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【NAB99 レポート Vol.4】3DCGからバーチャルスタジオまで~製作システムのデジタル化~

1999年04月22日 00時00分更新

文● 浅野純也

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放送システムのデジタル化にともない、インターネットやパソコンとの関連も深くなってきている。NAB99でもメインストリームのジェネラルテレビ・フィルムゾーンのほか、インターネットやマルチメディアのゾーンが設けられている。レポート第4弾はこうしたカテゴリーの中から注目のトピックをピックアップする。

3DCGソフトは大盛況

もはやテレビ番組の制作においてコンピューターグラフィックス(CG)は欠かせない存在になっている。ハードウェアの進化により、強力なパフォーマンスが安価に手に入るようになったこともあってその機会は増え続けており、なおかつクオリティーは向上、コストは下がっている。NAB99でもパソコンやワークステーションベースのCG製作システムが多数展示されている。

Windows NT版として帰ってきたVideo Toaster。このブースにも人だかりができていた
Windows NT版として帰ってきたVideo Toaster。このブースにも人だかりができていた



話題を呼んでいるのが“帰ってきた”『VideoToaster』だろう。かつてAmigaをプラットフォームにしていた2D/3D&合成ツールで、日本ではテレビ番組“ウゴウゴルーガ”(懐かしい!)で一躍注目された。そのVideoToasterが帰ってきたとあって、NewTek社のブースではWindows NTにプラットフォームを移したVideoToasterを大々的に展示。受付カウンターには資料を求める人が押し寄せていた。最新版の特徴は非圧縮のD1フォーマットのビデオが扱えることなど。もちろん『LightWave VT』も同梱されている。またインターグラフ社がVideo Toasterを組み込んだシステムを展示していた。

ディスクリートは3D Studio MAX3を公開。会場で最も大きなブースを構え、最新機能のデモにつとめた
ディスクリートは3D Studio MAX3を公開。会場で最も大きなブースを構え、最新機能のデモにつとめた



エイリアス・ウェーブフロントのMAYA。3DCGソフトはいずこも大きな発表を行なったことになる
エイリアス・ウェーブフロントのMAYA。3DCGソフトはいずこも大きな発表を行なったことになる



このほかにもディスクリート(オートデスク社の一部門)の『3D Studio MAX3』、エイリアス・ウェーブフロントの『MAYA』など3DCGソフトは大きな発表が相次いで行なわれ、いずれのブースもたくさんの来場者が押し掛けた。また、社名をSGIに変更した旧シリコングラフィックスは、同社のビジュアルサーバーONYXを使ったHD(高品位)の3DCGをリアルタイムで生成するデモを行なうなど、ハイエンドカテゴリーでの強さをアピールしていた。ちなみに同社はパワフルなサーバー群を利用したMPEG-2のマルチストリーム転送や、アセットマネージメント、ビジュアル検索などのデモも行なっていた。

アップルのノンリニア編集ソフト

安価で強力なプラットフォームによる影響は、CG製作だけでなく編集システムにも及んでいる。アビッドに代表されるコンピューターベースのいわゆるノンリニア編集システムの普及だ。ノンリニア編集とは、映像データをハードディスクに取り込んで行なう編集処理のこと。ランダムアクセスが可能なのはもちろん、オリジナルデータを破壊することなく編集ができるというメリットがある(たとえば映像をカットしたりエフェクトをかけたとしても、読み出しをスキップしたり、読み出し時にパラメーターを付加して読み込むだけで、元のデータはそのまま保持することができる)。アビッドに追いつけ追い越せと多くの製品が展示された。

アップルの新製品Final Cut Pro。DVをダイレクトにつないだデモを行なった
アップルの新製品Final Cut Pro。DVをダイレクトにつないだデモを行なった



アップルのブースは大盛況。ホワイトを基調にしたエクステリアはすでにおなじみ
アップルのブースは大盛況。ホワイトを基調にしたエクステリアはすでにおなじみ



この分野での最大の話題は、アップルコンピュータ社が発表した『Final Cut Pro』だろう。もともとマクロメディア社で開発されていたものをアップルが買い取ったもので、同時に発表されQuickTimeのバージョン4の技術が使われている。この編集ソフトによって最新の青白マック(新Power Macintosh G3)のアドバンテージを伸ばす狙いがあるのは言うまでもない。この青白マックにはIEEE1394インターフェースが標準搭載されており、市販のDVカメラを容易に接続できるからだ。DVデータをダイレクトに取り込み、Final Cut Proで編集を行なうというスタイルが確立されれば、NTベースの編集システムが増殖する中で、Macintoshのアドバンテージをアピールすることができるだろう。同社はアマチュアだけでなくプロフェッショナルユースも狙っている。実際、ブースには多くの人が詰めかけ、Macintoshによるノンリニア編集についての質問を浴びせていた。

