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Be Developer Conferenceレポート―6月にR4.5、日本法人も設立準備中―

1999年04月13日 00時00分更新

文● 柴田文彦

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●「MediaKit」に集中したBeディベロッパコンファレンスが開催

 ほぼ1年ぶりのBeDC(Be Developer Conference)が、9日、10日の2日間、シリコンバレーの中心地Palo Altoで開催された。1年前にはSan Joseでの開催だったが、今回はBe社オフィスのあるMenlo Parkにより近い会場が選ばれた。

 前回のBeDCのメインテーマは、Intel版BeOSの正式な発表ということだったが、すでにIntel版がしっかりと定着した今回は、BeOSの特徴的なAPIの1つである、「MediaKit」にフォーカスを絞ったものだ。BeOSがリアルタイムのオーディオやビデオデータのハンドリングを得意分野とするMediaOSとして定着するための、重要なステップとなるだろう。

 会場に選ばれた、Crowne Plaza Cabana Hotelは、シリコンバレーの中心、スタンフォード大学にも遠くないベイエリアを南北に走るEl Camino Real通り沿いにある。ホテルの建物は改装中で、アクセスの限られた部分もあったが、MediaKitに特化しただけあって、普段よりもやや小規模のBeDCには十分なスペースを提供していた。(写真1)

(写真1)今回の会場Crowne Plaza Cabana Hotelは、“石を投げればデジタル系企業に当たる”El Camino Real通り沿いにある
(写真1)今回の会場Crowne Plaza Cabana Hotelは、“石を投げればデジタル系企業に当たる”El Camino Real通り沿いにある



 関係者の話によると、ディベロッパとしての事前の参加登録者数は、約200名ということだったが、初日には明らかにこれを上回る数の人々が参加していたように見えた。おそらく招待客やプレス関係の参加者がかなり多かったのだろう。2日目は、参加者の数がやや減っただけでなく、雰囲気もかなりシリアスなものに変わったように感じられた。

 2日間に渡るセッションの初日の受付開始時刻は午後3時と、これまでにない異例のスケジューリングだった。今回は、通常初日に置かれる「BeOSプログラミング入門」的なセッションが省かれ、キーノートスピーチなどのジェネラルセッションと、ディナーを含むレセプションだけを初日に配置した。初日の、どちらかと言えばくつろいだ雰囲気とは対称的に、2日目はMediaKitの中身やプログラミングに関して、みっちりと中身の濃い技術的なセッションが展開された。

●R4.1はスキップして6月にR4.5をリリース

 初日のレジストレーションの後、ディベロッパ・リレーション担当副社長のTim Self氏は、全世界でのディベロッパ登録者数が1万人を超えたことを報告して、ジェネラルセッションの幕を開けた。

 その後スピーチに立ったBe社CEOのJean-Louis Gassee氏は、汎用OSであるWindowsのMS Officeのようなものとはまったく分野の異なった、BeOSならではのアプリケーションの発達のためには、MediaKitが非常に重要であることをあらためて確認した。そして、そこに今回のBeDCの意味があることを強調した(写真2)。

写真2:スピーチに立ったBe社CEOのJean-Louis Gassee氏写真2:スピーチに立ったBe社CEOのJean-Louis Gassee氏



 今回のBeDCの直前にBe社に参加し、副社長兼CMO(Chief Marketing Officer)に任命されたRoy Graham氏は、BeOSの今後のリリース予定などを発表した(写真3)。

 ここでは、BeDCに合わせて発表かと思われていた「BeOS Release R4.1」のリリースが延期になったことが明らかにされるという意外な展開となった。それによると、R4.1のリリースはスキップされ、今年6月後半の「R4.5」のリリースがそれに代わるということだ。

 それだけに、R4.5には、R4.1に予定されていた以上のものが盛り込まれることになりそうだ。その場でデモされたものだけを挙げても、USB関連デバイスのサポート強化、Cinepakでエンコードされたデジタルビデオデータのデコード機能(もちろん音声付き)、デジタルカメラからの画像入力機能の追加、それにOpenGLのハードウェアアクセラレーション機能などがある。

写真3:BeDCの直前にマーケティング担当副社長に就任したRoy Graham氏。BeOSの今後のロードマップを発表した写真3:BeDCの直前にマーケティング担当副社長に就任したRoy Graham氏。BeOSの今後のロードマップを発表した




●Be、日本法人を設立準備中

 今後は、新しいバージョンの発表直前まではリリース番号を公表しないようにして、混乱をなるべく避ける方針に転換するようだ。

 ちなみに、現在開発中のバージョンは、“Genki”という日本語から取ったコードネームで呼ぶようにしたという。実際に、今回のプレゼンテーションでは、一環してこの名前が使われていたし、2日目の昼休みに参加者に配布された現状最新のBeOSインストールCDには、日本語で「元気」とプリントされていた。もちろんこれの進化したものが、R4.5として発売されることになるのだろう。

 また、Be社では新たに日本人の社員を雇い、現在日本法人の設立に向けて準備中であることも明らかにされた。具体的なことはまだ検討中のようだが、最初はごく小規模のオフィスを設け、主にOEMのサポートから業務を開始していくようである。

●ゲストスピーカーは、あのThomas Dolby氏!

