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【INTERVIEW】アップルが発明したFireWire(IEEE1394)で進めていきたい---米アップルコンピュータ社Power MacプロダクトマネージャーKendall Laidlaw氏が『New G3』について語った

1999年01月29日 00時00分更新

文● 千葉英寿/報道局 伊藤咲子

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 米国サンフランシスコで開催された“MACWORLD Expo San Francisco '99”において『Power Macintosh G3』(以下、『New G3』)の新シリーズが発表された。その『New G3』が日本でも15日より発売が開始された。この『New G3』のプロダクトマーケティングを担当する米アップルコンピュータ社のプロダクトマネージャー、Kendall Laidlaw(ケンドル・レイドロウ)氏に『New G3』のスペックや市場戦略などについて伺った。

Kendall Laidlaw(ケンドル レイドロウ)氏
Kendall Laidlaw(ケンドル レイドロウ)氏



デザインだけを先行させるのは意味がない

---まずはじめに今回発売された『New G3』のセールスポイントをお聞かせ願えますか?

「2つあります。1つは、CPU、キャッシュ、FireWire、USBといった高いパフォーマンスを柔軟性を持って提供できたということですね。もう1つは、他のマシンとは一味も二味も違うデザインをベースに仕上げることができた点です。また、直感的に扱える『Mac OS』についても評価していただけると思います」


---おっしゃるように斬新なデザインが大きな特徴ですが、一般のユーザーにはどのように評価されているのでしょうか?


「“好きだ”と言っていただいた方が多いのは事実ですが、市場全体の評価については、もう少し時間をいただきたいところです。ただ、機能とデザインのどちらを先行するかを考えた場合、私達はデザインだけを先行させるのは意味がないと考えました。そこでイージーアクセスやアップグレードの容易さが、今回の重要なゴールだと捉え、開発にあたりました」

---Power Macのユーザーにはデザイナーなどのプロフェッショナル・ユーザーが多いわけですが、そうしたプロ・ユーザー以外の一般の企業ユーザーを中心としたマーケットへの切り込み方をどのように考えていますか?

「『Power Macintosh』では発売当初から、企業や大学も重要なマーケットであると意識しています。今後は、例えば、『Adobe Photoshop』や『Microsoft Office』といったアプリケーションレベルでのパフォーマンス、インターネットへの接続といったパフォーマンスを、私達の実験やASCII24のようなメディアを通じて広めていくことが重要だと考えています」



『iMac』でUSB市場を喚起、『New G3』でFireWire市場をプッシュ

---『New G3』では標準でのSCSIサポートがなくなりましたが、今後、SCSIのサポートは行なわないのでしょうか?

「市場にはさまざまなSCSIデバイスが流通していますが、アップルとしては、これらはFireWireの世界に移行するのではないかと考えます。また、同時にそのように移行してほしいとも期待しています。もちろん、SCSIをまったく提供していないわけではなく、ハイエンドのモデル構成でSCSIは提供しています。また、サードパーティー各社からSCSIデバイスが多く発表され、SCSIのPCIカードが多く追加されるだろうと考えます」

---サードパーティーからどのようなFireWireデバイスが発売されるのでしょうか?アップルではそうした製品情報を把握されていますか?

「どこがどのようなデバイス製品をいつ発表するか、具体的な情報を掴んでいるわけではありません。先日開催された“MACWORLD Expo San Francisco '99”では、エプソンのプリンターやソニーのデジタルビデオカメラをFireWireでフックアップできることが紹介されております。『iMac』でUSB市場を喚起したのと同様、今回の『New G3』でFireWire市場をプッシュできれば、と考えています」

MOのニーズを調査する

---周辺機器という面では、日本ではデザイナーなどを中心にMOメディアの使用率が大変高いという事実があります。アップルではこれまでも標準でMOをサポートすることはありませんでしたが、今後はどのようになるのでしょうか?

