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「子供のころの感動を大事にすれば、作品は誰にでも作れる」--文化庁メディア芸術祭、たむらしげる氏講演

1999年03月02日 00時00分更新

文● 報道局 伊藤咲子

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 文化庁メディア芸術祭実行委員会は、平成10年度文化庁メディア芸術祭の受賞作品展と記念講演を開催した。受賞作品は、'97年11月1日から'98年10月31日までに制作あるいは発表された作品624点の中から、東京大学教授の河口洋一郎氏ら14人の識者の選考により'99年1月20日に決定された。作品展は東京・新国立劇場を会場に2月26日から3月2日まで開催され、会場では受賞作品の原画展示や作品上映が来場者の注目を集めていた。

大賞受賞作品は以下の4点(敬称略)
デジタルアート
(インタラクティブ)部門
『ゼルダの伝説 時のオカリナ』
任天堂 宮本茂
デジタルアート
(ノンインタラクティブ)部門
『ハッスル!!とき玉くん』森本晃司
アニメーション部門 『クジラの跳躍』たむらしげる
マンガ部門 『坂本龍馬』黒鉄ヒロシ


 27日には、『クジラの跳躍』でアニメーション部門大賞を受賞した、絵本作家たむらしげる氏の記念講演が開催された。タイトルは“日本のアニメが目指すもの”。パネリストはたむら氏のほか、『クジラの跳躍』プロデューサーで(株)愛があれば大丈夫の瀬永光生氏、『少女革命ウテナ』などで知られるアニメ監督の幾原邦彦氏、スイスのPinguスタジオで絵コンテ・撮影・技術・編集監督を務める甲藤征史氏で、司会進行は“笑ウせえるすまん”の監督を手掛けた鈴木真一氏が務めた。

たむらしげる氏(左)、瀬永光生氏(右)
たむらしげる氏(左)、瀬永光生氏(右)



 『クジラの跳躍』は、たむら氏が15年前に制作した12ページの短編マンガが原作で、'95年には絵本として出版された。その後CG映像化され、バンダイビジュアルの提供で'98年11月には劇場アニメ作品として公開された。

 想像上の惑星“ファンタスマゴリア”で、ガラス化した海のなかから、大きなクジラが現われゆっくりと跳躍をする。その姿は空中に静止したかのように見え、老人をはじめとする見物人たちは失われた記憶を取り戻すというストーリー。たむら氏の作品に度々登場する老人と少年というキャラクターは、過去と未来のたむら氏自身のメタファーとか。

---詩的な作品ですね

たむら「子どもの頃に見た1枚の写真がもとになっています。水族館のプールから、アシカかオットセイがひょこっと顔をだしている高速で撮られた写真で、水しぶきがガラスのように輝いている、というものでした。子供のころの感動や忘れられない思い出を大事にすれば、こうした作品は誰にでも作れると思います」

---幾原さんはたむら氏の作品をどう思いますか

幾原「たむら氏の作品は、非常に日本的だと思います。日本のアニメは、2次元の作品でも光やカメラレンズを意識した写真的な作品が多い。それに対してPixerやディズニーなどが手掛けるアニメは、そういた写真的な視点はないですよね。また、マンガ表現がベースになっているかいないかの差もあります。例えば、写実的といっても『TOY STORY』なんかは逆に人形劇で十分ではと思います」

 たむら作品の映像化は、瀬永光生氏ら愛があれば大丈夫が制作を担当し、今まで3作品が発表されている。『クジラの跳躍』は、平均で40から50階層のレンダリングで構成されている。ちなみに、たむら氏のパソコン歴は、『Apple II』発売当時からであるという。

---現在はどのような制作活動を手掛けているのですか

瀬永「『クジラの跳躍』は23分の作品ですが、もう少しスタッフの数を増やして長編のものも手掛けてみたいと思います。ただ、集中力やモチべーションの持続が難しくなりますが」

「現在は、たむら氏が描く空想世界ファンタズマゴリアのリアルタイム3D作品を開発中で、テストが終わったところです。たむら氏の描く大きなカタツムリやキノコなどを体感していただけたらと思います」

 幾原氏は、映像制作を行なう過程で、売れる作品を作るのか、それとも自分の好きなように作品をつくるのかという問題にぶつかると繰り返し語った。瀬永氏は、たむら作品を映像化する自らのチームをインディーズバンドに例える。「大ブレイクするような作品ではありませんが、好きなように制作しています」と瀬永氏は語る。

会場内には『クジラの跳躍』のビデオ上映が行なわれ、人気を博していた
会場内には『クジラの跳躍』のビデオ上映が行なわれ、人気を博していた

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