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スリーコムジャパン、Palm Computing Platform開発者のためのイベント“第1回 パームソース東京サミット”を開催

1999年12月01日 00時00分更新

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スリーコムジャパン(株)は、東京・お台場のホテルにおいて、Palm Computing Platform*のハードウェア/ソフトウェア開発者を対象にしたカンファレンス“パームソース東京サミット”を開催した。30日と12月1日の両日に渡って開かれる。

*Palm Computing Platform:現在、日本では日本アイ・ビー・エム(株)から、“WorkPad”2機種が発売されている。しかしながら、米国を始め世界では、米パームコンピューティング社からPalm OSのライセンスを受け、独自の拡張などを行なってさまざまな製品が発売されている。これらの製品に利用されている、基本的なハードウェア、Palm OS、API、パソコンとのデータ同期機能などを含んだアーキテクチャーを“Palm Computing Platform”と呼んでいる。

このような開発者向けカンファレンスが北米以外で開催されるのは初めてのことという。なお、12月9日にイギリスのロンドン、続いて14日にはドイツのミュンヘンで“パームソースヨーロッパサミット”が開催される予定。

初日となる今日は、米パームコンピューティング社のVice Presidentで、Strategic Alliances and Platform Development担当のマーク・バーコウ(Mark Bercow)氏の基調講演のほか、アプリケーション開発やライセンス企業各社の製品紹介などをテーマとしたセッションが行なわれた。

Palm Computing Platformの広がりを予感させた基調講演

米パームコンピューティング社Vice President、Strategic Alliances and Platform Development担当のマーク・バーコウ氏
米パームコンピューティング社Vice President、Strategic Alliances and Platform Development担当のマーク・バーコウ氏



午前中に行なわれた基調講演では、2000年前半の提供が予定されている『Palm OS 3.5』のデモンストレーションなどを交えながら,PalmOSとPalm Computing Platformの今後の展開が示された。

壇上に立ったバーコウ氏は、今後のPalm OSの方向性として、よりオープンな開発環境、柔軟性の向上、機能追加を容易にするモジュール化の推進、アプリケーションの互換性の維持、Palmらしい設計思想といったポイントをあげ、同時に今後のPalm OSでは、ローカライズの簡便化や無線を利用したコンテンツ提供をサポートする機能が盛り込まれていく方針であると述べた。

また、ライセンス各社が独創的なデバイスの開発によって,Palm Computing Platformの幅が今まで以上に広がることへの期待を示した。

今回の基調講演で目新しかった点は、第1にPalm OSの今後のロードマップが示された点、第2に新たなライセンス企業であるソニー(株)の製品戦略が明らかになったことだ。

Palm OSのロードマップに関しては、本日から開発者向けにベータ版の提供が始まった『Palm OS 3.5日本語版』の概要(英語版の内容も含む)と、そのさらに先のバージョンとなる『Palm OS 4.0』に盛り込まれる機能の説明が行なわれた点が注目だ。

Palm OS 3.5は、従来バージョンの内部に大きく手を加えたフルバージョンアップというべき製品で、カラー表示(最大256色)への対応、日本語入力の使い勝手向上を中心としたユーザーインターフェースの変更(日本語版のみ)、ウェブページを表示させるためのAPIの追加、ローカライズの簡便化などが特徴となる。また、多様なデバイスへの対応もキーワードの1つで、表示/入力機能がこれまでのものと異なるような、スマートフォン(インターネットに接続し、ウェブの閲覧機能を持った携帯電話)などへの搭載が期待される。

同OSを搭載したデバイスの開発は、日本市場向けだけでも複数のメーカーが名乗りを挙げており、2000年上半期には、Palm OS 3.5日本語版を搭載し、カラー表示に対応したデバイスが出荷される見込み。

Palm OS 3.5の次期バージョンにあたるPalm OS 4.0に関しては、現在その仕様を検討/確定している段階とのことだが、利用デバイスとしては従来のハンドヘルドタイプのほか、携帯電話などのコミュニケーションデバイスを想定しており、音声通話機能なども積極的にサポートしていく方針だという。

OSの内部は、さらにモジュール化を進め、ハードウェアのコアとなるAPIに加え、電話用のエクステンションAPIを用意。そのカスタマイズも可能になる。電話機に適したPIMソフトや入力形態のサポートも進めていく方針だ。また、現行の米モトローラ社製Dragonball(16bit)プロセッサー以外の新プロセッサーの対応も積極的に行なっていくという。この新しく対応する予定のプロセッサーとして、英アーム社の“ARM”シリーズがあげられた(具体的にどのARMプロセッサーを指すかは明らかにされなかった)。

Palm OS 4.0搭載のデバイスは、2000年後半から2001年前半の出荷を予定しているという。

ソニー(株)パーソナルITネットワークカンパニー PNC開発センターMPプロジェクト担当の南雅文氏
ソニー(株)パーソナルITネットワークカンパニー PNC開発センターMPプロジェクト担当の南雅文氏



一方、米国ネバダ州ラスベガスで開催された“COMDEX Fall'99”の会期中に、新たにPalm Platformのライセンスを受けたことが発表されたソニーからは、パーソナルITネットワークカンパニー PNC開発センターMPプロジェクト担当の南雅文氏がゲストとして招かれた。

