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米モトローラ、半導体セクターの一部を売却、PowerPCは継続

1999年05月12日 00時00分更新

文● ライター いちかわみほ

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米モトローラは5月12日(現地時間5月11日)、モトローラ半導体セクターの一部である半導体コンポーネントグループ(Semiconductor Components Group/SCG)の経営権をテキサス・パシフィック・グループ(TPG)へ譲渡すると発表した。SCGにはMacintoshで使われているMPC、PowerPCの開発、設計部署は含まれない。SCGを元に新会社を設立し、TPGが新会社の約90パーセントの株主となることで経営権の譲渡を実行する。残り10パーセントの同社株や現金、有価証券など16億ドル相当をモトローラが受け取る。取引は今年後半に行なわれる予定。

12日に日本のモトローラ(株)で開いた発表会では、会場前面にスクリーンを設置し、複雑な半導体セクターの組織をOHPで解説した。同社では、半導体部門すべてが譲渡されたわけではないことを繰り返し強調、モトローラの半導体分野に関する体質改善の一策だと述べた。集まったのは新聞社や半導体関係誌の記者など20名ほど。解説後は半導体セクターの経営状態や譲渡時期、新会社の経営方針などに質問が集中。1時間を超える長い発表会となった。

SCGはモトローラ半導体セクターにある5部門の中の1つで、アナログIC、標準ロジックなど規格の決まった標準品の設計、製造を担当する部署。このコンポーネント事業は世界中で展開されており、売上高では業界でもトップを誇っている。'98年度の売上高は15億ドルで、半導体セクター全体の約5分の1を占める。

しかしSCGで販売する製品は標準品のため、同規格の他社製品との置き換えが可能。価格のみが追求されるため、近年では、非常に厳しい価格競争が繰り広げられていた。半導体セクターの残り4部門には、携帯、無線などを担当するWSSG(Wireless Subscriber System Group)、PowerPCやMC68000といったMPCの開発、設計を担当するNCSG(Networking&Components Systems Group)などがある。これらの部門では、自社で開発した半導体を他社製品に組み込むことで利益を上げる組み込み事業を展開している。モトローラでは競争の厳しいコンポーネント事業を手放し、組み込み事業に注力することで市場のリーダーシップを取りたいと述べている。

今回SCGへの出資に踏み切ったTPGは、技術を中心にさまざまな産業で買収を行なう専門投資グループ。デルモンテ・フードなどの食品、コンチネンタルなどの航空会社ほか、すでに21社に投資している。デジタル分野ではパラダイン、ザイログ、GTコムなどの株を保有している。

新会社は、'99年中に設立され、未定となっている会社名もそれまでに発表される。新会社社長には、現在米モトローラのSCG最高責任者を務めるスティーブ・ハンソン上級副社長が就任する予定。東京と会津にあるモトローラ(株)の国内SCG事業所は、新たに設立されるTPGの日本法人傘下となる。土地や社屋だけでなく現在の経営陣、国内事業所で働く約750人の社員も、引き続き新会社の社員として勤務する予定だ。新会社の主要取引先はモトローラとなるが、それ以外の会社とも取引を行なうとしている。

SCGは数年前から赤字体質になっており、黒字に転換したのは'99年になってから。ここ数年の半導体の低価格で、少量多品種を生産していたSCGは、体質変換を余儀なくされており、今後の黒字経営維持は非常に困難だと言える。今回の経営譲渡ではモトローラは経営困難な部門をいいタイミングで手放すことができ、TPGはコンポーネント事業ですでに世界トップという市場を手に入れることができた。まさにギブアンドテイクの見本と言えるだろう。PowerPCなどMPC担当部門は今回の譲渡に含まれていないため、パソコン市場での混乱は特になさそうだ。

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