「今回、ストレージにZIP(ジップ)を採用した理由としては、デバイスやメディアのコストが安いということがあります。将来的にはCDやDVDのRAMを採用することになるでしょう。ZIPはそれまでの移行として捉えています」

「しかし、私が日本に来てから、MOについては耳が痛くなる程、指摘されています。アップルとしては、こうしたご意見を踏まえてMOのニーズを調査する必要があると考えています」

---ハイエンドユーザーにとって不可欠なPostScriptプリンターやイメージセッターなどもFireWire対応に移行していくのでしょうか?

「はい。'99年は、デジタルビデオカメラからスタートして、ぜひそういう方向性になってくれればと願っております。FireWireを発明したのはアップルですが、残念ながら今までそれを活用してくださる方が少なかった。しかし、今ではFireWireにはこれまでのSCSIにはない多くのメリットがあることが認識されてきています。例えば、たくさんのデバイスを一度にサポートすることができますし、ターミネーションの問題もありません。ホット・プラグ・アンド・プレイができることも挙げられます。ぜひ、ハイエンドに関してもFireWireで進めていきたいと願っています」



---FireWireを使ったネットワーキングは可能でしょうか。

「現時点において、ネットワーキングのためのドライバーは書いていません。しかし、将来的にはデバイスから起動できるような世界になっていくと思っています。FireWireはシリアルバスですので、ネットワークに繋がっているデバイス間でシェアできるという大きなメリットがあります。“MACWORLD Expo San Francisco '99”でのスティーブ・ジョブズのキーノートでも、2台の『New G3』がカメラを共有するデモンストレーションがありましたが、将来的には十分可能です」

Open GLのMac OSへのビルトインは今年の後半

---iMacでは外されたADBポートが標準で付いてますが、これはどういう理由からなのでしょうか?

「ADB対応のグラフィックタブレットを使用しているデザイナーが多いということを考え、ADBを採用しました。こちらも将来的にはUSBに移行することになるでしょう」

---『New G3』のグラフィック・パフォーマンスを大きく向上させているグラフィックチップ『ATI RAGE 128』は、100パーセントのパフォーマンスを出しているのでしょうか?

「2D制作においては1600×1200の解像度をサポートできていますし、3D制作においてはパソコンのパッケージモデルとしては、十分、プロフェッショナルニーズに答えているものと思います」

「また、アップルは今後ゲームコンテンツ制作の分野へのコミットを強化することを考えております。『New G3』は、16MBのSDRAMをサポートしていますので、マルチテクスチャーのゲームにも十分対応できると考えております。デベロッパーからプレイヤーまで、最低でも16MBは必要です」

「また、アップル独自のMPEG2のデコーダーカードを搭載しました。DVDのプレイバックに対応していますので、専用のPCIカードを必要としません」

---ビデオメモリを増やす可能性はありますか?

「現在のカードをアップグレードすることはできません。デュアルモニターサポートやSDRAMを増強し、32MBにする計画はあります。また、標準のATIカードですから、『Macintosh』にもPCにも対応しています」

---Open GL対応ということで、周辺のソフトウェア環境はどう変わりますか?

「“MACWORLD Expo San Francisco '99”でも説明があったように、シリコングラフィックス社とOpenGLの契約について交渉中です。Open GLを共有する利点としては、業界標準であるということ、そのグラフィックスパフォーマンスを活用できるということ、すばらしいコストパフォーマンスをユーザーに提供できるということということが挙げられます。ただし、具体的には、今年の後半あたりにOSにビルトインできるのではないかと思います」

21インチディスプレーは当分先?

 以上のようにLaidlaw氏はこまかな仕様についてまで丁寧に答えてくれた。また、21インチディスプレーが日本国内で販売されていないことについて、インタビューに同席されたアップルコンピュータ(株)のパワーマッキントッシュ担当課長の鯉田潮氏は「現時点での市場性を考え、発表しないという結論に達しました。今後の予定については検討中です」と答えた。

【関連記事】アップルコンピュータ、Power Macintosh G3の新シリーズを発表--マザーボードからSCSIが消える
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/990106/hard01.html

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