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【INTERVIEW】SFA市場はERPよりも成長の可能性あり----東洋エンジニアリングのフロントオフィスシステム販売戦略

1999年02月17日 00時00分更新

文● 報道局 白神貴司

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 東洋エンジニアリング(株)(以下TEC)が、情報技術(IT)産業の分野で健闘している。建設、重工、エンジニアリング関連企業の主流業務は今、ドミノ倒し直前の状態にある。そうした企業群にとってIT関連業務は希望の持てる数少ない成長分野の1つである。TECにとって、SFA(Sales Force Automation)は、パンドラの壷の中に残った希望だろうか。エルサレムの近くにある山と同一名称の部門、スコーパスはTECを上昇気流に乗せるのか。

 TECでは、SFA(Sales Force Automation)システムベンダーである米シーベル社の代理店として、SFAシステム『Siebel』シリーズを販売している。SFAとは、コンピューター技術を利用して営業部署の効率を向上させようという概念。典型例として、現場の営業マンの携帯型パソコンなどと社内情報システムとをインターネットで結び、情報をやり取りする営業支援の仕組みがある。

 訪問先の顧客に対してその場で見積書を作成したり、製品情報を提示したりできる。一方で、商談の状況や顧客情報を即座に社内に送信することが可能になる。今回は、東洋エンジニアリングでシーベル製品の販売を統括する亀井朗氏に、ビジネスの現状と今後の戦略について聞く。

 なお、TECは、石油化学などを国内や海外で建設するプラントエンジニアリングを主業務としている。プロジェクトの企画や工場、ラインの設置までを総合的にサポートする。医薬品、半導体などの工場から統合型の物流システムまで、さまざまな分野のプラント設置を請け負っている。

米シーベルの米スコーパス買収によってシーベルの代理店へ

----SFA製品の中からシーベルを選んだ経緯を教えてください。

「実は、我々がシーベルを選択したというわけではありません。もともとTECでは、コールセンターシステム*1)のベンダー、米スコーパス社の総代理店をしていたのです。ところが、'98年3月に、米シーベル社が、スコーパスを吸収合併しました。これにより、スコーパスの総代理店だったTECは、今度はシーベルの代理店となったのです。シーベルには日本法人である日本シーベル(株)がありますから、TECはシーベルの代理店の1つという位置付けです」

注1)コールセンターシステム:電話オペレーターを配備したセンターを設置し、通信販売の受け付けをしたり、顧客からの問い合わせに対して応答したりするシステム。あるいは、その運営を支援するシステム。オペレーターの勤務状況や応対回数などのデータを収集し、分析する機能などを備える。

----シーベル製品全般を扱うようになった現在でも、主力製品は旧スコーパス製品ですか。

「たしかに、スコーパスの代理店時代に培ったノウハウがありますから、コールセンターシステムの営業の方が得意という面は否めません。ただ、合併によって、当然SFAシステムの営業活動にも力を入れる必要を感じています」

----これまでの導入事例をお聞かせください

「NTTテレマーケティング(株)では、数十人規模のコールセンターを設置し、そこに旧スコーパスのコールセンターアプリケーションを導入しています。ここでは、一般消費者への電話によるアポイントでマーケティング活動を遂行しています」

「また、九州松下電器(株)では、主にファクシミリなどの製品に関するユーザーからの問い合わせ窓口に導入し、応対時間の短縮といった成果をあげています」

ERPベンダーがライバルとなる

----現在ERP(Enterprise Resource Planning:統合業務パッケージ*2)ベンダーの一部がSFA市場に進出を図っています。その点についてどうお考えですか

「確かに、SAP、BAAN(バーン)、オラクルなど、ERP大手ベンダーがSFA市場への進出を図っているのは知っています。これらのベンダーの強みは、やはりバックオフィスと呼ばれるERPと、フロントオフィスであるSFAとの連携をユーザーに対して強くアピールできるところでしょう。これらのベンダーとの競合がいずれ始まると思います」

注2)ERP:全社、あるいは部門単位で統合したデータベースなどとの連携により、財務、人事、販売管理、生産管理、物流などを統合的に管理運用するシステム

----3月には、SFAとコールセンターとが統合、連携した『Siebel99』が発売になるそうですね。営業アプローチなど、販売戦略に変更はあるのでしょうか。

「コールセンターシステムの販売ノウハウがそのままSFAの販売に生きるとは考えていません。コンサルティングを含めた営業手法を見直す必要はあると思います。当面はコールセンターに重点をおいて販売していくことになります。主にアプローチをかけるのは情報通信やハイテク家電メーカーなどを予定しています」

SFA導入のコンサルティングも強化

----日本のSFAとコールセンターの今後についてのお考えを聞かせてください。

「SFAについてはまだ黎明期だと考えています。ユーザーの啓蒙活動も含め、日本シーベルとの連携を強め、3月の『Siebel99』発売に備えたいと思います。『Siebel99』では、金融、情報通信、製薬など、各業種に対応した業種ごとの製品ラインナップとなります。この中から、情報通信やハイテク家電などに攻勢をかけます。コールセンターシステム売り込みのターゲットもこの業界です」

「個人的には、SFAにはERPを凌ぐマーケットに発展する可能性があると考えます。企業の業務すべてをサポートするERPに比べ、営業分野に特化したSFAは、より早く日本の市場に浸透していくでしょう。TECとしては、パートナー企業との連携を強めるとともに、社内のコンサルティングスタッフの育成にも力を入れていきます」

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