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携帯電話やPHSといったインフラを利用した新サービスや技術を持った企業が集合した“モバイル・ベンチャー・メッセ'99”が開催

1999年11月18日 00時00分更新

文● 編集部 佐々木千之

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メイン会場のYRP(横須賀リサーチパーク)1番館
メイン会場のYRP(横須賀リサーチパーク)1番館



18日と19日の両日、神奈川県横須賀市の横須賀リサーチパークで“モバイル・ベンチャー・メッセ'99”(主催:日経BP製品技術研究センター)が開催された。これは、携帯電話やPHSといったモバイルネットワークインフラを利用し、新しいサービスや技術を持ったベンチャー企業が集まり、その技術やビジネスプランをアピールするというイベントだ。

会場は、自社をアピールしたいベンチャー企業はもちろん、何か有用なサービスを持ったベンチャー企業を探す大企業やベンチャーキャピタリスト、そしてこれから起業しようという人の熱気にあふれていた。

基調講演


前東北大学総長、現岩手県立大学学長の西澤潤一氏
前東北大学総長、現岩手県立大学学長の西澤潤一氏



2日間にわたって開催されるメッセ初日の最初のプログラムでは、静電誘導トランジスターの発明や光通信の基本概念の考案など独創的な研究で知られる、岩手県立大学学長の西澤潤一氏が“21世紀における情報通信”というタイトルで基調講演を行なった。

西澤氏は講演の冒頭から、「(産業において日本が欧米に後れをとっている現在)新しいイノベーションのある産業を興すにも、日本の持ついいところをのばすようにしないといけない」、「もはや、『国際競争などというものには目をつぶって、とりあえず少しずつやっていく』というような方法は通用しなくなった」、「いくつかの『日本にしかない』というものを磨き上げてやるしかない」と檄を飛ばし、この日本のもついいものとして情報産業をあげて、「情報通信という産業が唯一日本の柱になりうべきものだと考えている」と述べた。

さらに西澤氏は、マルコーニが電波による通信実験をしたということを伝え聞いた日本人が、まねとはいえ、マルコーニのわずか1年後には通信実験を成功させているという話を引き合いに、「この産業は日本にあっているといわざるを得ない」と続け、聴衆のほとんどが関わっていると思われる情報産業が日本の得意分野であると強調した。

自らが学長を務める岩手大学の例をあげ、「今行なわれているような、単純記憶に頼った試験は、若者の柔軟な頭を破壊してしまうと考えている。それにはいい問題が必要で、先生方にはいい問題を作ってもらうようにお願いしている」、評価ついても「(いい点数がとれる学生ではなく)のびる学生をとらなくては今後地方大学はやっていけない」とした。

スライドでは情報通信分野で国際的な業績を上げた日本人のリストを見せて、「日本人がこの分野で大変創造的な仕事をしている」と勇気づけた。ただし、「日本は評価するということがへたで、たとえば長岡半太郎が、原子核の周りを電子が回っているというモデルを、ラザフォードの発表よりも8年も前に発表していながら、日本の教科書ではこのことを書いている高校の教科書は少ない。こういったことをちゃんと書いていれば、それを呼んだ高校生がどんなにか勇気づけられるのではないか」と日本の“評価べた”についての持論を述べた。

さらに続けて、大学から数々の発見が生まれているが、国立大学の独立法人化などにより、研究費が削られて、生産性が落ち、ひいては日本外気を胃を失ってしまうのではないかという危ぐを述べた。

また、「ゴア副大統領の(スーパー情報ハイウェイ構想の)決定が米国を変えた。米国の現在の隆盛の一端はこの決定にある」「日本でも警鐘を鳴らして、経済を立て直していきたい」とし、最後に「日本が(情報通信分野で)大きなヒットを飛ばさないといけない。この分野が日本にとっての生命線である」と述べて講演を締めくくった。

