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大前研一氏が基調講演--日本IBMが“e-business software Forum'99”を開催

1999年03月09日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦

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 日本アイ・ビー・エム(株)は、同社のソフトウェア製品やその導入事例を紹介する“e-business software Forum'99”を、東京江東区のホテルイースト21にて10日まで開催する。初日の今日は経済評論家の大前研一氏による基調講演が行なわれた。

大前研一氏の基調講演



「先進国の中で、ここ数年8~10パーセントの経済成長を続けている国はアイルランドしかない。アイルランドは、もともとは貧しい国で、18世紀、19世紀と多くの人が他の国へ移民していった。20世紀は他の国の企業の工場を誘致しようとしたが駄目だった。しかし、ここ数年は、他の国の企業の仕事をネットワークを介して受注するようになり、それが大きな経済発展をもたらす要因となった。アイルランドと同じようにネットワークを利用して発展した国にインドがある。これらの国は、アメリカのソフトハウスや金融機関の仕事を通信回線を通して受け取り、時差を利用して仕事を迅速に進めることで成功した。いまや、“職”が通信回路を移動する時代といえるだろう」

「ネットワークの時代は、すなわちグローバルスタンダードが支配する時代といえるだろう。その主導権はアメリカが握っている。日本がいままで成功してきたのは、製造業だけであり、情報通信産業の分野では、アメリカに完全に後れをとっている。その中で、わたしが唯一期待しているのは、ソニーが先日発表した『Playstation2』である。通信機能がどうなるかは、まだ決まっていないが、すでに全世界で販売されている5000万台がすべて買い換えられたならば、そのままインターネット端末として使われる可能性が高い。ネットワークの時代のビジネスは、端末とデリバリーを押さえたところが勝つとみており、その一角にソニーが加わるのではないかと大いに期待している」

「いま小渕首相は、『銀行の不良債権処理が最大の課題』といっているが、不良債権がなくなったからと言って日本がいい国になるわけではない。単に、“不良債権の無い国”ができるだけだ。企業経営でも同じで、悪い部分をなくせばいい会社になると思っている人が多いがそれは違う。いいところを伸ばさなければ、いい国にも、いい会社にもならない。いまの日本も同じで不良債権処理や公共事業に税金を使うくらいなら、情報通信産業の育成にもっと税金を投入すべきだと思う。具体的には、個人に対してもパソコンやソフトを買った際には、それを必要経費と認めて課税対象からはずすことを提案したい。こうすると、普通のサラリーマンならばパソコンを買うと税金の一部が還付されることになる。こうすれば、みんなもっとパソコンを買うようになるのではないかと思う」

 大前氏は、「80年代に、日本のマスコミがこれからは日本の時代だと騒いでいる間にシリコンバレーを中心に情報通信産業が発展して、アメリカの経済発展をもたらした。いま日本のマスコミは日本は駄目だ駄目だといっているが、こうした状況だからこそ、日本の中から新しい産業が生まれてくるのではないか期待している」と締めくくった。

日本IBMのソフトウェア製品を展示

 午後からは、同社のソフトウェア製品の紹介を各部屋に分かれて行なった。展示会場も併設されており、そこでは各種システムの展示が行なわれていた。また、Linux対応のデータベースソフト『DB2 Version5.2』β版の配布や、携帯情報端末『IBM WorkPad』の優待価格3万9800円(IBM PC Directでの販売価格は4万9900円)による販売の申し込み受け付けも行なわれていた(10日まで受け付け先着70人まで)。

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