8月30日、東京・千代田区のホテルニューオータニにおいて“ナショナル セミコンダクターIAセミナー:IAが創る身近なインターネット世界”が開催された。本稿では、このイベントの中から講演を中心に報告する。
オープニング・スピーチには、ナショナルセミコンダクタージャパン(株)代表取締役社長の石原達夫氏が登場。石原氏はコンシューマーマーケットにはこれまでのPCベースではなく、ユーザーフレンドリーで使いやすく、安価で信頼性の高いIAが求められていると指摘した。そしてIAはx86コアをもつ『Geode』で安価に製品化できると、ナショナルセミコンダクターの取り組みをアピール。最後に「コンシューマーは日本がリードしてきた。IAでデジタルデバイドの解決を」と呼びかけた。
講演会場にて。写真は東京大学大学院情報学環教授の坂村健氏の基調講演より |
すべてのものにワンチップのインターネットアクセス機能が搭載される時代
基調講演には、東京大学大学院情報学環教授の坂村健氏が登壇した。TRONの生みの親である氏は、“ポストPCの時代”を説いた。
坂村氏はインターネットの普及によってウェブとメールという主用途が生まれ、PCは過去のものになったと分析。これまではネットワークインフラが整っていなかったが、現在ではデータ利用の専用機が実用的であるとした。またiモードの成功の一因としてすぐに使えるといった点をとりあげ、「BTRONなら5秒で起動できる」と、TRONがモバイルに使えるOSであることを説明した。
携帯電話の今後については、携帯電話はパソコンの代替にはならないが、パソコンが大型機のシェアを奪ったようにシェアを築くだろうと予測した。
さらにポスト・ポストPCの時代は、すべてのものにワンチップのインターネットアクセス機能が搭載され、すべての人が情報端末をもつ時代であるとした。このような環境は先進国においてこの100年のうちに実現するであろうと語った。
また、現実に戻ると、地球環境を守りつつ経済発展を行なうという命題があると指摘。そのために求められるシステムは超低消費電力、紙のいらない、紙に近いディスプレー、再利用可能な素材を使用した省資源であるとした。このようなシステムの第一歩がIAであり、必要なパーツはGeodeとTRONであるとした。
最後にTRONについて、携帯電話から車のエンジン制御、デジタルカメラやデジタルビデオカメラとさまざまな分野で広く利用されており、組み込みシステムでは使用実績NO.1である現状を紹介。オープンアーキテクチャと“弱い標準化”を基本とするTRONは、非PC時代の到来で名実ともにNO.1のOSとなることを印象づけた。
4年後の出荷台数は8900万台に。米国では再来年にPCの出荷台数を抜く
続いてセッション1が行なわれ、IDCコンシューマー・デバイス・グループのリサーチアナリストBryan Ma氏が“米国におけるIA市場の潮流と展望”を語った。
Bryan Ma氏はIAの長所について、“使いやすい”、“安心して使える”、“特定の用途に適しかつ陳腐化の心配が少ない”という点を挙げ、短所については“機能の制約”、“まだ発展途上であること”、“ブロードバンドが必要であること”を指摘した。
またIAそれぞれの特徴を分析。NetTVについてはデジタル化、標準化の問題があると指摘。WebPADなどの機器については、LCDなどの製造コストやどのようなビジネスモデルを選択するのかといった課題を示した。
市場規模については2004年の全世界でのIA出荷台数を8900万台とし、アメリカでは2002年にPCの出荷台数を抜くと予測した。
来年中にはほとんどすべてのトップPCメーカーがIAの投入する
セッション3はナショナル セミコンダクター会長、社長兼CEOブライアン・L・ハーラ氏と執行副社長ジャンルイ・ボーリイズ氏が“ポストPCの時代とIA”と題して講演を行なった。
ハーラ氏は“コンピューターの時代”から“情報の時代”への移行を指摘。情報とはアナログであり、IAとワイヤレスでのアクセスが最適であるとした。そしてPCの全機能をもち低コストかつ高性能、ファンレスで動作可能なプロセッサーであるGeodeこそ“情報革命”後に身近に残るCPUであり、「ナショナル セミコンダクターはアナログカンパニー」とアピールした。
NSとIA、Geodeの未来を語るナショナル セミコンダクター会長、社長兼CEOブライアン・L・ハーラ氏 |
ハーラ氏は来年すべての会社が、なんらかのIAを投入するだろうと予測。現在PCのトップ10社中9社と関係があることも紹介された。
またPCが複雑である例としてショップの実際の広告を取り上げ、スペックを知らないと購入できないことを指摘。IAに大きな市場があることを説いた。
Geodeの次世代チップは、現行品の2~4倍のパフォーマンスを実現
続いてジャンルイ・ボーリイズ氏がGeodeについて解説。次世代チップでは2~4倍のパフォーマンスを実現、カスタムデザインに対応したWeb用、シンクライアント用チップを提供するというロードマップを示した。
4月1日に出荷を開始した『Geode GX1プロセッサ』は、情報家電(Information Appliances)市場向けに、グラフィックス機能やサウンド機能などを搭載した機能統合型CPU。PentiumクラスのCPU(x86系コア)、グラフィックス機能、メモリー、PCIバスコントローラーを内蔵し、周辺デバイス『Geode CS5530』とともに利用すれば、同社の提唱する“System-on-a-Chip”を実現できる |
またほかのx86コアとも比較、500MHzのPentiumIIIとWebレンダリングスピードで同等であること、Crusoeより低消費電力かつ低コストであることを示した。
x86コアならWebのプラグインなども利用でき多くのOSをサポート可能なこと、シンクライアントやSTB、WebPADなどのリファレンスデザインも行なっていることなどを紹介、ナショナル セミコンダクターが最適なx86ソリューションを提供するとアピールした。