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【Seybold San Francisco 2000 Vol.7】日本生まれの新しい画像フォーマット“VFZ”が登場!

2000年09月04日 21時42分更新

文● 水無月 実

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本稿では“Seybold Seminars San Francisco”から、展示会のトピックスを取り上げる。展示会は8月29日から8月31日の3日間、Moscone Centerの地下にあるNorth HallとSouth Hallで開催された。連日、多くの参加者があり、かなりの盛況ぶりであったが、今年は昨年に比べて、より一層、日本人の参加者が減ったように思われた。しかし、一部では日本からの出展している会社もあり、ほとんど日本人だけのブースが見られた。これはここ2、3年のSeybold Seminars S.F.でも珍しいことである。

機械類から、技術やサービス中心の展示に変化

Seybold Seminars S.F.には6年連続で訪れているが、今年は特に目に付いたことがある。これまでも確かに、展示会場全体を見渡してみると、年々、機械の数が減少してきた。'95年の頃にはこの展示会場にも、大型のスキャナー、イメージセッターがあった。また、オンデマンド・カラープリンター、カラーコピー機などは今を盛りと列んでいた。確かに、パーソナルコンピューターの台頭に歩調を合わせて、各種システムの小型化が進んできた。この数年間、確かなテンポでこの会場から機械類の姿は消えていった。

それが今年は本当に機械というものを見かけなくなった。あってもカラープリンター程度である。その他に機械らしいものと言えば、コンピューターぐらいであるが、それも新しいコンピューターとして、それ自体を出展しているのはアップルコンピュータぐらいである。その他のブースでは展示内容を説明するために、各種のコンピューターが置かれているだけである。それが象徴するように、今年の展示会では何を出展しているのか、すぐに分かるブースは少なくなっていた。展示の内容が何か具体的なシステムであり、技術であるというブースもそう多くない。

それに比べて、本年、台頭してきたのが、何かのサービスを提供するブースである。それがWebを通じてのプリントサービスであったり、e-Commerceによる受発注のシステムであったり、SGML、XMLなどの言語を使ったサービスであったりする。そのため、展示会を漫然と見ていては、何が行われているのかは分からなかっただろう。印刷業界の業態変化も、このように目に見えにくい形で進んでいる。

e-Publishing、e-Book分野ではMS対Adobeの構図が浮かぶ

e-Publishing、e-Bookを最も熱心に推進しているのはMicrosoftである。 同社は自社のe-Book向けブラウザソフト『MS Reader』を中心にプレゼンテー ションを繰り返していた。また、e-Bookの規格に合わせて、コンテンツを加工するソフトウェアも発表されていた。

自社製のソフトウェア『MS Reader』でe-Bookの世界を広げるMicrosoftのブース

Microsoftに対抗する1番手はAdobe Systemsである。Adobe Systemsは今回新たにGlass Bookをその傘下に納めることをSeybold Seminars S.F.の初日に発表した。いよいよ、大手がe-Publishing、e-Bookに乗り出したことで、この分野も急速に発展するのではないかと思われる。

今回も大きなブースを構えたAdobe Systems。目玉は『Adobe Photoshop 6.0』とe-Publishigのソリューション
Adobe Systemsは今回もPDFを中心に、さまざまなソリューションを提供するベンダーを集めたコーナーを開いた。
Adobe Systems社が傘下に納めたe-Bookメーカー、Glass Bookのブース

e-Publishing、e-Bookの現在のトレンドはさまざまなハードウェアで読めるということである。これまでのように、専用のハードウェアを使うのはもう流行らない。今はPCからPDA、さらには携帯電話へという勢いである。その中で面白いのはBCL社である。同社はPCからRocket E-Book、Palmtopとハードウェアの垣根を越える仕組みを供給している。

PCからPDA、Rocket e-Bookにまでに、e-Publishingのコンテンツを供給するBCL社のブース
Palmtopにe-Publishingのコンテンツを供給するBooks24×7.comのブース

新しい(日本生まれの)画像フォーマットも登場!

画像フォーマットにも新しい流れが見られた。日本の大阪に本社を置く企業DPJ(Digital Processing Japan)が出展していたVFZ(Vector Format for Zooming)がそれである。

日本製の新しい画像フォーマット“VFZ(Vector Format for Zooming)”を開発したDPJ(Digital Publishing Japan)のブース

VFZフォーマットはTIFF、BMPから変換できる。このとき、VFZフォーマットは元のTIFF、BMPフォーマットでの容量に比べると、圧縮がかかっている。それを次に展開するときには、最大800%まで拡大しても、画像の劣化が見られない。このVFZフォーマットに変換したコンテンツをサーバーに保存しておくと、そこに接続したクライアントは必要に応じて、その画像を閲覧、もしくは引き出してTIFF、BMPフォーマットに解凍して、活用できる。もちろん、このVFZフォーマットにはPADSというソフトウェアでセキュリティーがかけられている。セキュリティーのレベルも制御できる。

このVFZフォーマットには、大量のコンテンツ管理などいろいろな展開が考えられ、非常に興味が持たれる。

eコマースからの出版、印刷という新しい流れも

今回のSeybold Seminars S.F.では“e-Commerceからの出版、印刷”という1day Seminar(30日)が設けられていたが、まさにeコマースからの出版、印刷は新しい流れである。今回が初めてではないにしろ、アメリカで始まっているインターネット(Web)を通じてのクライアントからベンダーまでの協業体制は興味深い。

この中ではアメリカのNoosh社やCollabria社、カナダではNurun社が先駆けの企業である。 それぞれに特徴はあるにしても、基本的にはそれぞれの会社がWebを活用して、クライアント、デザイナー、プリンター(印刷会社)までをつなぎ合わせている。その中で、確かな仕事が消化されている。

インターネット(Web)とeコマースで新しい印刷業界の姿を描くNoosh社のブース

もちろん、これらの会社はそのネットワークの中で成立した仕事、完了した仕事の出来高に応じたチャージを請求しているのであるが、そこに参加するフリーのデザイナーにしてみれば、確実に仕事があるのは安心である。日本ではまだまだこのような動きは見られないが、いずれは日本にも登場するであろう。

インターネットを活用して、企画から出版までをコンサルタント

すでに、インターネットを使って、企画から出版までをコンサルタントする会社もある。また、インターネットで印刷を受け付けるプリンター(出力センター)は、昨年から見られる。すでに、印刷会社の前も後ろもインターネットを使った動きが盛んになっている。

やはりインターネット(Web)の活用が印刷会社とその関連業界の動きを変えている。日本から見ると、それは水面下の動きで未だ明らかになっていないが、いずれは大きな業態変化として現われるだろう。

今年の場合は先行したDrupa、MacWorld N.Y.の影響もあるだろうが、それにしてもここ数年の傾向から見られることがある。それは、このSeybold Seminars S.F.での展示会にしても、新製品発表の場という感覚は薄れつつある。展示会もソリューションを発表する会場になっている。その意味では言葉の壁があるにしても、やはり、そこに参加して直に体験してみることが必要ではないかと思う。ハードウェアが見られない以上、そこで何が起きているかを見いだすのは、かなり難しくなってきている。

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