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「Y2K問題は解決すれば終わりというものではない」(米国議会金融問題スタッフ)--第21回ハイパーフォーラムから

1999年04月06日 00時00分更新

文● 野々下裕子 younos@pb3.so-net.ne.jp

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日本においては、金融関係機関でさえ全体の20パーセント程度、企業では10パーセント程度しか認識がないといわれている。今やコンピューターはネットワークを通じて複雑にからみあっており、一企業だけが問題をクリアしても解決とはいえない。たとえば、ある企業が大金をかけてシステムを最新のものに取り替えても、ネットワークがつながった先で別の問題が起きれば、それらはすべて無駄になってしまう--と危機感を表明した。

講師のピンダー氏はジャーナリズムの専門家であり、また過去にはDJをつとめるなど、ユニークな経歴の持ち主でもある
講師のピンダー氏はジャーナリズムの専門家であり、また過去にはDJをつとめるなど、ユニークな経歴の持ち主でもある



Y2K問題は今後発生する課題の手本

マネジメントに関わる人たちの意識も問題になる。10年前にコンピューターマネージメントに関わる人々が気づいていれば、Y2K問題は回避できた。しかし、これほどのコンピューター社会、ネットワーク社会になると、その時代に誰も予想し得なかったように、問題がまた別のところに派生する可能性がある。100パーセントの対策というのは残念ながらあり得ない。

一方、100パーセント解決できたとしてもそれで終わりではない。Y2K問題を一過性のものとしてではなく、今後、コンピューター社会において派生するさまざまな問題のサンプルの1つとして捉え、それらに対処する新しいスキルを身につけていくことが大切なのである。

ピンダー氏からの米国の状況報告に対し、大分の現状を伝えるハイパー研理事の尾野徹氏。Y2K問題は中央に任せきりにするのではなく、地域ごとに固有の対応が必須であると語った。危機感を大いに募らせているという
ピンダー氏からの米国の状況報告に対し、大分の現状を伝えるハイパー研理事の尾野徹氏。Y2K問題は中央に任せきりにするのではなく、地域ごとに固有の対応が必須であると語った。危機感を大いに募らせているという



米国の開示法によって、組織がY2K問題に関するあらゆる情報を共有し、失敗も含めた対応を学んでいけると期待されている。最後にピンダー氏は、今後起きるコンピュータークライシスの対策として、計画作り、環境の問題、公安・海運の問題、世界的なセキュリティーに対する防御--の4つがポイントになると締めくくった。

会場からは、多数の質問が。世の関心の高さを示した
会場からは、多数の質問が。世の関心の高さを示した



講演前のインタビューでピンダー氏に「専門家ではない一般の人々はY2K問題に対してどう取り組むべきか」との質問を投げ掛けてみた。「実は一般だけではなく専門家もまだまだY2K問題には関心が薄い」との答えが返ってきた。「現在のような認知度の低さが最も問題であり、今回のような機会を持って啓蒙活動を行ない、公にディスカッションしていくことが大切だ」と語った。今回の会場となった大分市では、すでに行政にY2Kの相談窓口が設けられ、専門家が対応にあたっている。このような地域先導型の対策こそが有効な解決策となるのかもしれない。

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