いすが足りず、大勢の立ち見まででた会場では、西澤氏の力強いエールに大きな拍手がわいていた。

パネルディスカッション


(左から)モバイル・インターネットキャピタル社長の西岡郁夫氏、郵政省関東電気通信管理局長の平井正夫氏、ネットエイジ代表取締役の西川潔氏、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ代表の村口和孝氏、グロービス、エイパックス・グロービス・パートナーズ社長の堀義人氏、NTT移動通信網代表取締役会長の大星公二氏、慶応大学教授で日経BP編集委員の中島洋氏
(左から)モバイル・インターネットキャピタル社長の西岡郁夫氏、郵政省関東電気通信管理局長の平井正夫氏、ネットエイジ代表取締役の西川潔氏、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ代表の村口和孝氏、グロービス、エイパックス・グロービス・パートナーズ社長の堀義人氏、NTT移動通信網代表取締役会長の大星公二氏、慶応大学教授で日経BP編集委員の中島洋氏



基調講演に続いて、“情報ベンチャー活性化の条件”と題したパネルディスカッションが行なわれた。このディスカッションには、モバイル情報通信分野の大企業やベンチャー企業、行政、ベンチャーキャピタリストとさまざまな立場のパネラーが登場し、モバイル・ベンチャーの抱える問題とこれからの見通しなどについて、さまざまな立場から意見が寄せられた。

NTT移動通信網の大星会長が「NTTドコモは急速に成長したとはいえ、ベンチャー企業。これからの発展のためには、自由な発想を持った個人が自由に活動できることが大切。それがまさにベンチャー企業で、ベンチャー企業とともにやっていきたい」と述べると、*モバイル・インターネットキャピタルの西岡社長が「パソコンの普及率は先進国ではドンケツだが、携帯電話の普及率ではダントツの1位だ。“iモード”をみているとものすごくチャンスがあると思える。こういう分野のちょっとしたサービスを考えるときは、大企業では決定に半年もかかるのでだめ。ベンチャー企業にこそ部がある」と、情報通信産業におけるベンチャー企業の優位性についての意見が目立った。

*モバイル・インターネットキャピタル(株):NTT移動通信網、興銀証券(株)、(株)インターネット総合研究所、インテル(株)前会長西岡郁夫氏の出資によって10月末に設立された、モバイル・インターネットおよびその周辺分野を投資対象とするベンチャーキャピタル。基金を設立し、同分野の先端技術、コンテンツ、サービスなどの開発や事業家に取り組むベンチャー企業を資金と経営の両面でサポートするという。

問題点として、日本では米国にいるようなベンチャーキャピタルは少しの例外を除いておらず、大企業に話を聞いてもらいにいっても会ってもくれないことや、銀行などに資金を借りようとしても、(企業や事業をこれから興そうというのにも関わらず)「実績を見せろ」とか「顧客リストを出せ」といって、相手にされない、という状況があるという。ただ、この半年くらい前から状況は変わりつつあり、以前はなかったような風が吹いてきて、資金提供をしようというところも増え始めているという。

また何か新しいことを始めようとした場合に、国の規制が問題とされることも多いが、国の規制の前に業界のしきたりといったような規制があるということも指摘された。これについてNTTドコモの大星氏は「いままでの規制やしきたりは絶対に破られる。本当は恩恵を受けるべき消費者が恩恵を受ける時代は絶対にやってくる。」、「NTTドコモにしても敵は(国内のDDIやJ-フォンではなく)BT(ブリティッシュ・テレコム)やAT&Tだ。いろいろな規制があるからなどと文句を言っている必要はない。外圧によって崩れ去る」と、これから起こるであろう変化について、目先にとらわれない対応が必要であると述べた。

日本の経営教育についても、「大学では経営をやったことのない人が経営を教えている」、「経営学部の学生でさえ、株を売れば即、会社の資金として運用できるということを知らない」といった指摘がなされた。これには、西岡氏が(自社である)モバイル・インターネットキャピタルでは、経営についての指導も行なっていきたいと、資金面だけでないサポートをすることによって、ベンチャー企業を育てていきたいとした。

このほか、さまざまな意見や指摘が述べられたが、総じて、ベンチャー企業を巡る状況は好転しつつあるということで一致していた。

“ジャパニーズ・ドリーム実現のために”と題した西岡氏の講演には、300人を超す、ベンチャー企業経営者やこれからベンチャー企業を興そうとする人たちが集まった。公演後は、西岡氏に名刺を渡して挨拶する人たちの長い列ができていた
“ジャパニーズ・ドリーム実現のために”と題した西岡氏の講演には、300人を超す、ベンチャー企業経営者やこれからベンチャー企業を興そうとする人たちが集まった。公演後は、西岡氏に名刺を渡して挨拶する人たちの長い列ができていた

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