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NEC、富士通、相次いで教育機関向けシステムの強化を発表

1999年05月07日 00時00分更新

文● 編集部 中野潔

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国産電算機2社が教育機関向けシステム拡充を発表

NECが6日、富士通が7日、相次いで、教育機関向けシステムの強化を発表した。NECは“教育機関向け次世代情報システム構築体系『Integrated Education Solution』”を確立し、6日に発売したと発表。富士通は、“総合教育ネットワークシステム『SCHOOLシリーズ』”のネットワーク機能を強化し、24日に出荷を開始すると発表した。

富士通の発表については、本日、別掲記事で報じている。

・【関連記事】富士通、教育ネットワークシステム『SCHOOLシリーズ』のネットワーク機能を強化
 http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/990507/netw01.html

NECは26種類のソフトウェア製品群で3様のサービス

NECの『Integrated Education Solution』は、既存、新規開発含めて26種類のソフトウェア製品群を組み合わせて、3つの側面から教育機関向けソリューションを提供するというもの。3つの側面とは、(1)情報システムの活用局面に合わせたソリューションの提供、(2)ウェブベースでの教育コミュニティーの形成促進、(3)導入コンサルティング、システム構築、運用・保守支援、アウトソーシングなど広義の導入支援--である。

(1)は、具体的には、アプリケーションパッケージを組み合わせて、システムインテグレーション(SI)することを意味する。ここでは、活用局面を、[a]教育研究ソリューション、[b]情報通信ソリューション、[c]学校運営ソリューション--の3つに分類している。[b]は、(2)を前提としたSIである。

(2)は、教材や文献情報の共有、地域情報、学校情報、履修科目情報などの発信、遠隔授業支援、情報交流などを促すネットワークを構築するもの。地域教育コミュニティー、キャンパスコミュニティー--の2つのメニューを用意している。

これら(1)から(3)までのソリューション提供のため、26種類のソフトウェア製品群を活用する。ソフトウェア製品は、衛星通信による大学間映像ネットワークシステムが8200万円以上となっているのを除くと、価格のついているものが数万円から数千万円まで。ほかに、個別見積もりのものもある。

ソフトウェア製品群のうち、今後出荷されるものとして、『スーパーYUKI21活用データ集「ぶひんばこ」』(6月出荷、5000円)、『「できる学習クラブ」スーパーYUKI版』(7月出荷、2万5000円)、『キャンパスコミュニティサービス』(6月出荷予定、初期費用30万円以上、月額料金9万8000円以上)、『教育機関向けグループウェアシステム』(12月出荷予定、個別見積もり)--がある。

教育機関生き残り競争に乗じる

国産の旧メーンフレームメーカーのうち、教育市場に強いといわれる2社が、相次いで、教育ネットワークシステムの強化を打ち出したのには、3つの背景がある。

第1は、技術的なもの。米国を震源地として世界を巻き込んだ、ウェブベースシステムの隆盛だ。十数年前からパソコンを使ったCAIシステムは存在するが、誰でも作れ、誰でも使えるという域に、なかなか達しない。専門メーカーに多額の外注費を払って外注するか、特定の教師に多大な負担を掛けて内製するかしかなかった。

ウェブの普及に伴い、ウェブ用の各種ツールが、多数、低価格で供給されるようになった。これを、教育市場に持ち込めば、理論的には、安価で使いやすいシステムが、供給できる。

第2は、社会的なもの。景気浮揚のため、公共投資をどこに注ぎ込むかという論議の際、土木建築重点投資が白い目で見られるようになった。財政圧縮の時代だから公共投資額自体は減るが、教育分野は住民の理解が得やすく、特定地域に集中しない。このため、教育族議員が投資誘導を目指して活躍できる。

若年人口が減ると、建物の増設が減り、教員が減るから、新機軸を打ち出さないかぎり、予算は減る。教育関連官庁としても、予算確保のため、情報関連投資重視は渡りに船のトレンドである。

教育機関自身は、若年人口減少による資金難に苦しみながら、投資しなければ生き残れない--というジレンマに悩んでいる。しかし、思い切ってシステム関連に投資し、教育内容の向上に注力した教育機関が優位に立つことは、間違いがない。それで生じた余裕を、さらにリードを広げるための教育資源に振り向けることになる。教育分野におけるシステム投資の総計が減ることはない。

新教科“情報”をにらんだ競争がスタート

第3は、旧メーンフレームメーカー内部の事情である。教育関連システム、行政関連システムは、旧メーンフレームメーカーが優位を保ち続けている数少ない市場である。ダウンサイジング、オープン化、ウェブベース、コンテンツ重視(さらにコミュニティー形成のようなアクティビティー重視)の波への対応を、今、打ち出しておかなければ、外資系ベンチャーなど新興勢力に、してやられる。

通産省の100校プロジェクトは、保守的だった教育関連官庁の方針転換を促した。学校のパソコン導入率、ネットワーク接続率の向上は、至上命題となっている。2003年に始まる高校の新教科“情報”を代表とする、各級の学校における情報関連教育の新しい枠組みも決まった。一定の資金が動く、ゼロ成長時代においては貴重ともいえる市場を巡って、し烈な競争の始業ベルが鳴った。

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