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「新しい技術とともにビジネスモデルは変化」--MAA第1回例会から

1999年04月30日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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26日、コンテンツクリエーターが中心となったデジタルメディアの制作、発表、流通に関する権利保護を考える団体であるメディアアーティスト協会(MAA)の'99年度第1回例会が開催された。今回はMAA著作権講座とシンポジウムの2部構成をとった。

MAA会員加入は順調に推移

また、MAA事務局長の松武秀樹氏からは、同会の現況について説明がなされた。松武氏によれば、現在の入会状況は、正会員が37名、法人賛助会員が4社、個人賛助会員が20名。松武氏がascii24の単独インタビューで語った数字からは幾分の下方修正という形となったものの、参加アーティストなど例会参加者の顔ぶれを見ても順調に推移しているものと見てとれた。

さらにこれまで6名の発起人が運営主体として動いてきたが、今回にこれに建築家/プロダクトデザイナーの黒川雅行氏とCGアーティストの原田大三郎氏が加わり、実行委員会の形をとって進めていくことを発表した。

また、MAAのウェブサイトについては、現在、ゴールデンウィーク明けの立ち上げを目指して制作中とのことだ。なお、同ウェブサイトのURLを末記した。

インターネットでも無許諾複製が最大の敵

MAA著作権講座は6回にわたって行なわれる予定で、その第1回として“著作権の誕生と歩み~グーテンベルグからインターネットまで~”と題してマックス法律事務所の弁護士、齋藤浩貴氏が著作権の歴史について講演した。

グーテンベルグの印刷術発明以降に初めて制定された著作権法であるイギリスの“アン法”(1710)に始まったこと、フランス革命後に成立したフランスでの著作権が国際的保護の要請を引き出し、フランスの「内国民待遇措置」(1852)という画期的な政令を生み出したこと。ひいてはフランス文芸会長であったビクトル・ユゴーが国際文芸協会を設立し、“ベルヌ条約”(1886)の成立に至らしめた、という近世著作権史を中心に講演を進めた。さらに現代日本において、めまぐるしく変わる著作権法の改正や“WIPO新条約”('97)まで解説し、締めくくった。

最後に齋藤氏は、「インターネットにおいても、最大の脅威は無許諾の複製である」、そして、“著作権の基本的な考え”は、現在も著作権誕生の時代と変わらないと述べた。さらに「ベルヌ条約の時のユゴーらのように、MAAにおいてもアーティストが先頭に立つことは意義深い」と語った。

新しい技術とともにビジネスモデルも変化


シンポジウムでデジタルコンテンツ配信の現状を解説するデジタルガレージの伊藤譲一社長。
シンポジウムでデジタルコンテンツ配信の現状を解説するデジタルガレージの伊藤譲一社長。



シンポジウムでは、(株)ソニー・ミュージック エンタテイメントの丸山茂雄社長と(株)デジタルガレージの伊藤譲一社長を迎えて、“メディアアートをとりまくビジネスの今~デジタルコンテンツ配信ビジネスの現在そして未来~”をテーマに進んだ。

伊藤氏は、IBM社の動向など有力ベンダーや音楽サイトの採用フォーマットやデジタル著作権管理システムといったトピックを紹介。ダイアモンド・マルチメディア社が、インタートラスト・テクノロジーズ社のデジタル著作権管理ソフトウェアを『Rio』に組み込む著作権保護に乗り出したことなどに触れた。デジタルコンテンツ配信ビジネスの現況と背景について説明した。

また伊藤氏は、検索サイトのLYCOSが実施しているMP3データの検索サービス『MP3 Search』に対し、全米レコード協会(RIAA)が訴えている件に関してコメントした。「MP3そのものが違法でない、との見解で、LYCOSが勝利するのではないか」と語った。さらに伊藤氏は「新しい技術とともに、そのビジネスモデルも変化するべきだ」とした。

ソニー・ミュージック エンタテインメントの丸山茂雄社長。その発言が注目ソニー・ミュージック エンタテインメントの丸山茂雄社長。その発言が注目



丸山氏には、デジタルでの音楽配信への強い意志と決意の感じられる発言が多かった。参加アーティストや筆者のような利用ユーザーにとっても、大変、興味深く、意義深いミーティングとなった。

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