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IDC Japanが“第3のパラダイム:CyberSmart Computing 環境”と題するセミナーを開催

1999年02月10日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦

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 コンピューター業界の市場調査を行なうIDC Japan(株)は、東京・青山の青山TEPIAホールにおいて、“第3のパラダイム:CyberSmart Computing 環境”と題するセミナーを開催した。

 “CyberSmart Computing(サイバースマートコンピューティング)”とは、同社が提唱する次世代のコンピューティング環境の概念。第1世代の汎用機、第2世代のクライアント/サーバーシステムに次ぐもので、シンクライアントとアプリケーションサーバー、データベースによって構築されるネットワーク環境のことをいう。NC(Network Computing)やWBT(Windows Based Terminal)などをイメージするとわかりやすい。

 本日のセミナーの中から、シンクライアントの現状、ISPの今後の2つのテーマに関する講演の内容を紹介する。

“Thin Client Computingの台頭”~NC、WBT合計で、'99年は最大でも4万台程度~

吉田広美Softwareシニアアナリスト 吉田広美Softwareシニアアナリスト



吉田「“CyberSmart Computing”においては、ネットワーク端末はThin Clientが使われる。Thin Clientは、米サン・マイクロシステムズ社などが提唱するNC(Network Computing)や米マイクロソフト社の開発したWBT(Windows Based Terminal)が代表的である」

「しかし、NC、WBTともに期待された割には日本では伸びていない。'97年のNCの出荷台数は全世界でみると29万8000台で、うち80パーセントが米国で出荷されている。しかし、日本では'97年にNCはわずか1200台しか出荷されていない。まだまだテスト利用の段階で本格的な普及はこれからとみられている。また、WBTは、利用環境が整ったのは今年1月になってからで、まだまだ本格的な導入は先になると見られている」

「NCが普及しなかった理由として、当初考えられたほどには、初期コストは安くならなかったことがあげられる。サーバー1台とクライアント40台のシステムで、クライアントにPCを入れた場合のコストを100とすると、NCでは83.9、WBTでは57.3という試算結果がでた。WBTでは機能の一部に制限があり、それを解消すると57.3よりも数字はもっと大きくなる。つまり、NCやWBTでは、初期導入費用を下げることにはならない」

「ユーザーの意識も、ネットワーク管理者500人に対して行なった'98年の調査では“関心がある”が29パーセントだったのに対して、“関心はない”が28パーセント、“聞いたことはない”が36パーセントという結果になった。“関心はない”と答えた138人のうち、、その理由として“費用や作業工程への不安”をあげた人が38パーセント、“よくわからない”が26パーセント、“十分な事例がない”が17パーセントであった」

「NCとWBTの出荷が伸びるには、大手ベンダーの参入、導入事例の増加、導入費用の低下などが必要となる。'99年のNCとWBTの総出荷台数は、これらの条件がすべて好転した場合には4万台、'98年と同じレベルで推移したならば2万5000台レベルにとどまるとみている。NCやWBTよりも、ブラウザーを搭載したWindowsマシンとハンドへルドPCが、“CyberSmart Computing”のクライアントとして拡大する傾向が今後もしばらくは続くとみている」

“Internet Providerが果たすべき機能要件と今後の動向”~中小ISPはSIやアウトソーシングを指向する~

堀勝雄Communicationシニアアナリスト 堀勝雄Communicationシニアアナリスト



堀「日本のISP(Internet Services Provider)は、NTTをはじめとする通信会社の参入により、独立系やメーカー系を中心に苦況にたたされている。'98年には、日本の独立系3社が米PSINet社に買収され、またIIJはソニーやトヨタと新会社を設立して生き残りを図ろうとしている。アメリカのインターネット業界では、ISPもポータルサイトとして生き残りを図ろうとしており、日本でも同様の動きが見られている。しかし、ポータルで生き残れるのは大手でも2~3社にすぎないだろう」

「大手だけでなく、中小の業者を含めた196社に対して'98年にアンケートを行なったところ、'97年の収益が、“黒字”17.36パーセント、“赤字”47.4パーセント、“収支とんとん”が32.7パーセントであった。赤字の理由としては、“投資コストがかさんだ”が44.1パーセントともっとも多かった。“接続会員が伸び悩んだ”も29.0パーセントもあり、大手ISPの会員数拡大の影響が読みとれる」

「また、ISPビジネスの将来像を訪ねたところ、“SI(システム・イングレーター)”が38.3パーセント、“コンテンツプロバイダー”が24.5パーセント、“現状と変わらない”が24.5パーセント、“アウトソーシングカンパニーになる”が12.8パーセントという結果になった」

「同じ調査で、インターネット接続サービス以外で提供しているサービスについて尋ねたところ、メールアドレスやドメイン名を提供するホスティングサービスや、イントラネット構築運用サービスなどを半数以上の会社が実施。また、今後提供する予定のサービスとして、インターネットVPN(Virtual Private Network)の構築、EC決済機能の提供などがあげられている。企業の側も、自社のイントラネット構築、Webサーバーのアウトソーシングなどへのニーズが高く、今後中小のISPの多くは生き残りをかけて、SIやアウトソーシングカンパニーをめざすことになるだろう」

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