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ロボカップ・ジャパンオープン99開催 vol.1

1999年05月06日 00時00分更新

文● 浅野純一

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ゴールデンウィーク中の5月1日~3日、名古屋国際会議場で『ロボカップ・ジャパンオープン99』が開催された。ロボカップは、サッカーをプレイするロボットやシミュレーターを開発することで、広くロボット工学や人口知能の研究開発を狙った日本発のイベント。ボールをゴールへ運ぶサッカーは個人プレイだけでなく、チームとしての戦略もある複雑なスポーツであることから、これをプレイするロボットの研究が、将来的にさまざま技術に波及すると期待されている。すでに2回の世界大会が開催されているのに加え、日本国内のレベルアップのための国内大会・ジャパンオープンも行なわれており、今回が2回目にあたる。ちなみにロボカッププロジェクトの最終目標は、実際のワールドカップ優勝チームに勝利することで、その時期を2050年あたりと定めている。

現在ロボカップには実際に動くロボットを使う実機部門として中型機と小型機、そしてコンピュータプログラムによるシミュレーションの3つのカテゴリーが用意されているが、今回のジャパンオープンにはいずれも昨年を上回る数のチームが参加した(将来的には4足ロボットや2足ロボット、ジュニア規格など複数のカテゴリーの新設が予定されている)。

●中型機部門

中型機部門は、9×5mのフィールドに、ミニサッカーのフットサル用のボールを使用、最大5台のロボットを使用する。フィールド、ゴール、ボールはそれぞれの色で塗り分けられており、各ロボットは搭載したカメラでその色と形を認識する。ロボットは完全自律、つまりその動作に人間が介在せず、搭載された、あるいはホストコンピュータの指令のもとで動作する仕組みだ。各ロボットの最大サイズは1辺45cmの正方形、あるいは直径45cmの円におさまるものと既定されており、3~4台がチームとなってフィールドを動く様はなかなか壮観だ。中型機部門にに参加したのは、この大会の常連でもあり、昨年の世界大会でも健闘した大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学、宇都宮大学・東洋大学・理化学研究所合同チームを始めとする5チーム。特に阪大と奈良先の2チームは、夏に予定されている世界大会をにらんで従来機を強化したロボットを持ち込んだ。

優勝を争った阪大チームと奈良先チームの対戦。手前のフード付きロボットが阪大、奥のロボットが奈良先チーム
優勝を争った阪大チームと奈良先チームの対戦。手前のフード付きロボットが阪大、奥のロボットが奈良先チーム



両チームとも首振り可能なカメラを搭載して視覚認識を行なっている。そのために壁やゴール、ボールの色が塗り分けられている
両チームとも首振り可能なカメラを搭載して視覚認識を行なっている。そのために壁やゴール、ボールの色が塗り分けられている



ゴール前での攻防。手前ゴール前にはキーパーロボットがいる。キーパーロボットはフィールダーに比べて動きや反応が優秀で、的確なセービングで会場を沸かせた
ゴール前での攻防。手前ゴール前にはキーパーロボットがいる。キーパーロボットはフィールダーに比べて動きや反応が優秀で、的確なセービングで会場を沸かせた



阪大チームの特徴はロボット自身による学習にある。特にフォワードを担当するロボットはボールをゴールに入れるという動作をくり返すことで、自分のプレイを学習・進化する機能が与えられている。キーパーを担当するロボットの完成度が高いのも売り物だ。奈良先チームのロボットは、ノートパソコンの東芝・Librettoを搭載したコンパクトなスタイルが特徴。パソコン用キーボードのキースイッチを応用した触覚センサーを搭載することで、状況判断も行なうことができる。今回はシュート装置を新たに装着し、得点力を高めたロボットを投入していた。

九州工業大学のロボットはラジコン戦車のシャシーをそのまま流用することで製作コストをおさえたもの
九州工業大学のロボットはラジコン戦車のシャシーをそのまま流用することで製作コストをおさえたもの



同じく九州工業大学のロボット。白い部分がカメラで、ノートパソコンに画像を入力して認識を行なう
同じく九州工業大学のロボット。白い部分がカメラで、ノートパソコンに画像を入力して認識を行なう



阪大と宇都宮大学・東洋大学・理化学研究所合同チームとの対戦。後者のロボットは筒型の大きなもので、フィールダー同士のパス機能やファンを使ったシュート機能など多彩な芸が特徴
阪大と宇都宮大学・東洋大学・理化学研究所合同チームとの対戦。後者のロボットは筒型の大きなもので、フィールダー同士のパス機能やファンを使ったシュート機能など多彩な芸が特徴



このほか注目されたのは初参加の九州工業大学チーム。彼らのロボットはラジコン用戦車のシャシーをそのまま足まわりに採用。ほかチームに比べて信頼性のある手堅い足まわりを採用することで、ロボット開発のリソースを画像認識や戦略プログラムに割く余裕が生まれるだけでなく、制作費の面でも非常にローコストを実現しているという。そのため、試合後にはロボカップに興味を持つ未参加の学生や研究者がさかんに質問を寄せる光景が見られた。

プレーが中断するたびにロボットの動作をリセットするためのチェックが行なわれる
プレーが中断するたびにロボットの動作をリセットするためのチェックが行なわれる



ロボット同士で押し合うチャージングのルールが採り入れられており、その場合フリーキックが与えられる。フィールドに部品が飛び散ることもしばしば
ロボット同士で押し合うチャージングのルールが採り入れられており、その場合フリーキックが与えられる。フィールドに部品が飛び散ることもしばしば



競技のほうは、5チームの総当たりリーグ戦で行なわれた結果、阪大と奈良先の2チームが決勝に進出、阪大チームが優勝を遂げた。昨年に比べ出場チーム数が増えたこともあって、会場は盛り上がったが、技術的に見ると、ロボットの動きはまだ各チームが意図したとおりものにはなっていない模様で、ボールを見失ったり、認識できなかったりするだけでなく、微動だにしないロボットも続出。サッカーらしからぬ一方的な大量得点ゲームはなかったものの、まだまだ“プリミティブ”なレベルにも遠いというのが正直なところだ。ただし、各チームとも学生の研究の一貫として参加しており、限られた予算と時間の中では仕方がない面もあるのは理解できるところだ。

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