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“Japan Web Cache Workshop”~「プロキシーサービスを思い切ってやめてしまうのも手」

1999年04月23日 00時00分更新

文● 編集部 原武士

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本日、東京都・飯田橋にてウェブキャッシュの研究者・運営者を対象とした、現状報告と研究発表会“Japan Web Cache Workshop”が開かれた。この発表会はウェブコンテンツをキャッシングすることで2重リクエストを避け、回線使用コストを削減するプロキシー/キャッシュについての設定方法や、セキュリティー管理、運用管理方法について、企業の管理者や大学の研究者などが発表するもの。主催は、日本UNIXユーザ会(jus)。発表会には120名以上が参加した。ここでは発表の中から、ISP(Internet Service Provider)と企業の管理者からみたプロキシーサーバーの運用と今後の展望について紹介する。

今は、プロキシーサービスを続けるべきか辞めるべきかの選択のとき

(株)インターネットイニシアティブ(IIJ)、技術本部企画開発部の松本英夫氏は“比較的大規模なproxyサーバーの構築”というテーマーで、同社が提供するダイヤルアップサービス“IIJ4U”を例に、ISP(Internet Service Provider)の立場から見たプロキシーサーバーの構築について発表した。

松本英夫氏、キャッシュはヒット率が30パーセントあれば上々という
松本英夫氏、キャッシュはヒット率が30パーセントあれば上々という



・プロキシーサーバーの導入理由

「ISPがプロキシーサーバーを導入する理由は、ネットワークのレスポンス改善、データの利用帯域の削減、ユーザーの要望、ISPのブランドイメージの向上があげられる。そして、導入にあたり必ず考慮するのは、キャッシュのヒット率の向上と、運用管理の低コスト化、そして安定性と多機能である。プロキシーサーバーの選択肢は大きく2つに分かれている。ひとつは、大規模サーバーの導入。最近発表された製品は大容量のキャッシュを持ちパフォーマンスが良い。しかし価格が非常に高い。もうひとつは、中小規模のサーバー。価格が安く、パフォーマンスもそれなりにあるが、機能が少なく、環境との相性もある」

「IIJの場合は、プロキシーサーバーにHarvest Squid(http://squid.nlanr.net/Squid/)を採用した。プログラムのソースが公開されているので、何かあった場合にソースから原因をたどることができる。また、導入当時に、それなりに実績があり運用コストを含めて経済的なものはSquidしかなかった」

・ログを解析してわかったこと

「プロキシーサーバーを導入後、ログを解析してみるとなかなか面白かった。夜10時から午前3時の5時間で1日のトラフィックのうち約半分が流れているのだ。この結果には、日本の通信事情が現れていて面白い。サーバー1台あたりのヒット率は約36パーセント。そのうち10回以上ヒットするものは全体の3パーセント程度しかない。この3パーセントの部分をいかに大きくできるかが今後の課題」

「これから先、ユーザー量とデータ量が増加するのは目に見えている。新しいプロキシーサーバーを導入するにはコストがかかる。しかし、安価なものを導入するにはリスクが高い。そうなったときにプロキシーサービスを続けるべきか、それとも思い切ってやめるべきか大きな課題になる。しかも、この課題は、いつか来る問題ではなく、今起こりつつある問題だ」

一般企業におけるプロキシーサーバーの構築

(株)ケンウッド、研究開発本部の一條博氏は“firewall内のproxy/cache serverのリレー”という題目で、企業内における、中小規模のプロキシーサーバー構築について発表した。

「ケンウッドの場合は、社内での電子メールの利用をきっかけにインターネットの需要が高まった。その後にウェブの利用が増加した。そのため、インターネットへは64Kbpsと比較的低速で接続している。社員のネットワーク利用の需要増加にともない、トラフィックを分散させる必要が出てきた」

はじめは、ネットワークのことがまるでわからなかったという一條氏、手探りによる実験の繰り返しという
はじめは、ネットワークのことがまるでわからなかったという一條氏、手探りによる実験の繰り返しという



「まず、評価用のプロキシーサーバーとしてHarvest Squidを導入し実験をはじめた。OSはFreeBSDを使った。擬似的にトラフィックを増加させて、プロキシーの効果を実験してみた。トラフィックの条件はトラフィックが定期的に増加するパターンと常にトラフィックが高いパターンを用意した。面白いことに、定期的にトラフィックが増加するパターンのほうが効果が高いことがわかった」

「プロキシーサーバー導入後、キャッシュのヒット率は40パーセント前後になった。これによりファイヤーウォールを越えるhttp要求が減少し、コスト削減につながったようだ。しかし、一番良い解決策は64Kbpsの帯域幅をもっと大きくすればよいことだ思う。しかし、コスト的に難しいのが現状だ」

プロバイダーにおけるプロキシー・キャッシュに対する考え方は顧客の要求を満たすためであり、必要であるとは断言できないという。そのため、プロバイダーではプロキシーサーバーの使い方を明示しているところは少ない。それに対し、企業におけるプロキシー・キャッシュは、ネットワーク部門のコスト削減に必要不可欠な要素のようだ。

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