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“dog year”のペースで語る“dog eating”?--テレクラス国際会議・アジアフォーラムから

1999年03月15日 00時00分更新

文● 樋口由紀子、yukiko@kb3.so-net.ne.jp

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3ヵ国、5大学をテレビ会議システムで結ぶ

 3月10日、アジアの5大学を結んだ学生による国際テレビ会議“テレクラス国際会議・アジアフォーラム”が開かれた。会議の主催は、テレクラス・インターナショナル・ジャパンと(財)マルチメディア振興センターである。会議に参加したのは、北京大学、香港大学、又石大学(韓国)で日本語を専攻している学生、東京大学東洋文化研究所の学生/留学生、帝塚山学院大学の国際文化学科の学生--の計3ヵ国4経済地域、5大学の学生たち。彼らの日本語での議論は、約2時間半に及んだ。

第3回とあって画面に向かっての討論も盛り上がりを見せていた(画面は又石大学)
第3回とあって画面に向かっての討論も盛り上がりを見せていた(画面は又石大学)



 会議のテーマは、“アジア・未来・ネットワーク構想”で、今回が第3回にあたる。約1週間前に実施された2回にわたる会議内容を踏まえ、討論を展開した。テーマごとに各大学が交代でホストを務める。ホスト会場のKDD大阪支社と、各地会場であるKDD各国支社とを、INS64回線/国際ISDN回線2B、国際規格テレビ会議システムによって結んだ。

KDD大阪支社サイトには、学生のほか、教員や関係者もフォーラムの見学に訪れた
KDD大阪支社サイトには、学生のほか、教員や関係者もフォーラムの見学に訪れた



 最初に“情報化社会による異文化理解”をテーマに香港大学がホストをつとめた。帝塚山学院大学からの「インターネットは異文化理解に有効か」という質問に対し、各国の学生たちから、「インターネットによってより早い情報収集が可能になり、それが異文化理解の第1歩につながる」、「簡単に知識を得ることができるインターネットは、異文化理解に便利(無効ではない)」といった意見が飛び出した。そのまとめとして香港大学は、「インターネットで、心の交流はあまりできないため、人間関係が希薄になることもある」と発言。そのためには、お互いが「隣人である」という意識を持ち、理解を深めることが必要といった提言がなされた。

相手サイトを画面に呼び出しての討論が展開される(画面は北京大学)。
相手サイトを画面に呼び出しての討論が展開される(画面は北京大学)。



 その他には、東京大学がホストとなり、“漢字の統一コード化は必要か”についての意見交換があった。こうした専門的な知識が必要な議論に対して、各大学の教員が補足する場面もあった。

通信の壁を破ると言葉と文化の壁

 議論が盛り上がりつつも、特に後半では、言葉の問題でなかなか深いところまで議論が突き詰められないという問題が生じた。そうした状況に対して、(中国語などの)別の言語で議論する、あるいはお互いの母国語を交換して議論するなどの提案がなされ、今後の会議での課題とした。この後、“異文化理解と共生”、“環境問題”、“心と心の異文化理解”などまで話題が広がったが、詳細は省略する。前回の会議からの宿題となった“犬を食べる習慣をどう考えるか”については、各大学とも「主張することではなく、違いを知り、その違いを理解することが重要」という共通の意識を持ちつつあることを確認したようだ。

討論にもだんだんと熱が入ってくる
討論にもだんだんと熱が入ってくる



 会議の後、各国の学生や教員は、充実した会議の内容と、大きくなっていく連帯感に満足しきった顔を見せていた。互いに画面の向こうへ感想とお礼を述べ合い、学生らの間ではメールアドレスの交換も約束された。今後学生達の間では、今以上に相手に興味を抱き、交流をますます深めることだろう。

 現時点では、まだ専門施設を借りての会議ではあるが、今後の技術の発展とともに、新しい手法での交流が始まるだろう。ただし、問題は技術ではない、コミュニケーションの中身である。そんなことを感じさせたアジアの交流であった。

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