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クライアントは600台でも管理者は1人――Linuxを使った京都産業大学の大規模実習システムを公開

1999年05月28日 00時00分更新

文● 風穴 江、編集部 清水久美子

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'99年4月、約600台のLinux/Windows NTデュアルブートパソコンを導入したことで注目を集めている京都産業大学は、それによって構築されている同大学のネットワークシステムの見学会を開催した。この見学会は、オープンソース運動の草分けでもあるエリック・レイモンド(Eric Raymond)氏の講演に合わせて行なわれたもの。

最寄駅からバスに乗ること20分。京都産業大学は小高い丘を登った場所にある。経済、経営、法学、外国語、理学、工学の6つの学部をもつ、学生数1万3000人の私立大学だ
最寄駅からバスに乗ること20分。京都産業大学は小高い丘を登った場所にある。経済、経営、法学、外国語、理学、工学の6つの学部をもつ、学生数1万3000人の私立大学だ



同大学では、'99年3月に、情報処理教室などが入った“10号館”を竣工。これをきっかけに、学生の実習用環境として、Windows NTとLinuxのデュアルブートが可能なパソコンを導入した。その数は約600台。これらは、ソフトウェアのインストール、ファイルの削除、設定などを遠隔操作で行なえるようになっており、基本的に管理者は1人で済むように設計されている。

10号館は地下1階、地上5階から成る建物。北側採光構造を採用し、建物の中に直射日光が差し込まないようになっている
10号館は地下1階、地上5階から成る建物。北側採光構造を採用し、建物の中に直射日光が差し込まないようになっている



今回の見学会では、同システムの中枢となるサーバールームやネットワーク施設の見学、また遠隔操作で一斉にパソコンを起動させ、これらのパソコンで仮想並列計算を行なうなどのデモンストレーションが行なわれた。

京都産業大学には、600台のIBM製『Netfinity 3000』のほか、Macintoshが導入されている。『Netfinity 3000』はクライアントマシンとして使用されており、Linux(『TurboLinux』を使用)とWindows NTがデュアルブートできるようになっている。これらのパソコンには、IBMが開発した特殊Boot Loderを採用。パソコンが起動するとOSの選択画面が表示されるが、ユーザーによる選択が行なわれないと、自動的にLinuxが起動するようになっている。また、使用するOSは選択されても、確認のための確定(Enter)キーが押されなかった場合は、自動的にシャットダウンされる。

約100人を収容できる教室。各パソコンの液晶ディスプレーは窓と直角となるように配置されている
約100人を収容できる教室。各パソコンの液晶ディスプレーは窓と直角となるように配置されている



これらパソコンを管理する各種サーバーは、“計算機センター”に一括して置かれている。管理サーバーとして使用される2台の『Netfinity 5000』と3台の『Netfinity 3000』を含む、計22台のサーバーを設置している。

計算機センターに置かれているサーバー。ハードウェア的にはごく普通のパソコンやPCサーバー
計算機センターに置かれているサーバー。ハードウェア的にはごく普通のパソコンやPCサーバー



Windows NTとLinuxのどちらを起動させるかを選択できるオリジナルブートセレクター
Windows NTとLinuxのどちらを起動させるかを選択できるオリジナルブートセレクター



このように、クライアントのUNIXとしてはLinuxを採用しているが、サーバーのOSにはFreeBSDを採用。この理由について京都産業大学の教育研究システム課坪内課長は、「Linuxはアプリケーションも豊富でクライアントとしては適している。ただ、膨大な数のパソコンを管理しようとすると一定以上の負荷がかかったとき、不具合は起こることがある。一方、FreeBSDはそういった面では安定している」と説明した。

このほか、600台のパソコンを有効に利用する例も紹介。動画作成処理において、1コマずつの画像生成を複数のパソコンで行なわせることで、高速化を図るデモも行なわれた。

動画作成を分散処理させるデモ
動画作成を分散処理させるデモ



この後エリック・レイモンド氏を招いて講演会も開催。100名以上が参加し、気軽に質問が飛び交うなど、フレンドリーな雰囲気で幕を閉じた。

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