する」という。発表会ではオフィスアプリケーションを起動してさまざまな操作を行なうデモが、ノートパソコンをサーバーとして実施された。全画面を書き換えるような場合に少しもたつく感じだったが、通常の事務作業においては必要十分なパフォーマンスに思われた。

今後、ICカードによる簡単なログイン操作と強力なセキュリティー機能、集中管理によるTCOの削減などをポイントに、官公庁や教育機関などに向けて販売を行なっていくという。従来企業のコンピューター導入ではパソコンが中心となってきたが、それを扱うユーザーがかならずしもパソコンに詳しくないことや、OSのバージョンが多岐に渡ることから生じるトラブルの増大がシステム管理上の問題となっている。今回のような製品がすべてのユーザーに対して最適というわけではないが、経理や管理などの一般の事務を行なう部門では有効なシステムとなると思われる。

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