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【2000年問題シンポジウム】「消費者はメーカーを訴えられれば手段を選ばない」----パネルセッションより

1999年03月24日 00時00分更新

文● 報道局 原武士

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 ソフトウェア・メインテナンス研究会(SMSG)が主催する“2000年問題シンポジウム”において、“残り10ヵ月の危機管理は”と題したパネルディスカッションが行なわれた。

 司会は日本フィッツ(株)の田中一夫氏。パネリストは、(株)インテックの西野正彦氏、(株)真永の冨永茂氏、オムロン(株)の榊谷好文氏、大阪弁護士会の岡村久道氏、東京弁護士会の牧野二郎氏の6名。

メーカー側から見た2000年問題

 初めに、企業側のパネリストが、所属する各企業や、専門としている分野の2000年問題について説明した。

 インテックでは2000年問題への取り組みとして、すべての取引先における対応状況や予想金額を表で管理している。しかし、顧客の2000年問題に対する理解や認知が低くなかなか作業が進んでいないという。

インテック、アウトソーシング事業本部東京ソフトウェア部、西野正彦部長 インテック、アウトソーシング事業本部東京ソフトウェア部、西野正彦部長



 真永では、日本アイ・ビー・エム(株)のサーバー『AS/400』に対応する2000年問題対策支援ツール『真世紀』と、2000年問題対応済みとされるアプリケーションのバグを検証する『検真くん』を販売している。同社では、2000年問題に対するサポートとして、土曜・日曜や年末年始も24時間体制でサポートしていくという。

真永、冨永茂代表取締役 真永、冨永茂代表取締役



 オムロンでは自動改札機や銀行のATMなど、同社の開発した組み込みチップを採用した製品を紹介。提供する企業ごとに仕様が違うため、組み込みチップでは2000年問題対策が難しいことを紹介した。

オムロン、ソーシアル事業グループ 開発・生産センタ ソフトウエア開発部 開発1課、榊谷好文主査 オムロン、ソーシアル事業グループ 開発・生産センタ ソフトウエア開発部 開発1課、榊谷好文主査



米国では既に50件近くの訴訟が

 続いて、大阪弁護士会の岡村氏が、ソフトウェアのバグから発生する責任問題について、米国の実例を踏まえつつ説明した。

企業の立場から裁判になった場合を述べる岡村氏 企業の立場から裁判になった場合を述べる岡村氏



 米国では2000年問題の情報交換に関して、反トラスト法適用の一時免除などが制定されている。また、2000年問題の処理を失敗した場合の司法手続きを確立する法案も審議中という。米国では2000年問題に関する訴訟が既に50件近く提起されている。そのほとんどが、無償バージョンアップを求めるものだという。

 日本においても、2000年問題が発生した場合“瑕疵担保責任(バグに対する責任)”や、“製造物責任”などを問われる可能性があるという。同氏は、責任問題が発生した場合、ベンダー企業自身が負うだけでなく、取締役も責任を追及される恐れが強いと警告した。

消費者代表としてメーカーを訴える

 東京弁護士会の牧野氏は、消費者が実際にメーカーを訴えるときの手段を紹介した。

消費者の立場からみた2000年問題をコメントする牧野氏 消費者の立場からみた2000年問題をコメントする牧野氏



 製造物責任は形あるものにしか適用されない。そのため、通常ではソフトウェアは製造物責任には問われない。しかし、ハードウェアと一体のものとして扱えば責任問題を追及できる可能性がある。「責任追及できそうなものがあれば、すべて証拠として提出する」と同氏は述べる。消費者の立場からすれば訴えることができれば手段は問わないのだという。

対応しないメーカーは訴えられてもしょうがない

 パネリストの講演がひと通り終わった後、質疑応答形式による聴衆参加型のパネルセッションへと移行した。販売店からはメーカー対応の不満などが飛び出し、場は白熱したトークとなった。牧野弁護士は今回のシンポジウムを“メーカーに対する恫喝”と受け取ってほしいと述べた。セッションの様子は以下の通り。

--西暦2000年問題の定義は?

西野「期間的に言うと来年の3月まで。しかし一般的にみるとわからない」

牧野「コンピューターの年号が元になって問題が起こったときにその事象が問題であって、これといった定義はない」

--サーバーなどで2000年問題が発生しログの日付がずれてしまった場合、裁判でずれた日付は証拠にできるのか

岡村「このシステムでは、何年になると何年ずれるという証拠さえあれば問題ない。しかし、困ったことに裁判所はコンピューターの仕組みをわかっていないので説明が大変になる」

--ホームページに掲載されている情報が証拠になりあえるのか

牧野「私は証拠になると思っている。複数の人間がそのページをプリントアウトしており、さらにデータとして保存しておけば、証拠になると考えている。メーカーは、今の時点からホームページをしかるべき弁護士と相談してきちっと保存しておかないと、消費者から狙い撃ちされる可能性がある」

岡村「証拠の提出に規制はない。ただし、証拠になるかどうかは裁判所が決めること。ホームページの場合はバージョン管理をしっかりしておかないといけない」

--PL法は有体物に対してのみ影響を及ぼすが、それでもソフトを物として起訴できるのか?

牧野「一般的に、ソフトウェアがバージョンアップを予定していて、バグが出た場合、それは欠陥とまでは言えない。起訴する場合には、機械に組み込まれたソフトを一体の物として訴えていく」

岡村「ソフトウェア単体を製造物というのは難しいだろう。PL法が適用される前、テレビが火を吹いて、過失が認められたことがある。あまりにひどい障害が出た場合は、責任を取らされることになるだろう」

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