 いくつかのサードパーティのデモの後に登場したゲストスピーカーは、今回も事前に発表されていなかったが、これまでとはまったく異なった分野の人物が登場して、会場を驚かせた。それは、新しいメディアに積極的に取り組むことで知られているミュージシャンで、Headspace社の創立者でもあるThomas Dolby氏*だった(写真4)。

写真4:ゲストスピーカーとして登場したThomas Dolby氏。さすがDJの雰囲気が漂う
写真4:ゲストスピーカーとして登場したThomas Dolby氏。さすがDJの雰囲気が漂う



 残念ながらBeOS上のアプリケーションではなかったが、自分の会社で開発したマルチトラックのオーディオファイル「RMF」を使った新しい音楽表現形式のデモを、Netscape Communicator 4.5上で実行した。将来的には、IMFフォーマットがBeOSでサポートされる見込みであることもアナウンスされた。


●世界中のディベロッパが一同に会するレセプション

 今回は2日間ともディナーを含むレセプションが開かれた。ディベロッパ同士、あるいはBeのエンジニアとディベロッパ間でのまとまったコミュニケーションの場というという点では、昨年のBeDC以来、ほぼ1年振りの機会となった。レセプションには、両日ともたっぷり2時間が充てられた。実はこの時間が今回のBeDCの中でも重要な役割を果たしていたことが分かる(写真5)。

写真5:ディベロッパ同士、Beのエンジニアとディベロッパ間の交流の場となるレセプションは二夜連続で賑わう
写真5:ディベロッパ同士、Beのエンジニアとディベロッパ間の交流の場となるレセプションは二夜連続で賑わう



 レセプションの時間には、隣接した部屋でDevelopment Labも開かれていた。これは、複数のサードパーティが各自のアプリケーションを展示して、一般のディベロッパにデモする機会を提供するものだ。今回は、MediaKitに関連の深いアプリケーションを中心に、グラフィックやゲームソフトを含むデモとなった。

 目立ったところでは、発売が待ち望まれているAdamation社のムービー編集ソフト「Personal Studio」や、先日発表されたばかりのBeatWare社の新しいグラフィックスソフト「e-Picture」などが出展されていた。いずれも、発売がかなり近いと思わせる完成度に達しており、今後の動きに期待がかかるところだ。


●2つのトラックに別れたテクニカルセッション

 2日めのテクニカルセッションでは、まず午前中にMediaKitのオーバービューを説明するセッションが1つの会場で開催された。昼食をはさんで午後からは、「Application」と「Node」という2つのトラックに分かれ、別々の会場でより突っ込んだ話となった。

 Applicationセッションは、文字どおりMediaKitを利用するアプリケーション開発に関するもので、デジタルメディアの再生、編集や操作、それにMediaKitの設定に関するパラメータ、およびUIなどテーマでプレゼンテーションがあった。

 Nodeセッションは、デジタルメディアの入力や出力、あるいはその両方の機能を持つフィルタなど、アプリケーションが利用する基本機能を提供するノードの開発に関するものである。MediaKitそのものが、現在拡張中であるため、Be社のウェブサイト上で公開されている最新の「BeBook」に記載されている内容からも、強化されていることが明らかになった。しかも、これでフィックスされたわけでもなさそうなので、今後ともディベロッパは最新の情報に注意する必要がある。


●Be、株式公開?

 テクニカルセッションの最後を締めくくったのは、すでに恒例となったBe社スタッフ全員が答えるQ&Aセッションだ。ここでは、技術的な質問以外にも、例えばいつ株を公開するのかといった質問も飛び出した。これについては答えはぼかされたが、その時期を早めるには、もっとアプリケーションを出荷することだと、逆に逃げられた感もある。

 Jean-Louis Gassee氏にインタビューも行ったのだが、今回は速報ということで、また改めて「Mostly BeOS」で紹介することにしたい。

注釈
Thomas Dolby:Thomas Dolby Robertson 。'70年代後半からシンセサイザーを使った音楽を創作、'80年代に入ってからはミュージック・ビデオ作品も手がけ、ニューヨークのグッゲンハイム美術館での「The Virtual String Quartet」で好評を博するなど常にテクノロジーと関わるアーティスト。アルバムに「Aliens Ate My Buick」('88年)、「Astronauts & Heretics」('92年)、「The Flat Earth」('96年)、「The Golden Age Of Wireless」('96年)などがある。

 '93年にMary Collerと共にインターネットを使って音楽とサウンドを配信する技術を開発することを目的とするHeadspace, Inc.を設立。同社のソフトウェア「Beatnik Web Music System」はBeatnik Plug-in、the Beatnik Editor、The Beatnik Villageから成り、MP3、MIDI、AIFF、WAV、AUなどの音楽ファイルの再生、およびMIDIその他のフォーマットのオーディオデータをインターネット上での配信に最適化されたRich Music Format (RMF)に編集・出力ができる。

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