8月26日、27日の2日間、早稲田大学において“『インターネットと教育』フェスティバル2000”が開催され、各会場ではセミナーやカンファレンス、展示などが行なわれた。この催しと同時に、早稲田大学国際会議場では“インタラクティブエデュケーション2000”が併催された。主催はインタラクティブエデュケーション協会。セッションや講演、パネルディスカッションが行なわれたほか、各大学研究室や企業におけるインタラクションのデモが展示された。
26日には、西早稲田キャンパスのシンポジウム会場で、多摩美術大学の石田晴久氏(プログラム委員長)、ファイザー製薬(株)の山田謙治氏、九州工業大学の平嶋宗氏(展示小委員会委員長)による講演が行なわれた。また、国際会議場では、(株)NTTデータの吉田厚氏によるインタラクティブセッションが開催された。
27日には国際会議場で、青山学院大学の佐伯胖氏(インタラクティブエデュケーション協会長)による会長挨拶、中京大学の三宅なほみ氏による基調講演、(株)アスキーの西和彦氏による特別講演があった。最後に“学校をひらく学びのデザイン――教室からの挑戦”と題し、パネルディスカッションが行なわれた。
(株)アスキーの西和彦氏による特別講演。“私とコンピュータの35年-コンピュータといかに出会い、学び、教えているか” |
また、会議室デモ会場では23のプロジェクトが各々、内容に応じて4つの分野に分けて展示された。物理的・時間的に離れた人と人との、あるいは自分とのインタラクションを可能にする“人とのインタラクション”、いわゆる教材を、一方通行ではなくインタラクティブに学習できるツールとする“教材とのインタラクション”、生徒が自分で“もの”の作成に取り組める“‘もの’や‘こと”とのインタラクション”、そして低コスト、あるいは易しいオペレーションで実現できる“インタラクティブな環境を実現する”。
“バーチャル電子ブロック”は、30年ほど前に発売されていた懐かしの科学玩具“電子ブロック”を、パソコンでシミュレートできるソフト。開発は、和歌山大学システム工学部助教授の森脇裕之氏。かつての電子ブロックとは、抵抗やコンデンサー、トランジスタなどの電子部品を透明のブロックに組み込み、それを並び替えることでさまざまな電子回路をつくるというものだった。
和歌山大学システム工学部助教授の森脇裕之氏による“バーチャル電子ブロック” |
“バーチャル電子ブロック”は、豆電球を点灯させるような簡単なものから、応用回路までさまざまな回路の実験が画面上で行なえる。さらに“電子ブロック”の操作を忠実に再現するだけではなく、外部インターフェースを接続することで、外部センサーの入力信号を受けたり、ブロック回路の信号の外部出力も可能。本物の電子ブロックのパーツを追加して、拡張することもできる。
かつての『電子ブロック』の操作感覚を忠実に再現した画面 |
外部インターフェースを接続すれば、ブロック回路の信号を外部に出力できる。ライト制御やタイマー、おもちゃの駆動なども可能 |
“インタラクティブグループ学習支援システム”は、多摩美術大学の楠房子氏による、ボードゲームとコンピューターの仮想世界を連携させたゲームシステム。ボード上でコマを進めると、コマに内蔵されたチップによって、情報がコンピューター内にも反映される。ボードを囲み、学習者間でコミュニケーションを取りながら、パソコンの情報も取り入れてゲームを進められるというもの。ゲーム内容は、『シムシティ』のような都市運営シミュレーションや、チェスのような陣取りゲームなどが開発されており、今後さらにコンテンツの充実を進めたいとしている。
多摩美術大学の楠房子氏による“インタラクティブグループ学習支援システム” |
“○△□アニメーションによる創造性開発”は、東京農工大学大学院電子情報工学専攻の大友愛子氏によるもの。円形や四角などのパーツを配置し、自由に動かすことによって、自分の頭にある概念を具体化できるソフト。また、パーツごとに動作を設定し、簡単にアニメーションを作ることができる。“学ぶ”のではなく、“作る・創る”ためのツールで、直感的なわかりやすいユーザーインターフェースにより、誰もが利用して楽しむことができる。
東京農工大学大学院電子情報工学専攻の大友愛子氏による“○△□アニメーションによる創造性開発” |
円形や四角などのパーツを配置し、自由に動かすことができる |
そのほか、MITの宮川繁氏によるCD-ROM教材“スターフェスティバル-アメリカにおいてのマルティメディアでの新しい教育”や、 (株)アスキーの瀧元啓太氏による“スクールネット・エクスペリメンタルにおけるサーバーシステム”など、新しい教育システムが展示されていた。会場を訪れた参加者は、デモ画面で実際にソフトを動かしたり、詳しい説明を聞いたりと、各々がインタラクティブエデュケーションの可能性に触れていた。