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NEC、HPCセミナーで最先端科学のシミュレーションの様子を公開

1999年05月25日 00時00分更新

文● 浅野純一

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日本電気(株)(NEC)は、21日、HPC(High Performance Computing)ユーザーを対象とした“NEC・HPC研究会”を開催した。HPCはこれまでスパコンと呼ばれてきた科学技術計算向けの高性能コンピューターのこと。同社はSXシリーズをはじめとするHPC製品に積極的に取り組んでおり、研究者やエンジニアを対象にHPCの利用事例や手法を紹介する機会としてこのイベントを企画、今回で9回目を数える。セミナーの内容は、SXシリーズを使った気象予報システムの紹介、HPC用に並列実行度を高めたHigh Performance Fortran言語の紹介、共有メモリベクトル並列マシン向けの連立一次方程式の解法など--。当然ながら専門分野に深く立ち入るものばかりであるためここでは触れないが、これらに先だって行なわれた2つの招待講演については興味深い内容なので紹介しておきたい。

HPCの利用事例に先だって基調講演が行なわれた。宇宙太陽発電所「SPS」について話す京大の松本氏
HPCの利用事例に先だって基調講演が行なわれた。宇宙太陽発電所「SPS」について話す京大の松本氏



講演で紹介されたSPSのイメージ。なお、SPSの詳しい情報は(http://www.kurasc.kyoto-u.ac.jp/plasma-group/
sps.html
)にある

HPCによるマイクロウェーブ送電のシミュレーションの様子をビデオで上映した
HPCによるマイクロウェーブ送電のシミュレーションの様子をビデオで上映した



基調講演は、京都大学超高層電波研究センターの松本紘氏による「21世紀の宇宙開拓」。まず人口問題や資源問題など将来の人類・地球が抱えることになる問題を指摘。将来は宇宙にその突破口を求めることになるとしながら、宇宙太陽発電所:SPS(Solar Power Station)について紹介した。SPSは'68年に米国で提案されたもので、宇宙空間に巨大な太陽電池を設置、発電した電力をマイクロウェーブで地上に送信する仕組み。膨大な太陽エネルギーを効率よく得ることが可能とされていた。現在は日本でも通産省や宇宙研、京大などで研究が行なわれており、小さなもので直径40m、重さ9.6トン、発電能力285kWのものから、3200×2000mのパネルを2枚持つ2万1000トンのステーションを静止軌道に上げて2GW(地上で1GW)の発電を目指すものも研究されているという。建設コストは1GW級の場合でおよそ2兆4000億円。発電コストは23円/kWh(現在はおよそ10円)という数字まで紹介し、宇宙開発はこれまでおよそ15年サイクルで大きなブレークスルーがあったことを考えると、十分実現可能と語った。実際にマイクロウェーブ送電によるラジコン飛行機の映像や、送電の様子をHPCでシミュレートした映像も紹介、実用化に向けて日夜研究中であることをアピールした。

 ガスが重力のある天体に降り注ぐ降着円盤について話をした神大の松田氏
ガスが重力のある天体に降り注ぐ降着円盤について話をした神大の松田氏



 天体のまわりを取りまくようにガスが流れ込む様子をHPCでシミュレートした
天体のまわりを取りまくようにガスが流れ込む様子をHPCでシミュレートした



もうひとつの特別講演は神戸大学理学部地球惑星学科の松田卓也氏による「宇宙流体力学の数値シミュレーション…降着円盤の流れ」。降着円盤とは、天体の重力に引き寄せられたガスが天体に落下することで、大きなエネルギーを放出した状態。ブラックホールや二重星でよく見られるものとし、HPCによるシミュレーションを実行。その結果ガスの動きの中で衝撃波の存在を予測したところ、最近になってその存在が観測によって確認されたというエピソードを紹介した。また2Dや3Dなどのシミュレーション画面を紹介、宇宙の彼方で起こっている動きを視覚化してみせた。「実際の観測では見えないものも、HPCを使えば見える」と話したのが印象的だった。

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