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【エデュテイメントフォーラム'99京都 Vol.3】プライムタイムのテレビ番組で視聴者の99パーセントが番組のウェブにアクセス

1999年04月02日 00時00分更新

文● 野々下裕子 yonos@pb3.so-net.ne.jp

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京都リサーチパークを会場に、3月25日から3日間に渡って“エデュテイメントフォーラム'99京都”が開催された。教育と娯楽とを融合させた“エデュテイメント”産業の育成が旗印である。その2日目にあたる26日には、海外の教育事例についての報告などがなされた。本稿では、そうした講演2本を紹介する。講演者はそれぞれ英BBCと、同じく英国のThe Productive Play Company社から招いた。

BBCではすべての番組に双方向のウェブサイトを設けた

イギリス国営放送局BBCが展開している、オンラインサービスとそのエデュテイメント性について、2氏が報告した。Education Digital Media and Learning Channels Development ExecutiveのGeorge Auckland氏と、Section HeadのJonathann Drori氏である。

講演を前に会場をリラックスムードにする両氏
講演を前に会場をリラックスムードにする両氏



現在、BBCではライセンスフィーによる、広告なしでのオンラインサービスを展開。総売上は360億ドルとなっている。その背景には視聴者のニーズに応える、きめこまやかなサービスがある。たとえば人気の科学番組では、解説してほしいポイントについて、そのウェブサイトで、事前にメールで募集している。こうした番組作りが学習プロセスを容易にし、より多くの要素を家庭に提供できるとAuckland氏は語る。

BBC教育オンラインの解説をするGeorge Auckland氏
BBC教育オンラインの解説をするGeorge Auckland氏



BBCではすべての番組にウェブサイトがあり、それぞれがインタラクティブ性の高いものとなっている。合計2万ページ以上を擁する大きなもの。週に240万以上のページビューがあり、月12パーセントの増加率だという。プライムタイムに放送しているGCSE(学力検定試験)の番組では、視聴者の99パーセントがウェブサイトを利用。さらにテキストなどの印刷物や学習パッケージソフトなど、ワンソースマルチメディアを実践した展開で収入を得ている。

BBCがADSLサービスを開始

さらにキャラクターも大きな役割を果たしている。子供TV番組“テレタビーズ”は英国だけでなく、世界中で人気を集めている。ウェブサイトでも週に120万ページビュー以上のヒットと、BBCのウェブサイトの中では最も成功している。4月から東京でも放送開始とのことで、さらにその人気は世界にも広がりそうだ。

教育サイトにも人気キャラクターの影響は不可欠と語るAuckland氏。会場ではテレタビーズのキャラクタ人形が配られた教育サイトにも人気キャラクターの影響は不可欠と語るAuckland氏。会場ではテレタビーズのキャラクタ人形が配られた



BBCではウェブサイトの他にADSLサービスを開始。ロンドン西地区1000世帯を対象に試験放送をはじめている。セットトップボックスを使ったオンデマンドサービスで、画像はフルスクリーンサイズ。もちろんスピードも速い。さらに、電子メールで視聴者からのリクエストを受け付けたり、番組を検索できるようにしたり--と用途を広げる。今年の6月には初のデジタル学習チャンネルの公共サービスにも踏み出す予定だ。

BBCのクロスメディア戦略を目の当たりにしたせいか、講演終了後もAuckland氏への質問が殺到したBBCのクロスメディア戦略を目の当たりにしたせいか、講演終了後もAuckland氏への質問が殺到した



欧州のベストコンテンツ30のうち23が米国発

CD-ROMを使った教育ソフトなどを開発しているThe Productive Play Company社のManaging Director であるRichard Staniforth氏は、英国および欧州における教育市場のあり方などを紹介した。

現在、欧州市場におけるエデュテイメントコンテンツTOP30のうち、7つ以外はすべて米国のもの。日本の『もののけ姫』なども人気はあるが、一部を除いてはあまり評価されていない。こうした状況に対処するには、コンスタントにいいコンテンツを提供する努力が必要だとStaniforth氏は語る。

自社制作のアニメを紹介するRichard Staniforth氏
自社制作のアニメを紹介するRichard Staniforth氏



教室で提供するコンテンツとしては、CD-ROMがまだまだ有効であると主張する。その理由として、授業の内容に即したカリキュラムが組めること、インターフェイスがユーザーフレンドリーであること、ペースコントロールが自由にできること--といった点をあげている。

大人はこうした新しい教材の出現を心配するが、子供は勝手気ままに学習し、成長する。自分のペースで学習できる快感が、学ぶ楽しさにつながるというわけだ。もちろんオンラインサイトの可能性も高まっており、学校での勉強を復習できるサイトなどが注目されている。

37万人の情報技術教師を育成

今後、エデュテイメントコンテンツの開発に関して、日本との共同作業の可能性はあるかという話題にも触れた。「問題はお互いの文化を理解することだ」とし、「一般的には言語が問題といわれるが、裏を返せばそれだけなら簡単に解決できる」と言い切る。事実、質の高いエデュテイメントコンテンツはどんどん国境を越えているという。

日本が国際的なエディテイメント市場に参加できる可能性は高いと語るStaniforth氏日本が国際的なエディテイメント市場に参加できる可能性は高いと語るStaniforth氏



また、政府の援助によりCardiffにメディアセンターを設立。築100年の建物の中に最新の技術を装備した。大学の機能を果たしたり、研修を実施したり、情報やリソースを交換したり--といった活動を進める。

英国政府は教育予算23億ポンドを計上し、2000年までにすべての子供がインターネットアドレスを持てるようにする。2002年までに生徒10人に1台の割合でマルチメディアコンピューターを導入し、3200校をネットで接続する。教師向けのIT(情報技術)訓練センターを1000個所設け、37万人のIT教師を育成するという。こうして生まれる新たな教育市場は世界的にも注目を集めることになりそうだ。

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