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ネット革命の勝利者が語る成功のツボ“ベンチャー2000 KANSAI”(その4)

2000年09月07日 20時02分更新

文● 服部貴美子 kimiko@oct.zaq.ne.jp

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“ベンチャー2000 KANSAI”のシンポジウムでは、「起業を軽視する風土を改めねばベンチャーの育成は難しい」といった意見が相次いだが、実際に、成功を手にしたベンチャーたちは、関西のネットビジネスの可能性についてどのように考えているのだろうか?

2日間の最後を締めくくるシンポジウムのテーマは“IT・ネット革命はビックチャンス”。日本でのネットビジネスで成功を収めた4名の経営者たちが、その秘訣とこれからの起業家たちへのメッセージを残してくれた。

ネット革命の勝利者たちが語る“成功のツボ”

デルコンピュータは、それまで当たり前と思われていたソフトウェアのプレインストールを見直し、買い手の好みにハードウェアをカスタマイズするという販売方法で、業績を伸ばしてきた。さらに、ネットによる効率アップ&低コスト化、バーチャルインテグレーションによる仮想統合という三大原則で日本進出に成功した企業である。会長の吹野博志氏は「新しい時代の競合優位は、有形資産からでなく、知識やパテントといった知的資産から生まれる」と述べた。

デルコンピュータの吹野博志氏。海外経験の豊富な吹野氏から見ると、「アントレプレナーに不可欠な好奇心やカルチャーが、米国に比べて日本には少ない」という

増田宗昭社長率いるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、リアル店舗でも成功を収めた“マルチパッケージストア”である。レンタルビデオから始まり、いまでは本屋としても国内第3位、CD部門でも新星堂と1位を争う勢いで、「来年の1月には、会員数が九州地方の人口にも匹敵する、約1500万人に伸びる予定だ」(増田氏)。

「枚方出身なので、大阪弁でいきます」と宣言して事業説明を始めた増田氏。TSUTAYAを単なるレンタルビデオ店ではなく、複合型のショップにまで成長させた

CCCは、リアル店舗で実施したアンケートをもとに、メールを使ったサービス提供を実施。売り上げ規模は'90年で、実店舗:バーチャルショップ=100:0.3だったものが、2000年には110.6:3.8に。レンタルレコード(CD)業務によって顧客属性のデータベースをもつことができたからこそ、ダウンロードサービスへと展開することができたのだろう。

証券業界で“エイリアン”とも呼ばれる松井証券の松井道夫社長は、「約18万人いた証券マンが、半分以下の8万人にまで減少。まさに、天地がひっくり返るほどの革命だ」と、この10年の業界の変化について述べた。松井証券は株式のインターネット取引においては、約4分の1ものシェア(売買代金ベース)を握り、もちろんトップ。しかし、「日本の株式市場に占めるネット取引は1割程度。本当の変化はこれから……」と、さらに大きな変革が起こりうることを示唆した。

おりしも講演中に、東証の8月売買実績で、野村・大和・日興についで、松井証券がNo.4になったとの速報が飛び込んできた。松井氏は「何をエラそうに……と言われることもあるが、数字が証明している」と語り、論調を緩めることはなかった

「天地がひっくり返るということは、上に近いところにいた企業が地に近いところまで落ちるということだが、地に近い企業のすべてが、天の近くにいけるということではない。すべては、ビジネスモデルを根本的に変えることができるどうかだ」と述べ、自社が手数料を10分の1に下げることによって、供給者ではなく、買い手主導のビジネスへと転換できたことに自信たっぷりの様子である。

新しいビジネスモデルを作ったのは、リー・ロイド氏率いるリンクメディアも同じだ。DaiJob.com(だいじょうぶ・どっとこむ)という転職支援サイトは、技術者関連の情報提供からスタートしたが、「美容師やタクシー運転手などに向けたメニューも増やす予定」というほどコンテンツを充実させてきており、ロイド氏は「3年以内にNo.1を目指す」、「インドの技術者を日本に呼びたい」と意欲的である。

DaiJob.comのテリー・ロイド氏。DaiJob.comのベースになっているのがJ@panIncというコンテンツ。日本の大手企業が政府と癒着していることを皮肉りつつ、「aを@へと置きかえることで変化を表現した」という

顧客ニーズを満たせないビジネスモデルでは、生き残れない

これらのビジネスモデルの意味は、単に店をオンラインへと移動して、無店舗経営によってコストを削減したというムーブメントには留まらない。「消費者のセグメントに合ったサービス提供」(吹野氏)、「大手に対抗するための顧客サービスの向上が、手数料の引き下げだった」(松井氏)など、顧客本位の姿勢が根幹に据えられている。

こうした成功事例を生み出すためには「大企業という背の高い木がなくなったとしても、肥料や水がなければ、根元に生えている草のような中小企業が育っていくことはできない。たとえば、税制を変えるなど、政府の意識も変えねばだめ」(ロイド氏)と指摘。吹野氏も、「マーケットにおける順位が何年間も変化しないような、緊張感のない状態の中で、企業が受け身になっている。たとえば、関西の企業なら、東京なんか放っておいて、海外に働きかけるくらいの志がないとだめだ」と述べた。

増田氏は「海外の商習慣や交渉法を身につける努力も必要」と語り、さらに松井氏が「大阪は、本来得意とする商いでマーケット作りをしていくべきでは? インターネットビジネスには、“使わないと損をする”という実利の部分がまだまだ欠けている」と提案すると、吹野氏が「権力にがんじがらめになっている東京に比べ、大阪はいろいろなことにチャレンジできそう」と、関西への期待を語った。

もちろん、「情報量と人脈は首都圏に集中している」(増田氏)ということも否定できないが、グローバルスタンダードがあり、豊富な人材(大学)があり、ポテンシャルもコンテンツもある関西について、テリー氏は「大阪に資金を集めればいい。国内の企業を呼び寄せるより、海外から連れてきた方が早いんでは? あるいは、スピンアウトで大企業が会社を作るのもいいだろう」と提言。

大阪にIT革命が起こるには、何が必要かとの命題に対して、松井氏は「Free=自由が、感性を磨く。パソコンにとって代わられると考えるのではなく、代替できることはパソコンに任せて、人は文化をみることに集中すべき」と答えた。また、増田氏は「あとは、インフラと情報の問題だけで、踏み出す力もある、秘密を守るという信頼感もある、つまりベンチャースピリッツはあると思う」と激励した。

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