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【IDF-J 2000 Fall レポート Vol.4】次世代携帯電話向けオープンアーキテクチャーを発表

2000年09月20日 23時28分更新

文● 編集部 佐々木千之

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開催中のIDF 2000 Fall Japanにおいて20日、米インテル社のロナルド・スミス(Ronald Smith)副社長兼ワイヤレス・コミュニケーションズ&コンピューティング事業本部長が、“ワイヤレス・インターネットのさらなる発展に向けて”と題した基調講演を行なった。

米インテル社、副社長兼ワイヤレス・コミュニケーションズ&コンピューティング事業本部長のロナルド・J・スミス氏

スミス氏の講演は、今後大きな発展が期待されるワイヤレス・インターネット環境、なかでも次世代携帯電話に対するインテルの取り組みを述べたものだったが、この中で、次世代携帯電話システム開発のためのオープンなアーキテクチャー“インテル パーソナル・インターネット・クライアント・アーキテクチャ(インテルPCA)”を発表した。

インテルPCAでは、ワイヤレス機器における通信処理部とコンピューティング処理(アプリケーション処理)部を独立させ、両処理部間のオープンなインターフェースを定義し、そのハードウェアやソフトウェアを、各処理部で独立して開発できるようにしたことがポイント。これにより、地域によって異なるさまざまな通信方式への対応と、搭載アプリケーションの開発作業が、独立・平行して行なえる。結果として、ワイヤレス機器の開発がスピードアップされると共に、複数の機器間でのアプリケーションの相互利用が可能となるほか、サードパーティーの開発活動を促進するという。

インテルPCAの概要を示したホワイトペーパーは、インテルPCAウェブサイトから入手可能で、詳しい技術的な仕様は2000年の第4四半期中に明らかにするとしている。

さらに講演の中でスミス氏は、インテルPCAのハードウェア部分向けに同社が提供するプロセッサーとして、『StrongARM』(※1)と“インテルXScale(エックスケール)マイクロアーキテクチャー”(※2)に基づく将来のプロセッサーを紹介した。XScaleマイクロアーキテクチャーには、インテルがパソコン用プロセッサーで培った、高速化技術やマルチメディア処理技術が投入されたという。

※1 StrongARMは英アーム社が開発したRISCプロセッサー『ARM』を基に、米ディジタル・イクイップメント社(DEC、現米コンパックコンピュータ社)が拡張したもので、'98年5月にDECの半導体事業部をインテルが買収した際にインテルのものとなった。

※2 XScaleマイクロアーキテクチャーは、このStrongARMのアーキテクチャーをさらに発展させたもの。8月に米国で行なわれたIDF 2000 Fallで発表されたが、XScaleマイクロアーキテクチャーに基づくプロセッサー製品は未発表。またそのプロセッサーの名称も明らかにされていない。

基調講演中に行なわれた、携帯電話向けのマルチメディアアプリケーションのデモ。エミュレートされた携帯電話の画面上で、ビデオ画像が再生されている。(株)サイバードが開発中のもの

XScaleマイクロアーキテクチャーに基づくプロセッサーを使い、コア電圧をさまざまな値に変えつつ、パフォーマンスと消費電力がどのように変化するかというデモを行なった。

XScaleマイクロアーキテクチャーに基づくプロセッサーのテストシステム。ボールペンで指し示めされているのがそのプロセッサー。冷却用のファンは不要という
段階的にコア電圧を上げていき、クロックが1GHzに達したところ。1番左のメーターがクロック、順にコア電圧、コアの消費電力、MIPS値を示している。
上とは逆にコア電圧を限界の0.7Vにまで下げたところ。クロックは200MHzで、消費電力は50mWまで下がっている。
XScaleマイクロアーキテクチャーを使ったプロセッサーと、従来のStrongARMとの消費電力の比較グラフ

XScaleマイクロアーキテクチャーは、携帯電話やPDA向けプロセッサーとしてだけではなく、将来は、RAIDコントローラーやルーター、スイッチといった製品にも応用していくとしている。

加えてインテルインテグレイテッド・パフォーマンス・プリミティブ(インテルIPP)と呼ばれる、インテルプロセッサー(IA64、IA32、StrongARM、XScale)向けにマルチメディアアプリケーションに必要な基本的なコードをライブラリーとして提供することや、英シンビアン社のワイヤレス機器向けOS“EPOC”をXScaleマイクロアーキテクチャーに移植中であることも発表された。

このほか、従来のフラッシュメモリーに比べ、同じセル数で2倍の容量の『StrataFlash』がソニー(株)と三菱電機(株)のインターネット対応携帯電話向けに採用されたことや、StrongARM(XScaleマイクロアーキテクチャーベースのものではない)が、日本電気(株)の次世代のマルチメディア対応携帯電話に採用されたことが明らかにされた。

パソコン関連では、8月の米IDFと比べて特に目新しいことがなかったIDF-Jだが、こと携帯電話関連に限っては新発表が相次いだ。これは、パソコン市場を制覇したインテルが、次なる目標としてワイヤレス機器市場を選び、この分野で技術的にもサービスでも世界をリードする日本市場でまず主導権を握り、第3世代(3G)と呼ばれる次世代携帯電話市場で、一気にシェアをうち立てようという動きに他ならない。

様子見をしていたわけでもないだろうが、インテルのワイヤレス機器市場への積極的な動きがはっきりと見えてきたのは'99年の冬になってから。11月にはワイヤレス携帯電話の通信規格に必要なベースバンドチップセット技術やワイヤレスのVoIP技術を持つ米DSP Communications社を買収。同じく11月にスウェーデンにワイヤレス通信機器を製造する企業とのパートナーシップの構築と技術開発を目指す目的で“ワイヤレス・コンピタンス・センタ(WCC)を開設している。このWCCはその後つくば市(2000年2月)と北京(2000年4月)にも開設された。12月には米本社にワイヤレス・コミュニケーションズ&コンピューティング事業本部(WCCG)を設立している。日本でも5月に三菱電機と次世代(第3世代、3G)携帯電話向けチップセットの共同開発を発表するなど、それまでの遅れを取り戻そうとするかのように、矢継ぎ早に手をうってきている。

インテルPCAというオープンアーキテクチャーを持ち出して来たことは、現在この携帯電話の組み込みプロセッサーその他のチップを提供し、世界的に大きなシェアを持つ、米テキサス・インスツルメンツ社に対する挑戦状と受け取ることもできるかもしれない。

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