QuickTime4ではストリーミングがキーワード。人気のSTARWARSの予告編が繰り返し流されていた
QuickTime4ではストリーミングがキーワード。人気のSTARWARSの予告編が繰り返し流されていた



QuickTime4についても触れておこう。この最新バージョンでは、インターネット上のストリーミングを強く意識しており、映像や音声を統合的に扱うことができるようになっている。また、AVIやMP3などのフォーマットにも対応している。ストリーミングサーバーソフトも同時に提供される。

アドビシステムズはノンリニア編集ソフトの最新版『Premiere5.1』を発表した
アドビシステムズはノンリニア編集ソフトの最新版『Premiere5.1』を発表した



ノンリニア編集システムはこのこのほかにもアドビシステムズ社のPremiereを始め多数の製品が展示されており、NTベースのシステムだけでなく、Macintoshベースのシステムも多かった。

Videonics社の『EFFETTO PRONTO 2.0』。Macintosh版のノンリニア編集ソフトが元気だった
Videonics社の『EFFETTO PRONTO 2.0』。Macintosh版のノンリニア編集ソフトが元気だった



Matrox社が発表したデジタルツール『DigiSuite』を使ったノンリニア編集システム『Incite』
Matrox社が発表したデジタルツール『DigiSuite』を使ったノンリニア編集システム『Incite』



進化するバーチャルスタジオ

会場で目立つデモを行なっていたのが、バーチャルスタジオシステムだ。スタジオにセットを組むのではなく、ブルースクリーンやグリーンスクリーンをバックにして3DCGを合成、さまざまなシチュエーションを創造することができるもの。コストを下げられることもあって、ニュースやバラエティなどさまざまな番組で使われている。今回目立ったのは単なる3DCGの合成にとどまらないもので、リアルタイムモーションキャプチャーによるCGキャラクターを「共演」させたり、一定領域だけを抽出してエフェクトをかけたり、人物とCGをより複雑に合成するものだ。

ブルーバックに3DCGを始め、さまざまなグラフィックスを重ねられるバーチャルスタジオのデモ
ブルーバックに3DCGを始め、さまざまなグラフィックスを重ねられるバーチャルスタジオのデモ



モーションキャプチャーを利用して3DCGのキャラクタをリアルタイムにバーチャルスタジオに登場させることができる
モーションキャプチャーを利用して3DCGのキャラクタをリアルタイムにバーチャルスタジオに登場させることができる



写真では分かりにくいが、後ろの人物だけがモノクロにエフェクト処理されて表示されている。人物の手前に3DCGを持ってくるなど、3DCGとエフェクトを自在に組み合わせられるZcamのデモ
写真では分かりにくいが、後ろの人物だけがモノクロにエフェクト処理されて表示されている。人物の手前に3DCGを持ってくるなど、3DCGとエフェクトを自在に組み合わせられるZcamのデモ



DREAMTEAM社とRT-SET社は、通路を挟んだ2つのブースを使い、一方ではRT-SETのブルースクリーンによるバーチャルスタジオを、もう一方ではDREAMTEAMのリアルタイムモーションキャプチャー『TYPHOON』を実演して、バーチャルスタジオに登場させるデモを行なった。軽妙なトークとその効果の大きさに、デモが行なわれるたびに多くの人が立ち止まり、注目を集めていた。また、3DV Systems社の『Zcam』は、合成する3DCGを複数レイヤー持つことができるのが特徴。同一画面に登場する2人の人物のうち1人だけにリアルタイムエフェクトをかけたり、人物の前にCGを入れ込むことができる。

DVDを作成するオーサリングツールもチラホラと見られた。写真はSONIC SOLUTIONS製の『DVDIt!』
DVDを作成するオーサリングツールもチラホラと見られた。写真はSONIC SOLUTIONS製の『DVDIt!』

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