このページの本文へ

子供たちがネットコミュニケーションとデジタルもの作りを体験----“Net Day in神戸/伊丹/赤穂/バンクーバー'99”

1999年03月09日 00時00分更新

文● 樋口由紀子

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 神戸、姫路、伊丹地区の小学校に、インターネットが使える環境とノウハウを残そうとの狙いで'97年に始まったのが“夢プロジェクト”である。6日、このプロジェクトの一環として“Net Day in神戸/伊丹/赤穂/バンクーバー'99”が開催された。神戸マルチメディア・インターネット協議会が呼びかけ、兵庫県下の関連団体および神戸大学工学部が、具体的計画を立てた。

“NetDay”の神戸本部は六甲アイランドの神戸ファッションマート内に設置された
“NetDay”の神戸本部は六甲アイランドの神戸ファッションマート内に設置された



 子供たちはこの日、テレビ会議による学校間交流、マウスパッド製作のセミナーを通して、ネットワークコミュニケーションを体験した。

子供たちの作業を手伝ったのは、同じ神戸ファッションマート内に研究室を持つ神戸大学田中研究室の学生たち
子供たちの作業を手伝ったのは、同じ神戸ファッションマート内に研究室を持つ神戸大学田中研究室の学生たち



テレビ会議システムで海を越える

 午前の部は、NTTのテレビ会議システムの『フェニックス・ミニ』を使いながら幕を開けたテレビ会議で小学校間を結び、国際交流した。

 約1時間のテレビ会議のとりまとめ役を務めたのは、テレクラス・インターナショナル・ジャパンの・木洋子氏。・木氏はこの十数年間、通信機器を利用した国際交流教育の活動に力を注ぎ続けている。“テレクラス”とはそうした遠隔学級活動を指す。

 


各地域の子供たちとテンポよくセッションを進める・木氏


 本部となった神戸ファッションマートから、各地に集まった小学生たちにゆっくり語りかけながら、彼らの海を越えた親善をサポートした。神戸を軸に、伊丹2ヵ所、赤穂2ヵ所の各小学校と、バンクーバーのThe Pacific Palisades Hotelが1つに結ばれた。

 

赤穂市立高雄小学校(左)、バンクーバーエリア(右)のセッション赤穂市立高雄小学校(左)、バンクーバーエリア(右)のセッション



 バンクーバーの会場に集結したのは、江川元明氏が率いる日本語学校の生徒たちである。彼らと、伊丹、赤穂の小学生たちは、まず1ヵ所ずつ挨拶を交わした。その後、それぞれ、歌やリコーダー演奏、書道の実演を披露したり、工夫を凝らしたクイズを出し合ったりと、音と映像を使ったコミュニケーションを楽しんだ。

 コミュニケーションをとる際には、実際会ってアイコンタクトをしながら、相手の表情を見るのが理想的である。しかし、それが実現できない場合、可能な限りそれに近い環境を作ることが“テレクラス”の目的であると高木氏は考える。

教育現場のネットワークはツールよりも、まずつながることに意義があると語るテレクラス・インターナショナルの高木洋子氏
教育現場のネットワークはツールよりも、まずつながることに意義があると語るテレクラス・インターナショナルの高木洋子氏



 その環境を構築するためのツールは、インターネットに限らない。その状況に応じて、ふさわしいものを選べばいい。何よりもそのために、教員達や生徒達が一緒になって、考えたり意見を交換し合ったりすることが、何よりも大切だという。その共同作業のプロセス、また達成感こそが次に通じるエネルギーになる。今回のイベントは、たった3週間の準備で開催にこぎつけたが、それもそうしたパワーあってこそだ。

神戸と伊丹とで話をする神戸大学工学部の田中克己教授と伊丹氏総合研究所主事の畑井克彦
神戸と伊丹とで話をする神戸大学工学部の田中克己教授と伊丹氏総合研究所主事の畑井克彦



 たとえば、会場となった伊丹市内の小学校2校では、イベント開催1週間前にネットワークケーブルを敷設した。伊丹市総合研究所主事の畑井克彦氏らが中心となって、ボランティアで実行した。おそらくこの共同作業で、参加者それぞれの中に、次へのエネルギーが生まれているのではないか敷設費用の軽減が同時に実現されているのは、いうまでもない。

セットワークの接続風景(・木氏の後ろからの写真)
セットワークの接続風景(・木氏の後ろからの写真)



 次に、午後の部では、神戸ファションマートと伊丹中学校とを結んで、コラボレーションを果たした。互いの作業を見ながら、パソコンを使ってマウスパッドを製作した。子供たちは、ホームページから気に入った画像を取り込んだり、デジカメで撮った写真を用いたり、あるいは絵を描いたりと、思い思いのマウスパッドを作っていた。それを、“夢プロジェクト”の実行委員長である神戸大学工学部田中克己教授の研究室の学生たちがサポートする。

後半、神戸本部で行なわれた作業風景。会場には地元神戸地域から有志の子供たちが集まった
後半、神戸本部で行なわれた作業風景。会場には地元神戸地域から有志の子供たちが集まった



 参加者の1人、桜ヶ丘小学校6年の角田有優君は、パソコンを学校の授業や自宅でときどき使う程度だった。しかし、学生たちの指導のもと、思い通りの完成品を手にしていた。とはいえ、御影中学校1年の池田直也君のように、自宅でWindowsを使用しているため、今回のMacintoshでの作業がなかなかスムーズにいかなかった子供もいる。一方学生たちは、コンピュータを怖がらない子供達の適応の速さに驚いていた。

エンディングに揃ってあいさつをする子供たち
エンディングに揃ってあいさつをする子供たち



 こうした作業の間に、伊丹側の作業風景を写したデジカメの画像が、インターネットで神戸に送られ、それもマウスパッドに加工された。最後に、再びテレビ会議を使って完成品を披露し、“Net Day'97”から、また前進した“Net Day'99”は幕を閉じた。

イベント終了後、神戸本部に駆けつけた伊丹の畑井氏に、完成したマウスパッドが手渡された
イベント終了後、神戸本部に駆けつけた伊丹の畑井氏に、完成したマウスパッドが手渡された


 神戸大学の田中教授によれば、伊丹市において、市民のボランティア参加が積極的になっているという。奇しくも今回ボランティアによってネットワークを敷設した場所だ。ボランティアが育つ地域性が確かに培われている。次の“夢プロジェクト=Net Day2000”への期待がさらに高まる。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン