(株)ヴァーチャルリアリティーセンター横浜は(有)シーフォンと、シーフォンの開発した“メガネなし3Dディスプレイ”の販売・マーケティングおよび、3次元コンテンツの提供などで業務提携すると発表した。3Dディスプレーとは、従来の立体視製品とは異なり、特殊なメガネなどを必要とせず、多人数が同時に立体映像を観察できるもの。
なお、ヴァーチャルリアリティセンター横浜は(株)スリーディーの子会社で、バーチャルリアリティー(VR)に関する製品の販売やコンテンツ作成を目的に設立されたベンチャー企業。同社では、VRに関する教育やセミナーなども手がけている。
3Dディスプレー(実験機、写真中央) |
3Dィスプレーの原理
3Dディスプレーは用途に応じて構成は変わるが、基本的に赤外線の発信装置と受信装置および、左右の目それぞれに対応するカラー液晶パネルとバックライト用のモノクロ液晶パネルを搭載している。本体は箱型(下図参照)。人物から見て箱の一番奥にバックライト用の液晶パネルがあり、箱の正面側には液晶パネルと水平にカラー液晶パネルが設置されている。このバックライト用の液晶パネルと正面のカラー液晶パネルは連動しており、右目用の画像と左目用の画像を交互に高速で表示している。
この図は1枚の液晶を使ったもの。ほかに各目に対応する2枚の液晶を使った製品も考えられている |
通常ではそのまま鑑賞しても右目用と左目用の画像が重なってしまい立体的な画像は見えない。3Dディスプレーでは、赤外線センサーによりディスプレーの正面にいる人物の顔の位置と向きをリアルタイムに判別し、人物の顔面の左右にそれぞれの目に対応する画像が反射するようバックライトとなるモノクロ液晶ディスプレーの対応部分だけを白く発光させている。
パソコンで作成した右目用の画面と左目用の画面。ソースを作成すれば実写映像でも立体視できる |
赤外線センサーによる顔面の検知は、対象が複数人数でも処理落ちせず、製品となるモデルでは、最大10~11名に対して同時に立体視を見せられるという。
もともとは医療用として開発された
本日、その3Dディスプレーの記者発表会が神奈川県のヴァーチャルリアリティーセンター横浜本社で開催された。シーフォンの代表取締役社長、服部知彦氏は、用意したデモ機を前に「今、皆さんの目の前にあるこの製品は、'97年のG7通信官僚会議で実験的に使用されたもの。既に技術としては完成していた。ほかにも、日本の名古屋大学と米デューク大学間で、リアルタイムに3次元の医療画像を評価する実験も成功した。医療機関からの強いニーズがあり今回の発表にいたった」と述べた。
服部氏「技術的にいえば、液晶だけでなくCRTを利用した製品も作れる」 |
続けて、ヴァーチャルリアリティーセンター横浜の関塚亨氏が「この製品は、医用としてだけでなく、エンターテインメント市場や家庭市場に向けてもアピールできる。2010年には国内の放送はすべてデジタル放送に変わっていると考えられる。その中でこの3次元ディスプレイも発展していくと期待している」とコメントした。
関塚氏は「技術的には完成している。後はコストの問題」と言う |
従来の放送などで利用されている2次元映像を3次元映像に変換する“2D-3Dイメージコンバーター”を用いると、通常の2次元映像を3次元映像として表現することも可能という。このコンバーターは、映像までの距離の視差が一定になることで発生する目の錯覚を利用している。2次元画像を対象人物を中心とする一定距離の円錐の壁に貼り付け、それを立体視したような効果を作り出す。この方式を利用した場合、強制的に作られた立体映像を鑑賞するよりも目の疲労が少ないという。
ヴァーチャルリアリティーセンター横浜ではこの3Dディスプレーを、今年中に量産させる予定。製品には10~12インチのTFT液晶ディスプレーを採用する。販売対象は、医療分野やエンターテインメント分野などで、価格は70万前後になる。
この3Dディスプレーは30日と31日の2日間にわたり一般にも公開される。場所は神奈川県のヴァーチャルリアリティーセンター横浜本社。同社Webサイトに公開の詳細情報と地図が掲載されている。公開時間は以下の通り。立体映像は2次元の写真では紹介できないため、自分の目で確かめてみるのが良いだろう。
●公開場所
ヴァーチャルリアリティセンター横浜ショールーム 横浜みなとみらい
Queen's Tower C棟17階
●公開時間
・30日 10:00~18:00
・31日 10:00~15:00