同氏は“1+1=10”というキーワードをあげながら、2社の協力は単に2つのブランドを足し合わせるだけでなく、1桁上の製品として反映されることを強調した。ソニーが具体的に行なう内容としては、(1)2000年半ばに、日本でソニーブランドの複数のPalm OS搭載端末の出荷を予定している、(2)Palm OSでメモリースティックが使える機能をパームコンピューティングと共同開発する、(3)次世代(4.0以降)のPalm OSにAV機能を搭載していく、という3点。

(2)と(3)の付加機能に関しては、ソニー以外のPalm OSのライセンスを受けている企業にも提供されていく予定。これはソニーとの契約に限らない、パームコンピューティングのライセンス方針であるという。

Palm Computing Platformには、現時点で、“SpringSlot”という独自の拡張スロットを備え、青や黄色などカラフルなボディーをもつPalmデバイス『Visor』を開発した米HandSpring社、コンパクトフラッシュスロットを搭載したPalmデバイスを開発した米TRG社、電話機とPalmデバイスの統合製品の開発を表明している米QUALCOMM社やフィンランドのノキア社などがあるが、今回のソニーの参入によって、より新たな可能性が示されることは間違いないだろう。

さらにバーコウ氏と南氏は、基調講演の後で記者向けの説明会にも出席した。説明された内容は基調講演の内容とほぼ重複するので省略するが、質疑応答で、ソニーの製品や方針について明らかになったことを示す。



南氏によれば、ソニーが2000年半ばの投入を予定している製品に、メモリースティックが採用されるかどうかは現時点ではまだ未定であり、プロセッサーとして何を採用するかについても検討中という。今後予定しているというAV機能については、メモリースティックを記憶媒体に使うミュージックプレーヤーを例にあげたが、2000年に発売する製品に音楽再生機能を搭載するかどうかは「現時点では何とも申し上げられない」とした。

また、「なぜPalm Computing Platformを選んだか」という質問に対しては、「“VAIO”との親和性、端末の魅力、技術的にもマーケティングでもお互いによい補完関係が築けると思った」と答えた。さらに「VAIOとの親和性とは?」という質問には、「ソニーが、アプリケーションを開発できるような環境がすでにある」ということだった。そのほか“i.LINK”のインターフェースとして採用するかどうかについては、「可能性の1つと考えている」と述べるにとどまった。

セッション会場と別に用意された“デベロッパーカフェ”では、各社のソフトウェア/ハードウェアの展示や、パーム製品の販売を行なう“Palm Store”が設置された。特にパーム用開発環境として知られる『CodeWarrior Release 6』は定価3万9800円のところ、1万9800円で販売されており、多くの開発者が買い求めていた。

武藤工業(株)が開発した、携帯電子メモパッド『Decrio(デクリオ)』。右のノートに書いた内容がWorkPadに手書きメモとして取り込まれる仕組み。今週末に出荷が開始されるという
武藤工業(株)が開発した、携帯電子メモパッド『Decrio(デクリオ)』。右のノートに書いた内容がWorkPadに手書きメモとして取り込まれる仕組み。今週末に出荷が開始されるという



サン・マイクロシステムズ(株)が展示していた、WorkPadでも動作するコンパクトなJavaバーチャルマシン『Java2ME/KVM』。その場でWorkPad/Palmへのインストールサービスも行なわれていた
サン・マイクロシステムズ(株)が展示していた、WorkPadでも動作するコンパクトなJavaバーチャルマシン『Java2ME/KVM』。その場でWorkPad/Palmへのインストールサービスも行なわれていた



オカヤシステムウェア(株)のWorkPadに張り付けて使う、超小型キーボード『TumbType』。WorkPad c3版の出荷が開始されたばかり
オカヤシステムウェア(株)のWorkPadに張り付けて使う、超小型キーボード『TumbType』。WorkPad c3版の出荷が開始されたばかり



オリンパスシステムズ(株)が展示していた、米Symbol Technologies社のバーコードリーダー内蔵型端末。日本で一般的なハンディターミナルを利用したシステムに比べ、半額程度でシステムが構築できるという
オリンパスシステムズ(株)が展示していた、米Symbol Technologies社のバーコードリーダー内蔵型端末。日本で一般的なハンディターミナルを利用したシステムに比べ、半額程度でシステムが構築できるという



アメリカのCOMDEX/Fall'99で発表された、カシオ計算機(株)の赤外線経由でデータの送受信が可能な腕時計『PC UNITE』。Palm/WorkPadとWindows CE端末とデータ交換可能なソフトウェアをバンドルして2000年3月に、米国で発売予定
アメリカのCOMDEX/Fall'99で発表された、カシオ計算機(株)の赤外線経由でデータの送受信が可能な腕時計『PC UNITE』。Palm/WorkPadとWindows CE端末とデータ交換可能なソフトウェアをバンドルして2000年3月に、米国で発売予定



キヤノン(株)が展示していた、手書き認証プログラム『PalmSign(仮称)』。単体で販売する予定はなく、他のシステムと組み合わせて提供する予定という
キヤノン(株)が展示していた、手書き認証プログラム『PalmSign(仮称)』。単体で販売する予定はなく、他のシステムと組み合わせて提供する予定という



《月刊ASCII DOS/V ISSUE編集部 小林久
/編集部 佐々木千之》

・パームソース東京サミット
 http://www.palm-japan.com/devzone/palmsource_j/

パームコンピューティングとソニーのPalm OSに関する共同開発についてのリリース
 http://www.palm-japan.com/pr/19991115.html

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